本屋やアマゾンには、たくさんのマニュアル本やハウツー本があふれています。仕事、投資、健康、人間関係、子育て、恋愛、さらには生き方まで「こうすればうまくいく」という様々なマニュアル本が存在しますが、それらはどのように役に立つのか、あるいは役に立たないのかを考えます。
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はじめに
本屋やアマゾンなどのオンラインストアでは、たくさんのマニュアル本やハウツー本を見つけることができます。
「幸せになるための10の法則」
「人生を変える7つの習慣」
「人間関係がうまくいく5つのルール」
「仕事で成功するために必要なたった1つの大切なこと」
通勤電車でこうした本の広告を見ることも珍しくありませんね。広告には20万部突破!などと書かれていたりします。
専門書や実用書だけではありません。仕事の進め方、投資、健康、人間関係、子育て、恋愛、さらには生き方まで「こうすればうまくいく」という様々なマニュアル本が存在します。
私はこれまで、こうしたマニュアル本について、記事の中で何度か触れてきました。しかし、今回改めてそれにフォーカスして、マニュアル本がどのように役に立つのか、あるいは役に立たないのか、考えてみたいと思います。
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解決したい3種類の問題
私たちがマニュアル本を買うのは、本を買うことである問題を解決したいという動機があることがほとんどでしょう。私は、以前の記事で、世の中の問題を大きく3種類に分けました。
前段として、その3種類の問題を振り返りましょう。
1.シンプル・プロブレム(Simple Problem)= 単純な問題
シンプル・プロブレムとは比較的単純な問題のことで、例えば、
- 料理の作り方
- 正しい筋トレの仕方
- エクセルやワードの便利な機能の使い方
- 道具の使い方
などを含みます。
この種の問題の解決策は今や本を買わずとも、インターネットやYoutubeでの検索や、AIに聞いて知ることもできます。
そして、シンプル・プロブレムは、せいぜい10程度の手順に従えば解決できるものです。IKEAなどの家具の組み立て説明書もそうですね。部品が揃っていて、説明書に書かれた手順に従えば、特別な知識がなくても家具を完成させることができます。
もちろん、手順に従っても、結果に若干の違いが生まれることはあります。例えば、料理は腕によって味の差が出ます。しかし、誰でもレシピに従えば、それなりにおいしい料理を作ることができます。私自身も料理する時にレシピを検索することが多いですが、そこそこ食べられる味にはなります。
つまり、単純な問題のマニュアル化には、他人の経験を利用できる、仕事を標準化できる、初めての人でもできるなどのメリットがあり、マニュアル化はそれらの点でとても有効です。
2.コンプリケイテッド・プロブレム(Complicated Problem)=煩雑で面倒な問題
2種類目の問題は、煩雑で専門的な問題です。
例えば、
- 自動車をつくる
- 飛行機をつくる
- 高層ビルを建てる
- ロケットを宇宙に飛ばす
といったものです。
料理や家具の組み立てとは比較にならないほど難しい問題です。先ほどのシンプル・プロブレムは個人レベルでも対応できますが、このコンプリケイテッド・プロブレムは専門性や資金力が十分な企業でないと難しいものも多いでしょう。
しかし、ここで重要なのは、手順が難しくステップ数も膨大ですが、必要な道具やリソースを揃えて順序を踏めば完成できることです。
例えば、自動車の製造には膨大な専門知識、設備、人材、手順が必要です。それでも、リソースを揃えて手順を理解すれば、基本的には同じことを繰り返し再現できます。トヨタ、ホンダ、マツダ、いずれのメーカーもそのようなリソースをもっているから、車を毎日作り続けることができます。
つまり、この問題はどんなに手順が複雑で膨大であっても、どんなにお金や人材が必要であっても、それを準備し、手順に落とし込んで、それを確実に実施することで解決できる問題なのです。
そして、この種類の問題の解決には、マニュアルが不可欠です。
3.コンプレックス・プロブレム(Complex Problem)= 複雑に絡み合った問題
これらとは性質の異なる問題が「コンプレックス・プロブレム=複雑に絡み合った問題」です。
例えば、
- 人間関係
- 組織づくり
- 子育て
- 恋愛
- 社会問題
などです。
これらの問題には、決まったレシピがありません。なぜなら、1つの問題が単独で存在しているわけではないからです。むしろ、多くの要因が深く絡み合っています。
人間関係には、お互いの性格、過去の経験、置かれている環境、日々の状態、その他の人との関係など、無数の要素が関係し、それぞれが影響し合って、日々変化しています。
例えば「部下のモチベーションを上げる方法」というマニュアルがあったとしても、実際は、部下の性格、上司との関係、組織文化、会社の状況、本人の家庭環境や経済状況、直近の出来事やその日の気分などによって結果は変わります。昨日うまくいった方法が、今日も同じようにうまくいくとは限りません。
自分が何か行動すれば、相手が反応します。相手が反応すれば、自分の状況も変わります。問題を解決しようとする行動そのものが、問題の条件を変えてしまうこともあります。
先ほどコンプリケイテッド・プロブレムの例として挙げた高層ビルの建設には、3年の年月と300億円の高額な費用がかかるかもしれません。しかし、逆に言えば、お金と時間をかければ解決することができます。
一方、コンプレックス・プロブレムの解決には、一切のお金を必要としないものもあります。リソースがいらないこともあります。しかし、解決はとても難しいのです。どんなにお金と時間をかけても解決できるとは限りません。

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マニュアルが有効なのは、問題が再現可能だから
3つの種類の問題を振り返ることで、マニュアルの本質が徐々に見えてきました。
マニュアルが有効なのは、同じ条件なら、同じ方法が使えるからです。
料理なら、同じ材料と手順を使えば、ある程度おいしく食べるという目的を果たすことができます。工場なら、同じ設計と設備と工程を使えば、同じ製品を繰り返し製造することができます。
だから、シンプル・プロブレムやコンプリケイテッド・プロブレムでは、マニュアルはとても強力です。
しかしコンプレックス・プロブレムでは、条件そのものが一定でないどころか、個々のケースによって条件が大きく異なったり、時間の経過とともに変化します。そのため、同じ方法を使っても、結果が異なることがあります。すべて条件が同じという問題は世の中に一つも存在しません。
そのため「この場合はこうすればいい」というマニュアルには限界があります。
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それでも、人生や人間関係のマニュアルは存在する
私たちが人生やキャリアの中で直面する重要な問題や社会問題のほとんどは「コンプレックス・プロブレム=複雑に絡み合った問題」です。ある人がある所で成功した手順をそのままコピペしても解決はできません。
ところが、世の中にはこのような複雑に絡み合った問題についても、たくさんのマニュアル本が存在します。
「幸せになる10の方法」
「人生で成功する人の7つの習慣」
「良い人間関係をつくる5つのルール」
などです。こうした本は、人生という複雑に絡み合った問題を、一定の分かりやすいルールに置き換えようとする試みとも言えます。
これは必ずしも悪いことではありません。複雑に絡み合った問題でも、過去の経験から得られる有効で分かりやすいパターンがあり、それを実践しやすい形に整理してくれるというメリットがあります。
例えば、
「睡眠を大切にする」
「人の話をよく聞く」
「感情的なときには重要な決断をしない」
「長期的な視点を持つ」
といったことは、多くの状況で役に立つでしょう。人生や人間関係に関する普遍的なルールだからです。
コンプレックス・プロブレムに関して効果的なマニュアルは、現実をそのまま写したものではなく、複雑な現実から、一定の普遍的なパターンを取り出して分かりやすく示したものです。
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何でもマニュアルに頼ろうとする落とし穴
しつこいですが、私たちの人生や社会の問題の多くは「コンプレックス・プロブレム= 複雑に絡み合った問題」です。
問題は、何でも既存のマニュアルを当てはめたり、新しいルールを作ることで解決できると錯覚してしまうことです。
次に、そのような複雑な問題の解決を、マニュアル的な対処法に頼ろうとする落とし穴を説明しましょう。
① 過去にうまくいった方法が、今後もうまくいくとは限らない
マニュアルは基本的に、過去の経験や知識を再現可能な形にしたものです。
たとえば「これまでこの方法でうまくいった。だから、今回もその次もこの方法でやればいい」という考え方です。この記事で紹介した最初の2種類の問題ならこれは合理的です。過去と未来で問題が変化しないからです。ラック付きの机の組み立て方や、おいしい回鍋肉の作り方、車の作り方は、昨日と今日で変化しません。
しかし、複雑に絡み合った問題は、状況そのものが時間と共に変化します。
会社経営、社会、経済、恋愛のアプローチなどでは、過去に正しかった方法が、状況の変化によって正しくなくなることがあります。
危険なのは、状況の変化によってマニュアルが通用しなくなってきているのに、マニュアル自体を絶対視して、うまくいかないのは他の何かに問題があると誤った原因付けを行ってしまうことです。
去年の人間関係と今年の人間関係は違います。10年前の会社と今の会社も違います。社会問題も年々変化しています。したがって「以前これでうまくいったから、今回もこれでいい」とはならないのです。
② 例外に対応するほど、マニュアルが増えていく
「この方法ではうまくいかないケースがあります」
→「では、その場合のルールを追加しましょう」
「ただし、この条件ではさらに別の対応が必要です」
→「では、その場合のルールも追加しましょう」
「あ~、あるある」と思われる企業にお勤めの方も多いでしょう。これはマニュアルの欠点の1つです。新しい対応に何でもマニュアルや規則の追加で対応しようとすると、その量が膨大になります。
最初は20個だったルールが、想定するケースに合わせて、50個、100個と増えていき、もはや誰もすべてを把握できません。最後には、マニュアルを全部覚えている人が評価されるという奇妙な状態さえ生まれます。
マニュアルは既知の状況には強いが、例外対応や未知の状況には弱いのです。
③ 「なぜ」を考えなくなる
マニュアルの最大の利点は、理由や原理を理解していなくても、成果が上がることです。決められた手順に従うだけなので、頭を使う必要はありません。しかし、これは同時にマニュアルに依存する最大のリスクでもあります。
マニュアルが当たり前のものとして定着すると、「なぜこうするのか?」ではなく、「マニュアルにそう書いてあるから」と考えるようになります。マニュアルに書いてある手順を踏むこと以外、考えられなくなってしまいます。状況は日々変化していて、マニュアルが対応しきれなくなっているにも関わらず、マニュアルを使い続けるのです。
背景を理解していれば、ルールを変更できます。しかし、時と共に、担当者は去り、当初の経緯は忘れ去られます。まったく異なる状況にも使われたり、前提が成立しなくなったこと自体に気付けなくなる可能性があります。
④ マニュアルを守ることが、目的になってしまう
「なぜ」を考えなくなってしまう延長にある問題が、最終的に、マニュアルに書かれたことを守るのが目的そのものになってしまうことです。これは階層的な組織で特に起こりやすい現象です。
本来は、「目的 → 背景 → 方法 → マニュアル」という順番だったはずなのに、
いつの間にか、「マニュアルを守る → 正しい仕事をした」と手段が目的化してしまうのです。
例えば、本来の目的が「顧客に良いサービスを提供する」ことなのに、「規定の第3.1項に従って処理しているので正しい判断です」となってしまいます。そして、手段が目的化しているため、なぜそれが存在するのかも考えなくなってしまう負のループが発生するのです。
これは、前回書いた記事『モデルの世界に迷い込む私たち』で紹介した「モデルと現実の混同」にも通じます。
マニュアルが「モデル」の1つであることを忘れ、現実を描写したものだと勘違いしてしまうのです。
マニュアルも一種のモデルです。マニュアルは現実ではありません。現実の複雑な状況から「この条件では、この行動をすれば、この結果が期待できる」という部分を切り出して整理したものにすぎません。
だからこそ便利なのですが、マニュアルが想定していない条件が発生すれば、現実のほうがマニュアルから外れていきます。
⑤ 「正解がある」という錯覚を生む
これは、仕事でも個人の人生においてもとても重要です。「コンプレックス・プロブレム= 複雑に絡み合った問題」には、すべての人や組織に共通する1つの正解があるわけではありません。
むしろ、ある人にとっての正解が、他の人には不正解となることがあります。過去の正解が、今回の正解とはならない場面もあります。せいぜい70点程度の回答が限界で、100点の正解がそもそも存在しないこともあります。
しかし、私たちは、マニュアルという形あるもので提示されると、「正しい答えが存在する」という錯覚することがあるのです。
「幸せになる10の方法」と書かれていると、私たちは無意識に「10個の方法を実践すれば、幸せになれる」と考えてしまいます。しかし、10個すべてを実践したからといって、幸せになることが約束されるわけではありません。
多くの複雑に絡み合った問題に、明確な答えはないのです。必要なのは「正解を知ること」ではなく、その状況で何を優先し、どう判断してどう進んで行くかです。
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マニュアルの先にあるもの
私たちの人生や社会問題は、過去の事例にもマニュアルにも明確な答えがない問題だらけです。
では、私たちは、何を基準に判断すればよいのでしょうか?
そのとき必要になるのが、自分自身の判断の軸になるものです。それは、人生の軸となるもの、核となる考え方とも言えるものです。一般的には、信条、価値観とも言われるものですが、ここでは「原理」と呼びましょう。
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マニュアルは「どうするか」、原理は「なぜそうするか」
マニュアルが「この場合はこうしなさい」と教えてくれるものだとすれば、信条や価値観などの原理は「なぜそうするのか」を教えてくれるものです。
原理を知る人は、マニュアルに書かれていない状況でも、原理に従って判断することができます。
例えば、「相手の話をよく聞く」というマニュアルがあったとします。その背後に「すべての人を一人の人間として尊重する」という原理があると考えてみます。すると、相手の話を聞くことだけが正解ではなくなります。
相手の話を聞くべきときもあれば、間違っていることを指摘するべきときもあります。。時には、厳しいことを言わなければならない場合もあるでしょう。何をすべきかは、状況によって変わります。何もしないことがよい場合もあります。
「相手を尊重する」という原理を持っていれば、相手と会話している時だけでなく、もっと広い視野で相手のことを考えることができます。
マニュアルは特定の行動を与えますが、原理は判断の軸を与えます。マニュアルがなくても原理そのものが問題に対する判断基準となるのです。
そして不思議なことに、原理を理解するようになると、それまで読んできたマニュアル本も違って見えてきます。「なぜこのルールが必要だったのか」がよく分かるようになり、高い視野から俯瞰的に捉えられるようになるからです。
さらには、仕事の本、人間関係の本、心理学の本など、異なる分野の本に書かれていることが、実は同じ原理を別の言葉で説明していることにも気づくこともあります。例えそれぞれが違う分野の言葉で書かれていても、その背後に共通する原理があることを知るからです。
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原理は単なる知識ではない
原理は、単に「知っている」だけでは意味がありません。例えば、
「他人を尊重することが大切だ」
「感情に流されないことが大切だ」
「自分がコントロールできることに集中すべきだ」
ということを知っている人はたくさんいます。
しかし、実際に自分が批判されて、相手を攻撃し返したり、言い訳したりするのであれば、原理を知っているだけで、原理に沿った行動をとっているとは言えません。
原理は、知識として頭の中に置いておくものではなく、自分の判断や行動を生み出すものです。
言い換えれば、「原理は、頭の中にあるだけでなく、心の中にもあるもの」です。マニュアルは「心」を要求しませんが、原理は「心」を要求します。だからこそ、マニュアルに従うのは簡単で、原理を身につけるのは容易ではありません。
「他人を尊重しましょう」と本に書いてあれば、それを理解することはできます。しかし、本当に他人を尊重できるかどうかが試されるのは、自分が批判されたときや、自分が損をするとき、相手が自分より弱い立場にいるとき、自分の意見が否定されたとき、強い怒りを感じているときなど様々な状況においてです。
原理が内面化され、本当に自分の軸となっていれば、状況が変わっても判断の軸が大きく変わることはありません。反対に、原理が単なる知識や建前だけであれば、都合のいいときだけ原理を持ち出すことになります。軸がないのです。
原理を体得するとは、原理について語れるようになることではなく、原理が自分の判断を自然に導くようになることです。
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原理を身につけると、マニュアルに頼らなくなる
ここに、マニュアルと原理の大きな違いがあります。
マニュアルに頼る場合、状況が増えれば、それだけルールも増えていきます。
「この場合はこうする」
「ただし、こういう場合は例外」
「さらに、この条件ならこうする」
と、どんどん数が増えていきます。
一方で、いったん原理を身につければ、その原理を拠り所として、未知の状況でも、さまざまな状況に対応できるようになります。
もちろん、原理だけですべてが解決できるわけではありません。経験も必要です。専門知識や具体的な技術が必要なこともあるでしょう。しかし、原理があれば、それらをどのように使うかを判断することができます。
原理を身につけると、多くのマニュアル本が不必要になり、必要なマニュアル本も少なくなるのです。
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さいごに
私は、マニュアル本を否定しているわけではありません。
今回紹介した3種類の問題のうち最初の2つの問題であるシンプル・プロブレム(単純な問題)や、コンプリケイテッド・プロブレム(煩雑で面倒な問題)だけでなく、人生や人間関係などのコンプレックス・プロブレム(複雑に絡み合った問題)にも、ある程度の効果があります。
今回書いたように、マニュアル本が物事の見方を整理してくれたり、原理を知るためのヒントを与えてくれることもあります。「なぜ、この場合はマニュアル通りにいかないのだろう?」「このルールの背後には、どんな考え方があるのだろう?」といった問いを通して、個別のルールの背後にあるより大きなものに気が付くこともあるでしょう。
また、「自分の価値観に従って生きる」と言われても、具体的にどうすればいいのか分からないものです。そこで、マニュアル本の「毎朝、自分の目標を書き出す」とか「毎晩、感謝することを3つ書く」というアドバイスを元に、具体的な行動に変換することができます。
ただし、マニュアルに依存し続けるのではなく、その背後にある原理は何か、自分は何を大切にするのかを問うことが大事です。
マニュアルはその入口として有効です。しかし、原理が身につかなければ、マニュアルの効果は長続きしないでしょう。「今日も感謝することを3つ書いた」だけで終わってしまい、人生をよくするための原理が、いつの間にか日々こなすべきタスクが1つ増えるだけになってしまいます。
古くから人はどう生きるべきかという原理を追求してきた哲学や宗教などの教えも、実はマニュアルと原理の組み合わせです。
例えば、宗教には「何をすべきか」「何をしてはいけないか」「どのように祈るか」「どのような儀礼を行うか」というマニュアルがあり、その背後に「自分を律する」「慈悲を持つ」「執着を手放す」「善く生きる」などの、より大きな原理があります。
そして、それぞれ、表面的な教え(マニュアル)は違っていても、その奥にある原理にはかなりの重なりがあります。
宗教に絡んだ対立が絶えないのは、お互いが表面的な教えで対立しているからです。
本来は人間をより良く生きさせるための共通の教えのはずが、教えの背後にある大きな真理を見るのではなく、教えそのものを守ることが目的になり、それぞれに異なる教えにお互い固執し合うことが、対立の火種となっているのです。
しかし、原理に関して最もやっかいなパラドックスは、原理を体得した人にとっては、なぜそれが重要なのかは説明するまでもなく明らかになる一方で、原理を体得していない人にとっては、なぜ原理がそんなに重要なのかすら、何回説明されても理解できないことです。
さて、最後にマニュアル本を読むときの4つの注意点を整理して今回は失礼します。
① 「これはどんな状況を前提にしているのか」を考える
その方法が有効となる条件を考えてみましょう。
② 「なぜこの方法なのか」を考える
方法そのものではなく、その背後にある目的や原理を見ようとしてください。
③ 「今にも当てはまるのか」を考える
成功者の経験や過去の成功事例をそのままコピーしてはいけません。特に変化のスピードの速い現代では、この視点を常に持つことが重要です。
④ 「正解」ではなく「判断材料」の参考として使う
良く書かれたマニュアルには先人の経験が凝縮されているものがあります。良質のマニュアル本を捨てる必要はありません。ただし、マニュアルから答えをすべてもらうのではなく、マニュアルを利用して自分で答えを考えましょう。
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