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難しい会話 Difficult Conversations:恐ろしく難しい人への対応

  • 投稿カテゴリー:マネジメント
  • 投稿の最終変更日:2021年9月18日
  • Reading time:7 mins read

前回、前々回と、難しい会話の対処方法を紹介してきました。今回はそれでも会話を築く事ができない「恐ろしく難しい人」への対処方法を紹介します。ポイントは、相手を変えようとする意識を捨て、相手を理解する事に努め、決して相手の土俵に乗らず、自分の行動を変える事です。

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はじめに

前回前々回と、難しい会話の対処方法を紹介してきました。
しかし、会話は2人以上で成立するものなので、あなた1人だけの努力で必ずしも改善できるものではありません。
ネガティブなオーラに包まれ、否定否定のオンパレード、話しをするのがとにかく難しく苦痛な相手はいたる所に存在します。気難しい人との交流は、私たちから、エネルギー、生産性、さらには幸福感を奪い、大きな負の影響を及ぼします。

欧米など5,000人のオフィスワーカーを対象とした調査によると、その85%もが職場で何らかの人間関係のコンフリクトを抱えていました(1)(2)。もちろんコンフリクトは、職場だけではなく、家族や交友など、社会のあらゆる人間関係で起きます。
以前、人と人とのコンフリクト(意見の違い)が人や組織の成長を促すと書きました。しかし、恐ろしく難しい人にあるのはもはやコンフリクトではなく、意図的な敵対心と行き過ぎた防御心です。そのような人とは、どうやっても、会話の前提となる健全な2方向のコミュニケーションが成立しません。

このような人たちは明らかに組織に有害なのですが、残念ながら日本の組織の仕組みや人事制度では簡単にいなくなってもらう事もできません。今回は、そのようなとても難しい人に対応する方法を紹介します。

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恐ろしく難しい人のタイプ

一言で恐ろしく難しい人と言っても、さまざまなタイプがあります。以下はその一部の例です。

1.他人を蹴落としてでも、自分のアピールに全力を尽くす人

人の成果を横取りするのはまだかわいいレベルです。自分をアピールするための話がとにかく長い。忙しさをアピールするためだけに、午前3時にメールを送ってきたり、日曜日にメールを送ってくる人。情報を囲んでマウントを取る人。他人の評価を相対的に下げるため、人の悪口やうわさを広げる人。自己正当性の防衛と責任転嫁のために、破壊的な行動をも厭わない人もいます。

2.自分の弱みから逃げるため、核心に迫らせない人

このような人は、とにかく話をややこしくします。あなたが理解できないのは当たり前です。なぜなら、核心に迫る会話や情報に触れさせないよう、意図的に理解させないように話をしてくるからです。表面的な体裁だけとるため、話を誇張したり、うそをついたり、物事をかき回したりして、やってる感を出します。

3.人を巻き込んで、責任をなすりつけようとする人

常に人をいらいらさせようとする、二者択一を迫ってくる、トラップに引きずり込もうとする。その巧みな仕掛けで、知らないうちにあなたのせいにされています。他人を怒らせておいて「そんなに怒らないで下さいよー」とか「なんでそんなに怒ってんですか?」とその感情の責任を押し付けてきます。

4.自己を維持するために自分をも欺く人

これは最上級に難しいタイプです。精神科医で作家のスコット・ペック(Scott Peck)は、「人の形をした悪魔(Human Evil)」と呼びます(3)。以前、彼の著書「People of the Lie」を読んだとき、私は全身に寒気が走りました。この種の人は、罪悪感を回避しかつ完璧な自己のイメージを維持するために、自分自身に嘘をつく事ができます。そして、他人にも嘘をつくのみならず、特定のターゲットをスケープゴートにして破壊していきますが、周囲から見てもそれに全く気づかない、社会的にはむしろ優秀で高く評価されたり、愛にあふれているとさえ認識されます。

以上4つの例以外にも、まだまだ多くのタイプがありますが、深入りするとメンタルに良くないのでもうやめましょう(笑)。少なくても、恐ろしく難しい人は、あなたがまともだと思う理論や常識は通用しません。敢えてそうしているからです。そして、本当に難しい人間は非常に巧妙です。その道のプロです。その点ではあなたよりはるかに優秀かもしれません。感情的になったらあなたの負けです。こちら側も考え方のベースを変えなければなりません。以下、難しい人に対峙するポイントです。

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難しい人の対処の仕方

1.相手を変えようとする意識を捨てる

まず、相手に何かを理解させたり、説得したり、コントロールしようとする一切の意識を捨てましょう。理屈や道理が通じる相手ではありません。

変えなければならないのは、あなた自身であり、相手ではありません。自分の考え方を伝えることはあっても、それを押し付けてはいけません。判断の責任は相手に持たせます。それ以上のことをする必要はありません。指示した途端、相手はその指示の責任をあなたに押し付けてきます。コミュニケーションが成り立たない事で、誤解されたり、嫌われる事を心配するかもしれませんが、気にした途端、相手にペースを奪われてしまいます。

例えば、感情的になって騒いでいる人に「静かにしなさい、落ち着きなさい」と言っても、状況が収まらないだけでなく、あなたがその場の責任まで請け負ってしまいます。「静かにした方がいいと思うよ」など意見を伝え、相手の行動の責任は相手にあるままにしておくのです。

必要な場合は、あなたの思いや考えに基づいてではなく、明確なルールに則って相手を縛ります。

2.相手を理解する事に努め、なぜそういう態度・行動を取るのか動機を考える

大切なのは相手の人格ではなく、相手の考えがどこから来ているのか、相手が置かれている状況に目を向けることです。
聞くこと、そして「どうしてそう考えるんだろう」と相手の立場になって考えます。質問をする場合は、とげのない思慮深い言葉を選ぶよう注意を払います。
そうする事で、自分と見ている事実が違う事に気が付くかもしれません。個人的な事情や、置かれた状況とものの見方が違うから、不安だったり、何かを避けようとしている事が、あなたへのアプローチに繋がり、結果としてそのような行動をとっていると分かるかもしれません。

理解に徹する事はあなたを謙虚にします。
声を荒げたり、相手を見下した言い方をしない、穏やかに話す、相手が一息つくまで待つなどコミュニケーションのコツが紹介されますが、そもそも論として、相手を理解したいと思い、理解する事に徹すれば、自然とこのような態度になるはずです。

3.自分の意識と行動を変える

繰り返しになりますが、難しい相手との関係において変える事ができるのは、あなたの意識と行動だけです。ありがちなのは、相手の文句ばかり言って、自分が考え方や行動を変えない事です。

自分の行動を変えない事で、ある意味、あなたも問題に加担しています。自分は間違っていないという考えから抜け出せないと、解決には繋がりません。それを克服するためには、自分の対応の間違いが明らかになったら素直にそれを認め、そしてその間違いを取り除く行動を自分が実行します。

4.自分と相手の間に十分な距離を取り、決して相手の土俵に乗らない

相手が赤の他人であれば、全く関わらないという選択肢もありますが、残念ながら、仕事の関係などで、全く無関係でいられない時もあるでしょう。そんな場合でも相手と適度な距離を取るのが大切です。

難しい人が声を荒げると、ついつい怒鳴り返したり反論しますね。そうすると相手の思うつぼです。相手が「近寄って来い」とメッセージを送ってきているのです。難しい人は巧みに2人の間のフェンスを乗り越え侵入し、あなたのロジックを壊し、自分の土俵に引き込もうとします。大量のメールやメッセージを受け取るかもしれませんが、いちいち反応する必要はありません。そんな人に嫌われることを恐れてはいけません、そもそも嫌われていますから(笑)。

嘘つき呼ばわりされたり、悪者扱い、誹謗中傷されても、その撒かれた餌に近づかず、感情的にならず、逆に距離を取ってて、必要以上の事は話さず、安易に同意もしません。冷静さを保ち、相手の話を聞く事に集中し、嵐が去るのを待つのです。

日本でも「心の知能指数」や「感情知能」として紹介される事が増えてきたエモーショナル・インテリジェンス(Emotional Intelligence : EQ)で引用される言葉に「アパテイア(apatheia)」があります(4)
「アパテイア(apatheia)」はもともと哲学用語で、感情に邪魔されない心の状態です。アパテイア(apatheia)は、無関心(apathy)ではなく、平静な状態を意味します。感情的に他人に近づきすぎて影響を受けたり(巻き込まれ型)、世界から完全に離れる(解離型)のでもなく、他人と距離を取るものの、世界の秩序の一部にある状態です。この2つの状態の間にあるスイートスポットを見つけることができれば、外の世界で起きることから悪い影響を受けず、満足感と良い感情を維持できるのです。

5.結局すべての問題を解決できるわけではない

あなたは、すべての問題を解決できるわけではありませんし、すべてに責任があるのでもありません。聖徳太子やブッダでさえ全ての人に対応できたわけでなく、全ての問題を解決できたのでもありません。
考えられる限りのことをした結果が満足できなくても、自分を責めない事です。相手の問題を自分の問題にしてはいけません。あなたの仕事は、他人の問題を引き取ることではありません。

The HBR Guide to Dealing with Conflict」の著者であるエイミー・ギャロも、どんなにあなたが頑張ろうが対処できない人は必ずいて、それは仕方がないことだと述べています。

時々人はあなたに怒り狂うでしょう。。。それでOK。 ~ エイミー・ギャロ
Sometimes people are going to be mad at you … AND THAT’S OK. ~ Amy Gallo

難しい人との対峙は、ものすごいエネルギーを奪います。そのストレスがパフォーマンスを下げるだけでなく、そのために心と体まで害する事はあまりに不条理です。変えることはできないと一線を引き、それ以上の努力はしない事です。あなたのそのエネルギーを自分や家族のため、世界平和、社会貢献などもっと有意義な事に使ってください。

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最後に

最後にポイントを簡潔にまとめました。

  1. あなたの前提を捨てる
  2. 相手の良し悪しを判断しない
  3. 相手に興味を持ち、 聞き、理解することに集中する
  4. 相手の人格、人柄ではなく、背景、関心、動機、意図、課題とその捉え方に集中する
  5. 感情に感情で返さない。落ち着き、冷静でいる
  6. 沈黙を利用する
  7. 売られたけんかを買わない
  8. 相手の土俵に乗らない。嘘には真実で返し、否定には肯定で返す
  9. 限界点を設定する。あなたは全てを解決できる訳ではない

皆さんも恐ろしく難しい人には人生を振り回されないように、変えられない事は変えられないと割り切って対応していきしょう!

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参考文献
(1) “CPP Global Human Capital Report – Workplace Conflict and How Business can Harness It To Thrive“, CPP, Inc., 2008/7.
(2) Scott Mautz, “6 Ways to Gracefully Handle the Most Difficult People in Your Life Co-workers or any difficult people in your life don’t have to cause you so much angst“, Inc., 2019/10.
(3) M. Scott Peck, “People of the Lie”, Touchstone, 1998/1.
(4) Drew Bird, “Emotional intelligence: How to work with people you don’t like“, The Enterprisers Project, 2019/6.
(5) Karen Young, “Toxic People: 16 Practical, Powerful Ways to Deal With Them“, Hey Sigmund
(6) Karen Young, “Toxic People: 12 Things They Do and How to Deal with Them“, Hey Sigmund
(7) Barbara Markway, Reviewed by Lybi Ma, “20 Expert Tactics for Dealing with Difficult People“, Psychology Today, 2015/3.

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