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なぜ人はいつも問題を他人のせいにするか?「Blame Game」から抜け出そう!

  • 投稿カテゴリー:人が変わる
  • 投稿の最終変更日:2021年11月2日
  • Reading time:7 mins read

何か間違ったことや、都合が悪いことが起きた時、人は誰か他人のせいにします。なぜ他人を責めるのかというと、とても簡単で楽だからです。人のせいにする事で、問題の責任をその人に負わせ、自分自身は責任から逃れ、文句を言っているだけの自分を正当化できるからです。

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はじめに

何か間違ったことが起きたり、都合の良くないことが起きた時、人はどうするでしょうか?

。。。誰か他の人のせいにします。

なぜ他の人のせいにするかというと、とても簡単で楽だからです。人のせいにする事で、問題の責任をその人に負わせ、自分自身は責任から逃れる事ができます。

これは、政治、会社、家族、テレビの報道やワイドショー、ソーシャルメディアまで、私たちの身の回りのありとあらゆる場面で文字通り毎日見られる現象です。逆に目にすることなく生活する方が困難なくらいです。

最近の大きな例で言えば、コロナウイルスですね。
インフルエンザ、天然痘、ペスト、コレラ、スペイン風邪等々、歴史を見れば、感染症の大流行は繰り返し起きていて、今回人間が加担した可能性はあるものの、災害のようなものであり損害を避ける事はできません。
政府の対応が正しかったと言うつもりは微塵もありませんが、一方で、すべての問題を押し付けるのもおかしな話です。感染症の発生は地球の仕組みのせいですから、本来地球のエコシステムを責めるべきでしょうが、何のせいにしようが問題が解決するわけではありません。

ある種の出来事は、残念ながら私たちに多くの不利益をもたらします。時にそれは誰のせいでもなく、起きる時に起きてしまいます。しかし、そのような事でも私たちは誰かのせいにしたがります。

私たちは他にも様々な理由で、他人に責任を押し付けようとします。例えば、

  • 今日遅刻したのは〇〇のせい
  • 会社をやめるのは〇〇のせい
  • 納期に間に合わなかったのは、変更が多いクライアントのせい
  • 納期に間に合わなかったのは、ミスした下請けのせい
  • プロジェクトが失敗したのは、余計な口を挟んでくる部長のせい
  • プロジェクトが失敗したのは、口を挟んでこなかった部長のせい
  • 洪水の被害を受けたのは〇〇党のせい
  • 私がこう育ったのは、両親のせい
  • 人生がつまらなかったのは、〇〇のせい
  • 〇〇ちゃんが先に叩いたから、〇〇ちゃんがいけないんだよ!
  • 私がこうなってしまったのは社会のせいなんです
  • 私がいっぱい食べるのは、体質のせい
  • 私がいつも人を遮って話すのは、この口のせい

ま、「体質」や「口」はもはや他人ではありませんが(笑)。
成功は自分の成果とみなし、失敗や都合の悪い事は外的要因のせいにすることを「自己奉仕バイアス」と言いますが、他人を責める心理も基本的には同じです。

たしかに他人が原因の一部ということはあるかもしれません。部長も両親も悪かったかもしれませんし、〇〇党も悪かったのでしょう。でも、実際はそれだけでなくその他諸々の要因が絡まっていたり、更にはあなた自身もその要因の一部だったという事はないでしょうか?また、誰のせいでもなく単に運が悪かっただけという事はないでしょうか?

自分の手には負えないような事に、自ら責任感を持って対処するのはとても大変です。一方で、できるだけ人のせいにしておいて、当事者になるのを避け、遠くから文句を並べて静観するのは、はるかに楽です。

人は他人に責任を転嫁しないと、その責任を自分に転嫁されてしまうのではと恐れます。責められるより先に、相手を責めなければなりません。先手必勝です。そのため、合理的に根本原因や対策をみんなで考えようと提案するより、スケープゴートを探すのに必死になります。

他人を責めることは、ストレスや不安から自分を守るための自己防衛のメカニズムとして、頭の中にデフォルト(潜在意識)で組み込まれていて、自分には非がないと正当化し、時に自分をかわいそうな被害者に仕立て上げます。意識しないと、ついついそのような行動を取り続けてしまう、人間の本能です。
しかし、以前「なぜ個人と組織は自己防御するのか ~ defensive behavior ~ 個人編」で紹介したように、自己防御がもたらす心地よさの効果は短く、長期的にはむしろ大きなストレスをもたらします。自己防御は、幻想の安心と短命な自尊心をもたらすだけです。

他人のせいにするという体に染みついた習慣を変えるためには、当事者意識をもって自分事として考え物事に取り組む事が必要で、そのためには、自分が変わる、自分の行動を変える事が不可欠です。

以下に他人を責める要因、その負の影響、そして、どうやってこの「Blame Game」を克服していけるのかを紹介していきます。

図:相手に責任を押し付け合う激しいバトル

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他人を責める「Blame Game」の要因

なぜ私たちは問題を他人のせいにする「Blame Game」に陥ってしまうのか、以下にその要因を列挙します。

1.責任転嫁。他人を悪者にして、自分を正当化する。さらには自分を犠牲者、被害者にしておく
2.他人のせいにすると、自分から手離れして、自分の仕事や責任、面倒、不安が増えなくて楽
3.自分のせいにするのは、自分の考えと行動を変えなければならなくなるため、勇気がいる
4.体に染みついた自己防衛のためのメカニズム(潜在意識、バイアス)
5.習慣や経験。幼少期の、両親や周囲の人など環境やトラウマの影響
6.怒りや落胆、恥、悲しみ、失望、無力感などの負の感情を他人に押し付ける事で解消し、自尊心、メンツを保つ
7.組織や社会の仕組み:自分の非を認めると評価や給料が下がる。訴訟に勝つため/負けないために他人のせいにするインセンティブがあるなど。

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他人のせいにする事がもたらす負の影響

1.他人のせいにし続けることで、その方向にしか視点が向かなくなるので、視野が狭まり、物事を大きな視点で大局的に見る事ができなくなります。そのため、正しい問題解決ができません。

2.人のせいにすると、自己を省みる事ができません。人は反省することで選択肢を広げます。自己を省みる事ができない場合、自分の能力を高める事、つまり成長する事ができません。

3.人を責めることは、被害者意識を育て、怒りや恨みを生みます。負の感情に支配され、感情を生産的なものに変える事ができません。

4.攻撃の応酬になる。いったん相手を攻撃すると、相手も感情的になってやり返してきます。攻撃の応酬が泥沼化すると、他人からの信頼を失ったり、関係の悪化に繋がり、最悪の場合は、「Lose – Lose」のお互いをつぶし合う関係に陥ります。

5.他人のせいにすることで、物事を自分でコントロールしたり、自分で変える権利や力を失います。自分の自律性、自由の否定です。もしあらゆる事を他人のせいにした場合、人生のすべてを他人任せにすることになり、自分で人生を切り開くことができません。最終的に、自らにストレスがかかり、自分の人生に悲観するようになります。

図:相手に責任を押し付け合う激しいバトルの末に

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他人を責める「Blame Game」をどうやって克服するか

人のせいにしても決して本当の解決には繋がりません。
今まで人のせいにした結果がどうだったかを思い出してみて下さい。その結果、どれだけ自分が幸せになったか、成長できたか、自分に問いかけてみてください。

他人を非難する事で物事が前に進むわけではありません。

1.相手をコントロールしようとするのをやめる
他人があなたを変える事ができないように、あなたも他人を変える事ができません。人をコントロールしようとするのは時間の無駄なだけでなく、コントロールしようとすればするほど、感情的になって問題を深刻にするだけでなく、本来あるべき問題解決からどんどんずれていきます。そのために必要な最初のステップは、誰かをコントロールしようとしている時の自分に気が付く、自分で自分の姿を認識できるようになる事です。

2.相手を責める前に、自分が問題の一部になっていないか考える
「あいつらが悪い」と言う場合の「あいつら」の中には自分も含まれています。他人を責める事であなたは同じような思考と行動をずーっと繰り返します。そこに進化や成長はありません。相手や第三者の立場になって考えてみれば、きっと違う風景が見えてくるでしょう。

3. 何事からも学ぶべき教訓があることを信じ、それを実践する
最も重要なステップの1つです。たとえ不安に感じることがあっても、そこから教訓を得て、学びたいと心から思わなければ、前に進むことはできません。自分を成長させてくれる機会と捉えることです。以前紹介した書籍「マインドセット」を引用すれば「Growth mindset」、つまり、学びや成長に繋げるマインドセットを持つことです。人のせいにばかりする人は「Fixed mindset」、固定したマインドセットを持ち、現状維持、自己防衛に躍起になります。

4.誰が悪かったかではなく、何が悪かったかを考える。
問題解決から「誰が」という要素を排除して下さい。問題を人に結び付ける習慣をやめて下さい。問題から人の要素を排除し、純粋に問題の解決に集中すればするほど、責任を転嫁したり、感情的になる事もなくなります。そのためには、人ではなく、行動や仕組み、事実、因果関係に注目します。クリティカルシンキングを身に付けたり、人間の認知バイアスを理解する事も、人間の癖や自分の癖を理解し、正しい対応に導くことを助けます。

5.自分がたどり着きたい目的を確認する
あなたが達成したい目的はなんですか?
そのためにどんな行動を取るのが良いでしょうか?
その行動を取るために、あなたが持っていたい感情、持っていたくない感情はどういう感情ですか?
感情を変えるためには、どういう考えを持つべきでしょうか?

以上紹介した全ての項目に共通するのは、「見方を変える」という点です。自分が習慣的に行ってきたモノの見方は、数多くある見方の一つに過ぎません。正しい問題解決には、様々なモノの見方ができる必要があります。できるだけ多くの見方ができるように、日々色々な角度や立場から物事を見る事を意識したり、色んな経験を積む事も大切です。

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最後に

以上、問題を他人のせいにする要因、その負の影響、そしてそれをどうやって克服できるか見てきました。
最初に紹介したコロナウイルスの例で言えば、すべて他人のせいにしたがる人がいる一方で、「自分になにか出来る事はないか?」と考え動き出す人たちもいますね。それは困った人を助けるという意味だけでなく、感染を回避するために自分がどう行動するか、万が一の時にどう備えておくかという個人レべルの小さな取り組みも含みます。
「他人が何をすべきか」ではなく「自分が何をすべきか」に意識を変えるだけで、自分にも社会にも大きな変化をもたらす事ができます。

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今回は「なぜ人はいつも他人を責めるのか?」を見てきましたが、ここで紹介したように、人は他人に問題を押し付け責任から逃れようとする一方で、自分を主張することに躍起となり、聞く耳を持たないという事も、これまたいたる所で毎日のようにおきます。
次回は「なぜ人は他人の言う事を聞けないのか?」を見ていきます。

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参考文献
(1) Samantha Taylor, “The Blame Game – why blaming others hurts you more than you realise“, 2020/2.
(2) Bernard Golden, reviewed by Jessica Schrader, “7 Consequences of Blaming Others for How We Manage Anger“, Psychology Today, 2018/11.
(3) Gustavo Razzetti, “How to Stop Playing the Blame Game“, Fearless Culture, 2018/3. 
(4) Vaibhav Mehta, “How To Stop Blaming Others And Win At Life“, The Wandering Vegetable

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