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難しい会話 Difficult Conversations:学びに変える方法と、難しくなる前に対処する方法

  • 投稿カテゴリー:マネジメント
  • 投稿の最終変更日:2021年9月11日
  • Reading time:6 mins read

「顧客や上司に反対意見をする」、「情報を共有しない同僚を注意する」、「ルールを守らない部下の仕事を変える」、、、難しい会話は状況を変えて私たちをチャレンジします。ポイントは2つです。相手を理解し学ぼうという姿勢と、そもそも難しくなる前に対処する事です。

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今回は、書籍「話す技術・聞く技術 ― 交渉で最高の成果を引き出す「3つの会話」(原作タイトル:Difficult Conversations)」の紹介を織り交ぜながら、難しい会話にどう対応するのか紹介していきます。なお、本書は、原作1999年、日本語版2012年発刊で、ハーバード・ネゴシエーション・プロジェクトの取り組みの成果の一つとして、ダグラス・ストーン、ブルース・パットン、シーラ・ヒーンの3名によって書かれたものです。

私は20年ほど前に本書を英語の原作で読みました。小口どころか印刷面まで黄色く変色した本を久しぶりに本棚から取り出し、改めて読み直してみました。

以下、本書の冒頭にあるジャックとマイケルのやり取りです。

ある日の午後遅く、ジャックは、親友でありクライアントでもあるマイケルから電話を受けました。
明日の午後までに財務パンフレットが必要だが、彼のデザイナーが不在なので、助けてくれないかというものでした。
ジャックは、別のプロジェクトの真最中でしたが、マイケルは友人だったので、夜遅くまでパンフレット作りに取り組みました。

翌朝、ジャックはマイケルにドラフトに目を通してもらい、ゴーサインをもらいました。ジャックは午前中のうちにマイケルの事務所に行き、彼の机の上に印刷したパンフレットを置いて戻りました。ジャックは疲れ果てましたが、マイケルを助けることができて嬉しく思いました。

ジャックは自分のオフィスに戻った後、マイケルからのボイスメールに気が付きました。

ー ー ー ジャック、君は本当に台無しにしてくれたね。時間がなかったのは知っているけど、売上表ははっきり示されていないし、しかもずれてるよね。これはひどいよ。今回のクライアントはすごく大切なんだよ。すぐに直してくれないかな。メッセージを聞いたらすぐに電話して。 ー ー ー

ジャック:やあ、マイケル。メッセージを見たよ。
マイケル:やあ、ジャック。これを見てくれよ、やり直しだ。
ジャック:ちょっと待てよ。確かに完璧じゃないかもしれないけど、表はちゃんとラベリングされてるじゃないか。 誰も間違えないよ。
マイケル:なあ、ジャック。こんなの客先に渡せないのは分かるよな。議論の余地無しだよ。とっとと直そうぜ。
ジャック:じゃあ、今朝見た時に、なんで何も言わなかったんだよ?
マイケル:俺は校正係じゃないぜ。ジャック、大至急なんだ。問題は今やるかやらないかだよ。君がチームの一員か、そうでないかって事。どうする?
ジャック:わかった、わかった。 やり直すよ。

筆者は、難しい会話には、3つの特徴があると述べています。

  • お互いの意図、前提、解釈が違う
  • 感情に関わる
  • アイデンティティに関わる

「お互いの意図、前提、解釈が違う」とは、お互いのものの見方が違う、ずれているという事です。
上の会話では、パンフレットの出来について見方が違いますね。事実は一つですが、それぞれがある意図を持ってそれぞれの解釈を付け加えます。お互いが自分が正しいと思い込んで、相手が間違っていると考えます。そして双方が相手に問題を押し付けます。
また、いらだちや落胆、傷心、混乱、様々な感情が二人を交錯していますね。
更に、ジャックにとっては、マイケルのためにと思って一生懸命やったのに、結果的に自尊心が大きく傷つけられる事になりました。

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以下、難しい会話の対応策です。

1.自分を主張するのではなく、相手の立場に立って、相手を理解するように努める
相手を理解するとは、相手のストーリーに関心を持ち、なぜ相手がそう考えるのか、その背景に何があるのか考える事です。そのためには、自分が物事を見ているフレームや先入観をいったん取り外す必要があります。また、相手を理解するためには、相手に質問する必要があります。
相手には自
分が持っていない何かが必ずあります。大切なのは、そこに関心を持ち、学ぼうという気持ちを持てるかどうかです。

2.相手をコントロールして、相手より上に立とうと思うのをやめる
相手のストーリーを理解する事に集中すれば、おのずと相手をコントロールする気持ちはなくなります。お互いが相手のコントロールに成功する事はありません。コントロールしようとすれば、必ず Win-Lose の関係、一方が負ける、引き下がる結果になります。

3.自分の感情がどこから来るのか、自問する
あなたの感情は、あなたの思考が作っています。相手があなたの感情を作っているのではありません。感情に振り回されず、感情を相手のせいにするのをやめ、その感情を引き起こしているあなたの元の考えを自問します。

4.目的に対して、お互いの利益を擦り合わせる
相手のストーリーを理解した上で、自分のストーリーを説明し、お互いが達成したいゴールにたどり着くにはどうするべきか、お互いの見方を修正しながら話し合います。お互いの利益が摺り合うようなお互いのフレームを見つける作業です。

ここまでは概ね書籍に沿った説明です。

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しかし、このジャックとマイケルのやり取りですが、私が思うに、そもそも論として、最初に2人がしっかり話し合い、認識を共有していない事が問題です。
本書は、難しい会話にどう対応するかという本ですが、事前にしっかり確認していれば、このような難しい会話にたどり着かずに済んだはずです。

つまり、2人はこんな会話をするべきだったはずです。

マイケル:ジャック、頼むよ、大至急なんだ、なんとか明日の朝までにやってくれないか。
ジャック:マイケル、もちろん君を助けたいけど、今日はまだ他の仕事があるんだ。
マイケル:そうか、でも他に人がいないんだ。なんとかお願いできないか。
ジャック:分かったよ。でも他の仕事もあって、時間が限られているから、正直に言うけど、たった一晩でちゃんとしたものを作るのは難しいよ。出来るだけの情報を先にくれないか。その後また電話するよ。
マイケル:ありがとう。すぐに資料とイメージを送るよ。

マイケル:何時ごろまでにできそうかい?
ジャック:日は跨いでしまうかな。。。
マイケル:忙しい所すまないな。
ジャック:念のため、11時までには一度ドラフトを送るよ。遅くてすまないけど、それで一回見てくれないか?その後君が確認した内容も含めて最終の修正して印刷するから。この進め方でいいかい?
マイケル:分かった。無理言ってすまないな。今回うまく行ったら、噂のウルフズ・グリルで最高のステーキをご馳走するよ!

書籍の巻末には、2人の関係を修復させる16ページに渡る難しい会話とそのための周到な前準備が記載されています。実際に読んでいただければ分かりますが、この関係修復の会話を、作り込んで推敲された文章でなく、現実世界で即興で口頭で実現するのは、はっきり言ってとても困難です。
上の会話のように事前にしっかり確認しておけば、1ページ以内で収まります。
※ なお、私は書籍の批判をしているわけではなく、本書がコミュニケーションの良本であることは付記しておきます。。。(汗)

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難しい会話の背景にあるのはコンフリクトです。コンフリクトはコミュニケーションを通して表現されます。難しいコミュニケーションをどう扱うかは、コンフリクトマネジメントでもあります。以前紹介したように、コンフリクトには、構造、利益、価値、関係、情報の5種類のコンフリクトがあります。

コンフリクトにはグループに様々な考えをもたらし、新しい成長に繋がるプラスの面もある一方で、人間関係のコンフリクトは扱いが厄介です。
どうしても避けられない人間関係のコンフリクトは確かにあるでしょう。しかし、私からのアドバイスは、情報や解釈の不一致、誤解など、将来的にトラブルの要因となる事が予想されるコンフリクトは出来るだけ早い段階で解決しておくことです。
事前に曖昧な確認しかせず、明確な共通認識を持たずに、何となく始めてしまう事のほとんど全ては、後で問題となって表れます(私の経験上も。。汗)。
負の結果に発展する可能性があるコンフリクトは、問題に発展する前にできるだけ芽をつぶしておく事が大切です。

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プロジェクトマネジメントの分野や、チームデベロップメントにおいても、チームが機能するためには、下記のステップを踏む事が必要とされます。

「形成期 ➡ 混乱期 ➡ 統一期 ➡ 遂行期 」
「Forming ➡ Storming ➡ Norming ➡ Performing 」

これはグループダイナミックスの研究を主に行った心理学者ブルース・タックマン(Bruce Tuckman)が1965年に提唱したモデルで、タックマンモデルとも呼ばれます。
この4段階の中で、最も重要なのは「混乱期:Storming」です。
混乱期に、お互い遠慮せず腹を割って本音で話せる関係を構築できないと、その後、チームは機能しません。健全な混乱期を経ないと、衝突を先送りするだけでなく、先送りすればするほど、
問題とムダが大きくなって後から発生し、修復が難しくなっていきます。
これはチームに限らず2人の関係に関しても同様です。話し合いを避けて、スコープを明確にし共有する事を避け、曖昧なままにした結果が、マイケルとジャックのような衝突になって表れるのです。

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ただし、先に述べたように、いくら事前に関係を構築し認識を共有しても、回避できない衝突、難しい会話はあります。そのような衝突に、どう対応すれば良いのか、次回は、具体的なアドバイスをいくつかご紹介します。

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