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コンフリクト(意見の対立)の5つのタイプ:コンフリクトは「解決」でなく「転換」する

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2023年6月11日
  • Reading time:8 mins read

コンフリクトは「意見の対立」という意味で、否定的な印象を与えるかもしれませんが、人と人との関係や、組織の成長に欠かせません。意見の対立を表面的に「解決」するのではなく、その背景を理解し、成長に「転換」するコンフリクトマネジメントのスキルは組織のリーダーに必要不可欠です。

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コンフリクト(意見の対立)は組織の成長に必要不可欠

コンフリクト(意見の対立)は、あらゆるグループに、あらゆる状況下で発生します。

ある心理学上の実験(1)によると、恋愛関係にあるパートナーでも、ポジティブな感情とネガティブな感情の両方を引き起こすそうです。言い換えると、あなたはパートナーを愛し、同時に憎むことができます(2)
2人がお互いに献身的な関係を築いていれば、意見の対立(コンフリクト)が生じても、お互いの利益を正しく認識して、大きな困難なく乗り越えていけます。逆も真で、コンフリクトをうまく対処できれば、実りある良好な関係を築けます。

どんなに仲良いカップルの様な間柄でもコンフリクトがあるのですから、そんなに仲が良くない会社の上司や同僚との間にコンフリクトが生じるのは当然です(笑)。コンフリクトは、人と人の考えの違いから自然におきる現象で、そのため、人が集まって一緒に働けば、避けて通ることはできません(3)(4)

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人と人、それぞれ異なる様々な考えがあるから、新しいアイデアが生まれます。
色々な問題を見つけるから改善があります。
お互いがお互いを認め合う持続可能な理解のためには、共に問題を注意深く観察し、相手の違った見方を受け入れ、質問し合い、議論し、お互いの利益を明確にしてそれを互いに共有する必要があります。

組織のダイバーシティが叫ばれているのも、様々なバックグランドを持つ人たちの様々な意見を受け入れるためで、意図的に組織にコンフリクトを導入し、建設的な意見の対立を生む必要があるからです。
逆に対立がない組織では、異なる意見が交わされず、とても限られた視野で物事が決断されていきます。

意見の対立を鎮静すべきものと考え、表面的な対応で安易に終わらせてはなりません。
対立は、正しく対処すればグループに意味のある関係や機会を築く道具になります。その道具をどう有効に使うかに焦点をあてるべきです。この意識がないと、いとも簡単に言い争いや険悪な関係に陥り、ネガティブな結果しかもたらさないのは皆さんもご経験の通りです。

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リーダーに必要なコンフリクトマネジメントのスキル

コンフリクトマネジメントは、コンフリクトのポジティブな側面を促進し、ネガティブな側面を抑制するプロセスです。 対立に適切に向かい合う事で、グループの結果は改善します(5)

あまり議論に上がることはありませんが、組織のリーダーやマネジメントに求められる重要なスキルの1つは、このコンフリクトに対処するスキルです(6)
もちろんリーダーには、ビジョンや、組織を先導する力は必須です。コンフリクトマネジメントのスキルがあるリーダーは、様々な人の考え方の違いや視点の違いを歓迎し、議論を促し、建設的でオープンな対立と問題解決を促進します。
良いリーダーは、言葉にされるコンフリクトのみならず、言葉にされず心の内に閉じ込められているコンフリクトも敏感に感じ取り表面化して、チームが解決に向けて取り組むことができるようにします(7)。見方を変えるとコンフリクトマネジメントは、チームの心理的安全性を高めるための取り組みとも言えるでしょう。

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コンフリクトの5つのタイプ

下図は、クリストファー・ムーア(Christopher Moore)が紹介した「コンフリクトのサークル」(Circle of Conflict)で、コンフリクトが生じるエリアを5つに分類し円で表したものです(8)。ムーアは、この分類を、調停(メディエーション=裁判を使わない紛争解決方法の一つ)をサポートするための理論として紹介しましたが、コンフリクトの原因を特定し解決に利用できる一般的なツールとしても有効です。

図:コンフリクトのサークル(Circle of Conflict)

例えば、典型的な業務上のコンフリクトに、限られたリソースの取り合いで、どの業務を優先してリソースを分配するかという対立があります。一見すると、単純なリソースのコンフリクトに見えるようでも、実は上記の複数のタイプのコンフリクトが混在している場合があります。

それぞれのコンフリクトのタイプについて見ていきましょう。

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1.利益がもたらすコンフリクト(Interest)

どんな交渉でも、ふつうあなたが望むものを相手に主張しますね。これを「ポジション」と言います。交渉に当たっての相手に対する姿勢です。しかし、この「ポジション」と、あなたが根本的に望んでいる真の「利益(Interest)」は通常異なります。
どういう意味かお分かりになるでしょうか??

例を挙げると、あるサラリーマンのお父さん、出来るだけ安く昼食を済またいと、いつも少しでも安いセットを注文します。この「少しでも安いランチセットを求める」ことはポジションです。その背景には「出来るだけ節約したい」という思いがあります。
この思いを更に突き詰めると「節約して家族を美味しいご飯にでも連れていきたい」とか「子供の将来の学費を少しでも貯めておきたい」などという気持ちに繋がります。そして更に突き詰めると、最終的に「家族との幸せ」を願う気持ちに突き当ります。
これがお父さんにとっての利益です。
つまり、このお父さんは「家族の幸せ」という利益を実現するために「いつも安いランチセット」というポジションを取っているのです。一方でお父さんが「家族の幸せ」という利益を達成するためには、「いつも安いランチセット」という1つのポジションに限らず、他にも様々な選択肢があるのはお分かりになりますね。

お互い口や文書で主張しあうこと(ポジション)に捉われず、お互いがその主張の背景や動機、心の奥底で真に望むもの(利益)がいったい何なのか理解する事、ポジションではなく利益にフォーカスすることは、意見の対立をWin-Winの関係に転換するのにとても重要な役割を果たします。

また、組織内においては、パーパスやビジョン、経営目標など、組織の利益を明確にしメンバーで共有することが組織内の利益のコンフリクトを防ぎます。

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2.関係がもたらすコンフリクト(Relationship)

関係が引き起こすコンフリクトは、人と人の私的レベルの対立です。コミュニケーション不足からくる誤解、ステレオタイプ、バイアス、偏見、性格の不一致などから生じる感情が絡まって発生するもので、良いコンフリクトではありません。多くの場合、自分の立場を主張しあったり、攻撃と防御を繰り返し、関係がもたらすコンフリクトは継続し続けます。

関係のコンフリクトに対応するには、人間関係を問題から切り離す必要があります。人と人との感情の衝突ではなく、対立している「事」にフォーカスします。
「おいおい、お互い落ち着いて、対立はやめよう」となどと対立そのものを安易に鎮静化しようとしてはならず、その対立の根本的な原因や背景、考えを理解するのです。先に紹介したポジションと利益の関係と同様です。
そのためには相手を変えようとするのではなく、相手の意図を理解することが必要です。また、自分の感情は自分に責任があり、相手に責任はありません。自分が持つ感情をもたらしているものが何か、自分が持ちたいと思う感情を持つにはどうすればよいのか考えます。

ただし残念ながら、あなたがこのコンフリクトの当事者で対立が深刻な場合や、過去に何回も繰り返された歴史がある場合、当事者だけで解決する事はとても難しいのも事実です。解決困難と思われるような重度の関係の悪化は、コンフリクトの火種から物理的に離れることや、マネージャーなど第三者に助けてもらうことが必要になります。

図:関係がもたらすコンフリクトのイメージ図

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3.構造がもたらすコンフリクト(Structure)

組織の構造上の力のバランスや、プロセスの干渉や障害から来るコンフリクトで、構造的なコンフリクトには構造的な対応が必要になります。つまり、役割や権限、プロセスを再定義する必要がありますが、その再定義が可能な人たち、通常は、問題が起きている階層より上位の階層の関与が必要になります。

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4.データがもたらすコンフリクト(Data)

データのコンフリクトは、データ自体に矛盾があったり、間違っていたり、互いが持っているデータが違ったり、ソースが違っていたり、情報不足、扱い方、解釈や評価基準の違いによっておきるコンフリクトです。
対策は、データを集め保管し利用するまでの一連の作業を出来るだけ統一することです。データの判断基準も明確にし共有します。つまり、先ほどの構造的なコンフリクトと同様に、データのコンフリクトもデータの取り扱いに関する解決が必要になります。

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5.価値観がもたらすコンフリクト(Value)

個人の価値観の違いがもたらすコンフリクトです。この場合は、コンフリクトを無くそうとするのではなく、対話を通じて違いを受け入れること、相互理解と尊重を目指します。価値観はその人の人間性そのものであり、他人が違う価値観を強要することはできません。倫理的・道徳的な問題がない限り、価値観そのものに「良い」も「悪い」もありません。
人は様々な価値観と調和して一緒に暮らすことができます。 価値観が違うことを受け入れられれば、争いが発生することはありません。

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最後に

コンフリクトはプライベートでも仕事でも、私たちの生活のありとあらゆる所で発生します。プレイベートで上手くコンフリクトに対応できるのであれば、それを仕事に応用することも可能です。プライベートのコンフリクトも仕事のコンフリクトも本質的には同じです。
重要なのは、コンフリクトを「回避」したり「解決」しようとするのではなく、成長や改善、新しいアイデアの創出に「転換」する意識を持つことです。
また、悪い対立をもたらす3つの典型的なトリガーは、「批判、要求、拒絶」です。コンフリクトが生じた場合は、まず一呼吸おいて、「批判、要求、拒絶」で反応しないように心がけたいですね。

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参考文献
(1) Zayas V, Shoda Y., “Love You? Hate You? Maybe It’s Both: Evidence That Significant Others Trigger Bivalent-Priming.”, Social Psychological and Personality Science, Vol 6, Issue 1, 2015
(2) Crystal Raypole, medically reviewed by Timothy J. Legg, “Help! I Hate My Partner Right Now”, Healthline Media, 2020/3
(3) Greer, L. L., & Dannals, J.,”Conflict in teams“, The Wiley Blackwell Handbook of the Psychology of Team Working and Collaborative Processes (pp. 317-344), John Wiley & Sons, 2017/3
(4) Wanda Tiefenbacher, “Team conflict: understanding types of conflict and how to manage them sustainably”, 2020/1
(5) “Conflict management“, Wikipedia
(6) Guttman, Howard, “The leader’s role in managing conflict”, Leader to Leader, University of Pittsburgh, Issue 31, 2004
(7) Howard M. Guttman, “Conflict Management – Without these skills, you enter a deadly war”, Executive Excellence Magazine
(8) Christopher Moore, “The Mediation Process: Practical Strategies for Resolving Conflict, 4th Edition“, Jossey-Bass Publishers, 2014/4
(9) “Types of Conflict“, Mediate.com, Resourceful Internet Solutions, Inc.
(10) Fadi Smiley, “Leadership Guide to Conflict and Conflict Management“, Leadership in Healthcare and Public Health, Pressbooks
(11) Paluku Kazimoto, “ANALYSIS OF CONFLICT MANAGEMENT AND LEADERSHIP FOR ORGANIZATIONAL CHANGE”, International Journal of Research In Social Sciences, Vol. 3, No.1, 2013/9

 

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