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ローカス・オブ・コントロールと、間違った帰属をもたらすバイアス

  • 投稿カテゴリー:人が変わる
  • 投稿の最終変更日:2023年10月13日
  • Reading time:5 mins read

自分が人生をコントロールできると信じ、成功も失敗も自分の責任だと思う人は、コントロールできないと思う人より、主体性、自律性、達成志向が強く、結果としてより良い生活を送ることができる傾向があります。ただし、成功や失敗の帰属にはバイアスがあるので注意が必要です。

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あなたは自分の運命を自分でコントロールできると思いますか?それとも外的な要因に支配されると思いますか?

ローカス・オブ・コントロール(Locus of control)

ローカス・オブ・コントロール(Locus of control)とは、アメリカの心理学者ジュリアン・B・ロッター(Julian B. Rotter)が1954年に提唱した概念です(1)
ロッターは、以前本サイトで紹介した社会的認知理論(Social Cognitive Theory)の前身のモデルである社会的学習理論(Social Learning Theory)を体系的に提唱したことでも知られています。

「ローカス」とは「場所」や「位置」を意味するラテン語で、「ローカス・オブ・コントロール」は自分が感じる「コントロールの所在」を意味します。 つまり、自分の人生で起きる出来事の結果に対して、自分がコントロールできると信じるか、それとも自分のコントロールが及ばない外的な力が支配すると考えるか、自分が感じるコントロールの度合いのことです。

実際は、人生のすべてをコントロールできると考える人や、人生の一切をコントロールできないと考える人は稀なので、ほとんどの人はその2つの間のどこかに位置しており、対象とする物事によってコントロールできるできないの度合いも異なるでしょう。

図:ローカス・オブ・コントロールのイメージ図(私の主観的なイメージに過ぎません。。)

内的なコントロールを信じる人は、自分の人生で起きる出来事は、主として自分自身の選択や行動の結果だと考えます。

例えば、テストで良い結果を取ったのであれば、自分の能力や努力の成果と感じ、悪い結果であれば、自分の努力が足りなかった、遊びすぎた、勉強の仕方が良くなかったなど、自分の行動が原因だと考え、行動を見直し変えていきます。
一方、外的なコントロールを信じる人は、教え方がよくなかった先生のせいだとか、出題形式がおかしいとか、国語の試験なんか意味ないなど、外的要因に原因を帰属させ、自分の行動を見直さない傾向があります。

多くのことを自分がコントロールできると信じる人は、そうでない人より、主体性、自律性、個人主義が強く、周囲への迎合や同調圧力に抵抗し、自分の人生を自ら切り開く傾向が高いです(2)。また、一般的には、自らが影響力を持ち、物事をコントロールできると認識できる人の方が、そうでない人よりも、物事をポジティブに受け止め、心理的にも健全です。

ただし、「内的志向は良くて、外的志向は悪い」という極端な単純化には注意が必要です。 例えば、過度に内的な人は、すべてが自分のせいだと責任を背負い込み、心理的なストレスを抱え、神経症、不安症、うつ病につながる可能性もあります。
自己のコントロールと責任のバランスをうまく取ることができるようになるには、自己効力感(Self-Efficacy:ある行動を成功させるための自分の能力を信じる力)と実際の能力(Competence)が必要です。能力も自己効力感も伴わない内的なローカス・オブ・コントロールは、根拠のない自尊心にもつながることがあります。 外的なローカス・オブ・コントロールが強い人は、自分の人生を、他人や境遇のせいにしたり、運・不運、神の力などに帰属させ、自分にはそれを変えることはできないと考え、ネガティブな面を強調して悲観的になることがあります。

しかし、その一方で、それをストレスと感じず、どうせ変えられないと開き直って気楽でリラックスした人生を送る人もいますし、内的なローカス・オブ・コントロールが強すぎる人より本人は幸せだったりすることもあります。

このような注意点はあるものの、心理学の研究によれば、一般的に、内的なローカス・オブ・コントロールが高い人は、達成志向が強く、より良い報酬の仕事に就くなど、健康で、幸せで、より良い生活を送ることができる傾向があります。そして、内的なローカス・オブ・コントロールは誰もが習得することができる能力なのです。

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自己奉仕バイアス(Self-Serving Bias)

ところで、内的な要素に原因を帰属させる内的帰属と、外的な要素に原因を帰属させる外的帰属に関しては、私たちがつい陥っていしまうバイアスがあります。
まず、私たちには自分の成功は内的要因に帰属させ、失敗は外的な状況要因に帰属させる傾向があります。これを「自己奉仕バイアス(Self-Serving Bias)」と言います。 例えば、仕事で成功した場合は、自分が頑張ったから成功したとか、自分が作った計画が良かったからだと主張する一方で、失敗した場合は、他の人の頑張りが足りなかったとか、計画で想定していなかった事態が起きたなど、外的な要因のせいにします。
先ほどのテストの例で言うと、合格したのは自分の努力の成果、不合格だったのは、今までと出題傾向が違ったとか、会場が暑くて集中できなかったなど自分の影響の及ばない外的な要因に帰属させるのです。

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根本的な帰属の誤り(Fundamental Attribution Error)

ローカス・オブ・コントロールは「自分の人生に起きる出来事の結果を自分がどう感じるか」でしたが、「他人の人生に起きる出来事の結果を自分がどう感じるか」にも、バイアスが生じます。
例えば、株式投資で大損した友人に対して、「リスクの考え方が甘いからだよ」と非難して失敗を相手の内的要因に帰属させる一方で、自分が同じように大損した場合は、「こんな出来事は誰にも想定できなかった」など外的要因に帰属させます。

自分が仕事でミスした場合は、ミスの原因を他人や状況のせいにするのに、同僚や部下が同じようなミスをすると、その人のせいにしたりします。自分がバナナの皮で転んだ時は、バナナの皮を置いた人のせいにし、他人が転んだ時は、転んだ人の不注意のせいにします。 つまり、他人の行動に対しては、外的な要因よりも、その人の努力や能力不足など内的要因に帰属させる傾向があるのです。

このバイアスを、「根本的な帰属の誤り(Fundamental Attribution Error)」と言います。 自分が「行為者」になった場合と「観察者」になった場合で見方が違うため、「行為者-観察者バイアス(Actor-Observer bias / Actor–Observer Asymmetry)」とも呼ばれます。

私たちが行為者である場合は、瞬間的に注意を自分の周囲の状況や他人などの外的要因に向ける一方で、観察者として見る場合は、周囲の状況よりもその行為の当事者にまず注意が向くために発生するバイアスです。また、自分がへまをした時は「よかれと思ってやったのだから」と自分の「意図や動機」を持ち出す一方で、他人がへまをした場合は「行動の結果」のみで判断したりもします。他人の意図や動機は分かりづらい一方で、自分の意図や動機と、相手の行動の結果は簡単に分かるからです。

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最後に

今回、まず最初にローカス・オブ・コントロールを紹介しました。
内的なローカス・オブ・コントロールを信じる人は、自分の失敗も自分の責任だと感じられる人です。一方で、後半説明したように、時にそのような人でさえ、「自己奉仕バイアス(Self-serving bias)」や「根本的な帰属の誤り(Fundamental attribution error)」に陥るケースはありますので、原因の所在を正しく帰属できているか気を付けたいところです。

参考文献
(1) Rotter, B. Julian, “Generalized expectancies for internal versus external control of reinforcement”, Psychological monographs, 80, 1-28, 1966.
(2) James Neill, “What is Locus of Control?

 

 

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