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書籍紹介:クソどうでもいい仕事と、週4時間だけ働く超合理的な仕事

  • 投稿カテゴリー:人が変わる
  • 投稿の最終変更日:2024年3月31日
  • Reading time:9 mins read

多くの人たちは、100年前と同じように9時から5時まで拘束され、仕事に意味を感じることができずに日々を過ごしています。一方で、超合理的に働き、週に数時間の労働だけで大金と自由を手にする成功者もいます。しかし、どちらの場合も、内的な目的がない限り、たどり着く先は同じような場所です。

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わたしも最近すっかり落ち着いてきて?、記事に毒気がなくなってきたような気がするので??、今回は何冊かの書籍を紹介しますが、まず最初に一番過激な本を取り上げましょう。

アメリカの人類学者であり、また資本主義や世襲制のない社会の創造を試みてきたアナキスト・活動家でもあるデヴィッド・グレーバー(David Graeber, 1961 – 2020)が書いた2018年の書籍「Bullshit job(邦題)ブルシット・ジョブ:クソどうでもいい仕事の理論」です。

これは、グレーバーが、2013年、雑誌「STRIKE!」に「On the Phenomenon of Bullshit Jobs: A Work Rant」というタイトルで寄稿した記事がものすごい反響を得て、最終的に本としてまとめたものです。
残念ながらグレーバーは本が発刊されてからわずか2年後の2020年9月に予期せぬ形で亡くなりましたが、彼の遺志はデヴィッド・グレーバー・インスティテュートにて引き継がれています。

なお、いつもと同様に、私は英語版を読んでおり、日本語版は読んでいませんので、日本語版との言葉や表現の違いについてはご了承ください。

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クソどうでもいい仕事

何年も前から、いや何十年も前から、オートメーション、ロボット、そして最近では生成AIでしょうか、新しい革新的な技術の出現によって、多くの仕事が不要になると言われてきました。
しかし、今になっても、どちらかと言うと人が余るというよりは、「人がいない、人がいない」と聞くことの方が多いような気がしますね。

1930年、経済学者のケインズは、20世紀末までにはテクノロジーが進歩し、先進国では週15時間労働を実現するだろうと予測しました。

では、現実はどうでしょうか?
20世紀末どころか21世紀に入ってからだいぶ経つのに、全然そうなっていません。

なぜなら、技術の進歩によって従来からある仕事は合理化が進み、無駄が排除されてきましたが、それと同時に、私たちを働かせ続けるためだけの無意味な仕事が生み出され、増え続けてきたからです。それは、従業員に1日8時間、週5日働いていると錯覚させたり、働いているふりをするように仕向けて、ただただ時間を浪費させるという仕事です。グレーバーはこれを「クソどうでもいい仕事:Bullshit job」と呼びます。

そのため、私たちは、合理化の恩恵を受けて、生活のゆとりや楽しみを享受したり、個人のビジョンやアイデアを追求できるようになることなく、100年前と同じように9時から5時まで拘束され、意味のない時間を過ごす苦痛を強いられているのです。

「クソどうでもいい仕事」の定義・特徴
・従業員でさえその存在を正当化できないほど完全に無意味で不必要なのに、雇用者からそうではないと装うように強要されているように感じる悪質な雇用形態
・その仕事に就いている人自身が、仮になくなっても何の悪影響もなく、むしろ良い影響があるかもしれないとさえ密かに考えている仕事

・その意味にまったく納得できないが、上司や同僚にその無意味さを相談したり報告することもできず、意義を感じずに毎日を過ごす仕事
・まるで、私たちを働かせ続けるためだけに、誰かが無理矢理作り出しているかのように感じる仕事

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あなたの仕事は「世界に有意義な貢献」をしていますか?

YouGovの2015年の世論調査によると、驚くべきことに、イギリスではフルタイムの仕事に就いている人のうち、自分の仕事が世の中に何らかの貢献をしていると確信している人は50%に過ぎず、そうではないと確信している人は37%にも上りました。なお、男性は42%、女性は32%が自分の仕事は無意味だと答えています。

アメリカで9000人を対象にした2021年の同様の調査でも、自分の仕事が世界に有意義な貢献をしていると感じているのは半数強(55%)のみで、22%はそうではないと答えました。これは同国で2015年に行われた調査とほぼ同傾向を示しています。

世の中には、これほどまでに無意味な仕事が蔓延しているのです。

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無意味な仕事とそうではない仕事

かつて、私たちの社会に、無意味な仕事はほとんどありませんでした。
あったのは、従来からのリアルな仕事、つまり、教師、看護師、床屋、ビルの清掃員、ゴミ収集員、バスや電車やトラックの運転手、レストランの従業員、農家や漁業を営む人たち、整備士、補修工、、この中には、特にコロナ禍でエッセンシャルワーカーとして認知されるようになった人たちも含みますが、私たちが生活するためになくてはならない職業に就く人たちです。
彼らが消えてしまったら、その結果が壊滅的なものになるのは明らかです。

では、「クソどうでもいい仕事」とは、どのような職種を指すのでしょうか?

それは主に、専門職、管理職、事務職、販売職、サービス職に含まれています。グレーバーによると、これらの職種に就く人たちは、かつては雇用全体の4分の1程度でしたが、今や4分の3に膨れ上がっています。

金融サービス、テレマーケターのような新しい業種が生まれたり、企業法務、健康管理、HR、広報のような部門がかつてないほど拡大したりと、サービス部門と管理部門が膨れ上がっています。人事コンサルタント、コミュニケーション・コーディネーター、財務ストラテジスト、高額だがあまり役に立たないレポートを書く専門家の数々。。。
また、不要な社内の委員会のための資料作成に時間を費やすスタッフ、誰も読まない社内報や報告書のネタを捻出したり、表紙をデザインしたり、また、これらの仕事を支援する人たちも同様です。
もしかしたらCEOや経営者さえもここに含まれるかもしれません。

これらのポジションがなくなっても、世の中に目に見えるような悪影響はありません。むしろ、事態は改善するかもしれません。

勤務中にやることがあればまだいい方で、中には本当にやることがない人たちもいます。
そのような人たちは、周囲の目を気にしながら、インターネットを眺めたり、SNSでのやり取りやプロフィールの更新、週末の予定準備に時間を費やしたり、考えるふりをしながら何も考えていなかったりしていて、実質的には何もしていません。少しまともな場合でも、実施するつもりもない業務改善セミナーに参加する程度です。

さらには、社会に貢献する職種に携わっている人たちでさえも、周囲に存在するクソどうでもいい仕事をしている人たちに振り回されたり、増え続ける書類や手続きに貴重な時間を削られたりして、「クソどうでもいい業務」を強いられる人たちもいます。

これらの人たちは、書類上は週40時間、あるいは50時間働いていても、実質的には15時間位しか働いていません。ケインズの予想は当たっていたのです。しかし、拘束時間は変わらず、時間やエネルギーを奪い取られ、心の底で無力感を抱えています。

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必要な仕事は冷遇され、クソどうでもいい仕事は優遇される

不思議なことに、私たちの生活に必要な仕事に就く人たちの賃金は抑えられている一方で、「クソどうでもいい仕事」に就く人たちの給与は高く、労働条件も良い傾向があります。むしろ、専門職として尊敬されたり、高い能力を有していると評価さえされます。実は、この人たちの多くは、仕事の無意味さを嘆く一方で、仕組みにうまく乗っかっていて、経済的・社会的恩恵を享受しているのです。

逆に、私たちの生活に必要な仕事に就く人たちの多くは、賃金が低いだけでなく、恣意的で無礼な扱いを受けています。キツイ環境で懸命に働いても、高く評価されることはありません。
つまり、概して、クソどうでもいい仕事はホワイトカラーの傾向があり、ブルーカラーはそうではない傾向があります。

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なぜ、クソどうでもいい仕事は存在するのか

なぜ、クソどうでもいい仕事は存在するのでしょうか?
そのような仕事が成立するだけでなく増えているというのは、合理化と効率化の要求に相反していて、資本主義の原理から言えばあり得ないことです。

この矛盾は、より深く社会問題を知るためのヒントになります。

実は、私たちは「生産的な仕事」や「意義のある仕事」や、会社の業績に貢献するために働くのではなく、「9時5時の仕事」自体が目的となり、それが前提条件となった組織で働き、その前提の社会に生きています。9時5時の仕事をせず、昼間プラプラしていると、まともな人間として認められません。
合理化を自負する経営者たちは、直接や労働力を削減すると同時に、その削減した労働力を意味のない9時5時の仕事に振り分けるのです。なぜなら、放ったらかしにするよりも、拘束しておいた方が安心だし、問題が少ないからです。

もともと仕事は9時から5時までコンスタントにあるようなものではなく、時々仕事があるという程度の散発的なものでした。
狩りにいって獲物をしとめれば、数日は村で休憩していればよい。村中総出で収穫をするが、それが終わればしばし休息の期間となる。客が来れば対応し、来なければ楽にしている。というように、ある時は頑張らなければならないが、それが終わればのんびりしていてよいものでした。

現在、テレワークやフレキシブルワーク、ワーケーションなどの浸透により状況は大分改善されてきています。これらの働き方の普及によって、多くの人がやるべきをやるために9時から5時まで働く必要はないと気が付き始めているでしょう。
しかし、まだ多くの人たちが9時5時のマインドセットを持ち、仕事がないときにのんびり過ごすことが怠惰であり罪であるという意識に捕らわれているのです。

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自らの目的を果たす

クソどうでもいい仕事は絶望、憂鬱、自己嫌悪の感情を引き起こします。
では、もし自分の仕事がそうだった場合、私たちはどうすれば良いのでしょうか?

意味が感じられない仕事がもたらす道徳的、精神的ダメージは甚大です。
しかし、目的を感じることができれば、私たちの気持ちは大きく変わります。

例えば、刑務所に収容されている受刑者が行う、土を掘り、レンガを積み、建物を建てるといった重労働でも、受刑者が自分のしていることに意味を感じる限り、喜びとなり、生きる糧となります。
先日、横浜刑務所で作ったパスタが大人気という記事を見かけましたが、喜んでくれている人がいると思えば、手間のかかる作業もやりがいに変わります。
しかし、土の山をある場所から別の場所に一輪車で移動させ、それをまた山から元の場所に戻すのを意味なく繰り返し強要させられるのなら、数日後にはノイローズになります。

第二次世界大戦中ナチスの強制収容所(ホロコースト)のからの生還者である精神科医のヴィクトール・フランクル(Viktor Frankl, 1905 – 1997)が1946年に書き、世界中で1600万部以上を売り上げた書籍「Man’s Search for Meaning(邦題)夜と霧」があります。
彼が、囚人として過ごした体験を綴ったものですが、フランクルの観察によると、強制収容所に収容されていた人たちの中で、彼と同様に生き残った人たちは、人生の目的を持ち、その目的を想像することに没頭していました。フランクルは、苦しみの中で尊厳をもって立ち向かい、未来をどう想像するかが、生き延びるかどうかに大きく影響したと書いています。

ホロコーストとクソどうでもいい仕事を同じレベルで比較するのは不謹慎かもしれませんが、たとえ無力感や絶望を感じさせるような仕事でも、未来を描き、自分の目的を持ち、それを果たすのです。創意と決意をもって逆に活用するのです。くだらない仕事でも、一日中何もせずにオフィスに閉じこもっている仕事でも、見方を変えれば、自分なりの意味や目的を見出し、それを果たすための行動を起こせるはずです。

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クソどうでもいい仕事と正反対の、超合理的な成功者の事例

クソどうでもいい仕事は私たちに時間を最大限「非効率的に」使わせようとしますが、その対極として、時間を最大限有効に「超効率的に」使い、徹底的に合理化して成功するためのノウハウを書いた本があります。

起業家、投資家、作家として成功を収めた、ティモシー・フェリス(Timothy Ferriss:1977 -)の2007年のベストセラー「The 4-Hour Work Week: Escape the 9-5, Live Anywhere and Join the New Rich(邦題)「週4時間」だけ働く。」です。

「週4時間」だけ働く。9時-5時労働からおさらばして、世界中の好きな場所に住み、ニューリッチになろう。[ ティモシー・フェリス ]

この本には、その題名が示すように、「時間」と「移動」を使い、時間当たりのアウトプットを最大化するための考え方と方法に関する情報がふんだんに含まれています。最小の時間で最大の効果やお金を得て、自分のための時間を増やし、世界中の好きな場所に住み、人生を楽しむ「ニューリッチ」になろうという内容です。
この本の中で、フェリスは、どうすればより多くのことをより効率的にこなせるかという私たちの望みに対して、究極の答えを提示しました。

しかし、彼は、このベストセラーを書いてから10年経って、その考え方を大きく変えています。(1)

フェリスはもはや、生産性を上げることには集中していません。
「何のために?」という疑問が頭をもたげたからです。

外的な成功を追い求めることにキャリアの大半を費やしてきて、実際にそれを手にしてきたフェリスですが、常に何かが足りないと感じていました。
お金や成功を十分に手に入れても苦しんでいました。大切な人も去っていきました。長くうつ病とも闘い続けてきました。

ある時、フェリスは自分の心の中の声に気づき、自分の内側に入り込み、自分の人生を支配していた作り上げられた物語、「自分」だと思っていた自分をより正確に見ることができるようになります。

今フェリスは、本当の自分自身と一緒にいることに心地よさを感じることに集中していると言います。
なぜなら、どれだけお金を持っていようと、どれだけ効率的であろうと、どんな高級なおもちゃを集めていようと、その目的が内にない限り、関係ないからです。内なる世界、つまり内なるモノローグや対話が、怒りや絶望や苛立ちや悲しみや欲求に終始しているのであれば、お金や時間は何の役にも立たないだけでなく、悪魔さえ連れてきてしまうのです。(1)(2)

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さいごに

結局私たちには何をするにしても目的が必要なのです。そして、それは外的なものではなく、内的なものです。
無限の無意味で無駄な時間に悩まされる人も、超合理化を実現して無駄な時間がほとんどないような人たちでも、目的がない限り、たどり着く先は同じような場所なのです。
違う場所にたどり着くには、社会や組織に流されるのではなく、自分自身がその道を築いていかなければならないのです。

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なお、冒頭紹介したデヴィッド・グレーバーの書籍「Bullshit job」ですが、後半まで読み進めていくと、クソどうでもいい仕事にとどまらない、ここでは紹介しきれなかった、より深い思索が展開されていきます。それについては、またの機会に紹介できればと思います。

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参考文献
(1) Clay Skipper, “From Productivity to Psychedelics: Tim Ferriss Has Changed His Mind About Success”,GQ.com, 2020/7/22.
(2) Daniel Richards, Richard Feloni, “‘The 4-Hour Workweek’ author Tim Ferriss reveals what he’s learned after a difficult year of introspection, and how he built a passionate fanbase of millions“, Business Insider, 2017/11/18.

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