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なぜ個人と組織は自己防御するのか ~ defensive behavior ~ 個人編

  • 投稿カテゴリー:Change Management
  • 投稿の最終変更日:2021年10月9日
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人は不安や批判されていると感じると防御機能が働き、自分を守る行動を取ります。防御的な行動は人間の本能ですが、過度な防御は人間関係の構築と自分の成長を妨げます。①防御的な行動の原因と症状、②自分が防御的になるのを防ぐ方法、③相手が防御的になるのを防ぐ方法、④防御的な相手への対応方法を紹介します。

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防御的な行動

人間は身の危険を回避したり予防するため、防御的な行動を取ります。
車の運転で言えば、事故を防ぐためにスピードを抑えたり車間距離を取ります。安全運転は防御的な行動です。危険な場所には近寄らない、これも防御的な行動ですね。

防御的な行動は人間だけが取るわけではなく、多くの動物も取ります。例えば猫は、脅威や危険を感じると「シャー」とか「ウー」と唸ったり、背中を丸めたり、毛を逆立てます。これも自分の命を守る行動です(1)

しかし、人間には、身体を危険から守るだけでなく、自分の人格や価値観を守ろうとする心理的な防御もあります。他人から能力がないと思われたり、自尊心を傷つけられるような場面では、心理的な防御機能が働き、その矛先をかわすような行動や自分のアイデンティティを守る行動を取ります。
心理的な防御には「感情」と「行動」の両方の側面があります。 誰かが自分を批判していると感じる時、憎しみ、怒りのような感情を生み出し、その感情の結果として、皮肉を言う、無視するなどの行動を取ります(2)。または、恥や恐れのような感情を隠すための防御的行動を取ります。

図:防御は自分の身を守るための行動~ ~ ~ ~ ~

防御的な行動は人間の本能

まずはじめに理解すべき大事な事は、心理的な防御行動を取る人たちは、必ずしも悪意があってそうしているわけではない事です。彼らの重要な関心事は、自分を守る事です。心理的な防御機能は、人間の本能で、本質的には悪いことではありません。
傷つく事を避け、気をそらし、一時的に気持ちを持ち直す事ができます。
しかし、防御がもたらす心地よさの効果は短く、長期的にはむしろ大きなストレスをもたらします。防御は、幻想の自信と短期的な自尊心をもたらすだけです(3)

多くの場合、防御的な行動は非効率的です。考え方を硬直させて生産性を下げます。
また、相手を批判したり、他人のミスに関心を移して攻撃するなど、不適切に使われた場合、良好なコミュニケーションや人間関係を築く大きな妨げになります。過剰な防御は、自分に過保護という事と同じです。
自己防御が習慣付くと、生産的な対話や課題解決、新しい知識の吸収ができないため、周りの人に有害となる上に、自分を成長させる事もできません。

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防御的な行動の原因

基本的に防御は、恐れや不安への反応です。心理的な防御機能はすべての人にありますが、人によって程度が違ったり、上手くコントロール出来たり出来なかったりするのは、トラウマや、両親の影響など幼少期の育った環境が影響している事もあります。防御的な会話が支配的な家庭で育った場合、それを取り除く事は容易ではありません。
過去の経験によって、例えば、特定の人、特定の状況で、最初から防御の盾を前面にあるいは内面に構える事があります。また過去の失敗によって、羞恥心や罪悪感、無力感を呼び起こしたり、過去に事実を隠した場合、それを暴かれない様に防御的な姿勢を取る事があります。

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防御的な行動の症状

心理的な防御には以下のような症状があります。実は防御的な行動は「防御」と「攻撃」の組み合わせの行動です(4)

  • 感情的になって威圧的な態度を取る。
  • 他人の話を聞かなくなる。他人の話にかぶせて話す。
  • 失敗を他人のせいにする。指示した人、助言した人、自分が参考にした人の責任にする。
  • 想定外の事が起きたなど、言い訳をする。
  • 議論の土俵に乗らず、自分に都合の良い独自の理論で自分の行動を正当化する。
  • 他人の過去の失敗や欠点など持ち出して矛先を変えようとする。
  • 自分が成功した過去の事例を持ち出して目先を変えようとする。
  • 自分を批判したことの報復として無視したり、嫌がらせする。
  • 嘘をつく。事実を見る事を拒む。嘘を事実に織り交ぜて議論に使う。
  • 過剰に自分を責める姿を見せる事で、それ以上の非難を受けないようにする。

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自分の防御行動を弱める・防ぐ方法

では、自分の防御行動を防ぐにはどのような方法があるでしょうか?
以下は、過剰な防御行動を弱めるためのいくつかのアイデアです。防御的な行動を、健全な対処行動に置き換えるための最初のステップです。

1.自分の防御的な感情や行動を受けとめる

防御行動を抑えるための最初のステップは、防御を取っている自分を認識することです。
防御のサインには、かっとする、攻撃的になる、相手を責める、嫌味を言う、声が大きくなる、逆に無口になる、話を誇張したり、逆に過小評価する、ある話に固執したり、不安をや恥ずかしさを感じたりする事などがあります。防御の感情と行動を認めるという単純な行為は、防御を和らげるのに役立ちます。どんなに優れた人でも完全に防御の感情を抑える事はできません。これらの感情に過度に集中して悪化させるのではなく、その存在を認めるだけです。
防御している自分を認識できれば、ちょっと視野が広がり、強い感情を伴う防御から、それ程でもない割と些細なものまであるのに気づくでしょう。小さな防御から受け入れる事ができれば、相手に質問したり、「ちょっと待って」と一呼吸取ったり、その感情を共有したり、少しづつ許容範囲を広げる事ができます。

2.防御的な感情や行動は条件反射と受けとめ、感情のままに行動する事を避ける

防御は、多くの場合、腰に携えた銃を反射的に引き抜いてしまうような、反発的で衝動的な反応です。無意識、条件反射で取ってしまう行動と理解して事前に警戒できれば、いざという時に時間や距離を取る事ができます。防御的になりそうと気づいたら、銃を抜かず、一息おいて気持ちを和らげます。相手の話を遮ることなく、引き続き聞く事ができるかもしれません。

3.どのような時に防御的になるか振り返る

自分がいつ防御的になるのか、振り返ったり、出来れば記録したりリスト化します。何度も振り返り、記録を見返す事で、特定の人や特定の状況で防御的になる、いつも同じような事で傷ついたり怒ったりすると気が付くかもしれません。 
自分が防御的になる状況やトリガーとなる出来事が予め分かっていれば、その様な時にどう対応したいかあらかじめ考えておくことができ、その計画に従って落ち着いて対処できます。

4.自分の価値観と一致するか

あなたの目標は解決策を見つけることですか?相手を打ち負かす事ですか?
防御的に行動する事は、あなたが人としてどうありたいかと一致していますか?
もし一致していないのであれば、あなたがどのように行動したいかをはっきりさせる時が来ました。
最高バージョンのあなたは、その時どういう風に対処したいですか?
自分が何者かを受け入れ、自分のありたい姿、目的は何かを明らかにする事で、自信と自分の尊敬を高める事ができ、他人からの影響に振り回されなくなります。

5.自分に責任を取る

傷ついたり非難されているように感じる時、自分自身がその状況をもたらしていないか疑ってみます。自分の防御行動を認めて、自分が少しでも問題に加担していないか、自身が問題の原因の一部である事に気が付けば、人と協力して問題を解決するのに役立ちます。

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どうやって相手が防御的になるのを防ぐことができるか

ここまで「自分」が防御行動を弱める・防ぐ方法を説明しました。今度は「相手」が防御的になる事をあなたがどう防ぐ事ができるか見ていきましょう。

1.相手をコントロールしようとするのをやめる

防御は攻撃から自分を守るための手段と説明しました。そのため、相手を防御させないためには、相手を攻撃しない事、または攻撃と受けとめられる言動をしない事です。
自分が攻撃と思っていなくても、利用しようとしているとか、何か隠している、ある方向に誘導しようとしていると思われるだけで、相手は防御的になります。

つまり、最初の前提として、相手をコントロールしようとする意図を無くすことです。
相手が相手の行動に選択権と責任があるように、あなたもあなた自身の行動に責任があります。相手は、あなたを満足させるために存在しているわけではありません。

純粋に相手のためを思い、助けようとしているのに、なぜ相手が防御的になるのか理解できない場合もあるでしょう。もちろん、アドバイスや手を差し伸べる事は悪い事ではありません。しかし、最終的な選択は、相手が自由にできるようにします。

2.相手を驚かせる事を避ける

誰かに不意を突かれたり、驚かされると、反射的に防御の姿勢を取ります。相手に腰に携えた銃を引き抜かせないために、言葉の選び方や、前置きして事情を説明するなど、コミュニケーションの取り方を気を付けなければなりません。

3.批判や評価せずに、話し合いたい事を言い表す

相手を批判したり評価せず、あなたの意見を伝え、話し合います。批判は相手の過去を見ています。過去の言動に対する評価です。しかし、どんな人も過去は変えられません。過去を見るのではなく、今どうするか、この先何が必要かを前向きに中立的な方法で話し合いましょう(5)

4.あなた自身の失敗を認める、自分が正しいという意識を捨てる

あなたは相手が防御的と思っているかもしれませんが、ひょっとしてあなた自身が防御的になっていないでしょうか?
あなたが自分の方が優れているかのように行動するなら、周りの人たちから防御的なコミュニケーションを引き出すかもしれません。
自分の失敗や欠点を認識し、認めることが大事です。どう考えても自分の論理が正しいという場合でも、それを主張する事も捨てましょう。これはあなたを謙虚に見えるようにするだけでなく、周りの人から警戒心を取り除きます。

5.懸念と共感を表明する

防御的な相手に、さらなる批判で対応することは解決策にはなりません。 相手への共感と懸念を示す事は、相手の「武装解除」に繋がります。誰もが問題を抱えている事を認め、より良いコミュニケーションに繋げます。

6.問題解決を目指す

問題解決のアプローチは、自分と相手が同じ目線で物事を見る事ができるようになるアプローチでもあります。自分の考えを押し付けず、相手の見方を理解するよう努め、一緒に問題を解決するように心掛けて下さい。純粋に問題の解決に集中すればするほど、お互いの緊張を和らげ、お互いを攻撃しようとする意図は弱まります。攻撃と防御の構図から、対等な関係に変化していきます。

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防御的な相手への対応方法

ここまで、相手が防御的になる事を防ぐ方法を見てきました。しかし、あなたの最善の努力にも関わらず、相手が塹壕に入り込み、防御の姿勢を崩さない場合、あなたはどうしたらいいでしょうか?
以下は、頑なに防御的な姿勢を崩さない人に直面した時、どう防御を和らげられるかヒントです。

  • まず見返りとしてあなたも防御的になって攻撃したいと思っても落ち着いて下さい。報復すれば、悪循環の負のスパイラルに陥るだけです。
  • もう一度、相手の防御はあなたへの攻撃ではなく、自分を守ろうとしている行為だと思い出して下さい。
  • 相手の防御が子供じみていても、それには直接反応せず無視して、落ち着いて問題解決と良好なコミュニケーションに集中します。
  • 問題解決を試みる前に、共通点から始めるために、小さなことでも同意できるものを見つけて下さい。
  • 正直、完全に塹壕に入り込んでやみくもに撃ち散らしている人と対峙する事はとても難しく、完璧に対応できる人はほとんどいません。本当にどうしようもない状況では、これ以上続けられない限界点を設定して相手に伝える事、自分のコミュニケーション能力を鍛える良い機会と前向きに捉える事も大事でしょう。

図:防御が過剰なケース:イメージ図

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最後に

以上、防御的な行動に関して、下記の順序で見てきました。

  • 防御的な行動とは?
  • 防御的な行動の原因
  • 防御的な行動の症状
  • 自分の防御行動を弱める・抑える方法
  • 相手が防御的になるのを防ぐ方法
  • 防御的な相手への対応方法

防御的な行動は個人だけでなく、組織にもあります。次回は組織の防御的な行動について見ていきます。

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参考文献
(1) “defensive-behavior“, APA Dictionary of Psychology, American Psychological Association
(2) Arlin Cuncic, medically reviewed by David Susman, “What Is Defensiveness?”, Verywell Mind, Updated 2021/5.
(3) Nick Wignall, “Defensiveness: How It Works and What to Do About It“, 2020/8.
(4) Elizabeth Earnshaw, “You Cannot Defend Yourself Without Being Defensive – So Here’s What To Do Instead“, mbgrelationships, 2019/11.
(5)  David Woodsfellow, reviewed by Jessica Schrader, “Why Do People Get So Defensive? And what you can do about it.“, Psychology Today, 2018/5.
(6) Julia Thomas, medically reviewed by Lauren Guilbeault, “What Is Defensive Behavior and What Does It Look Like?“, BetterHelp, Updated 2020/8.
(7) Kara Cutruzzula, “The #1 block to teamwork is defensiveness. Here’s how to defuse it“, ideas.ted.com, 2020/4. 

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