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なぜ人は他人の言う事を聞けないのか? ~ 「聞く」環境を整える

  • 投稿カテゴリー:Change Management
  • 投稿の最終変更日:2021年11月2日
  • Reading time:8 mins read

私たちは、とかく、他人の言う事は聞かず、自分の事を話したがります。人の話を聞くのは実はスキルが必要で、それができるだけで他の多くの人たちと異なる能力を持っていると言えます。一方で自分の事を思いのまま話すのにスキルは要りません。解決のためには「聞く環境」を整える事が必要です。

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はじめに

前回「なぜ人はいつも問題を他人のせいにするか?」を紹介しました。他人を責めることは、私も含め(汗)日常茶飯事、ありとあらゆる所に見受けられます。これと同様に、私も含め(笑)私たちの周りに頻繁に見られるのが「なぜ人は他人の言う事を聞けないのか?」です。例えば、(1)

  • 患者は自分の症状を説明するのに29秒必要なのに、医者は11秒以内に患者の話を遮って話します。
  • 従業員から人の話を聞かない最悪上司と評価された管理職のうち94%が自分は聞き上手だと自己評価しています。
  • 女性の3分の1は、パートナーよりもペットの方が聞き上手だと答えています。

今回は「なぜ人は他人の言う事を聞けないのか?」、その原因と対策を探っていきます。

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他人の言う事を聞かず、とにかく話したがる理由

以下、とにかく話したがる人、他人の言う事を聞かない人がそうする理由を見ていきましょう(2)(3)(4)

1.聞くより、話す方が楽だから

まず最初に挙げる大きな理由が「聞くことより、話すことの方が楽だから」です。
このブログでも何度か紹介してきたように、人の話を聞くには、相手への関心、好奇心、集中力、学びの姿勢が必要です。相手を理解したいという気持ちがなければ真に聞く事はできません。この姿勢がない人にとって、聞くという行為は、苦痛で、多くのエネルギーを奪い、ストレスにもなり得るものです。
自分の言いたい事を言いたいように話すのに特別なスキルは必要ありません。一方で「聞く」ためにはスキルが必要です。
ここで言う「聞く」とは「hear」ではなく「listen」です。話半分うわの空で右から左へ聞き流すだけなら、話すことと同じように特段スキルは必要ありません。

本当に聞くことができる人は、それだけで他の多くの人たちと異なる能力を持っています。それだけ本当に聞くという事は難しく、それができる人は多くありません。

2.話す目的で会話しているから

単純に「話す」「聞く」と言っても、そもそもその場がどのようなもので、目的が何なのかによって意味合いが全然違ってきます。会話が成立しないのは、参加している人たちの目的、意図がずれているからです。

例えば、ある講演会で、講演者であるゲストスピーカーの話が終わりました。その後「あの人、一人で話してばっかりで、俺たちの話を聞こうとは全然しなかったな!」と批判する参加者はいませんね。講演会では、講演者の話を聞くという前提を参加者全員が認識しています。

しかし、私たちの会話では、お互いの認識がズレる場合があります。自分は「話し合い」のつもりでも、相手は「話す」つもりで参加しているかもしれません。

私はあるほぼ初対面同士の6人の懇親会(飲み会)で、人にほとんど話をさせず自分の話に終始した強烈な人を鮮明に覚えています。ちょっと違う話題で話そうとするとすかさず上から被せてきて、自分の話を続けます。私を含めた他の参加者は自己紹介程度しかしゃべる事が出来ず終わりました(笑)。
みんな初対面だったので、私はこの機会をお互いを知る場と考えたのですが、この人にとっては、自分を全力でアピールする場だったのかもしれません。

聞くことがストレスになりえる一方で、話すことはストレス発散になります。ストレスにあふれた時代ですから、日頃ストレスを多く抱えている人には、とにかくしゃべり倒してストレスを解消したいと思う人もいるでしょう。懇親会の彼も、もしかしたら日頃溜まったストレス発散が目的だったのかもしれません。

趣味のグループや、自分が詳しい分野の会話でも、知識と思い入れがあるため、とにかく自分の事を話したい!という人は多いです。一方で、そんな会話でも、自分を見せびらかさず、他人の話を静かに聞く人もいますし、人の話を聞いて自分の知識を更に高めたい人もいますし、単純に共通の話題をみんなで楽しく語り合いたい人もいます。

このように、前提、目的、意識が、参加者の間でそもそも違っている事があります。前提がずれているのに、結果だけ捉えて相手の文句を並べても、問題を履き違えているので解決できません。
先ほどの懇親会も「皆さん初めてなのでお互いを知る事を目的に楽しく飲みましょう!」と冒頭に一言あれば、ひょっとしたら違う展開になっていたかもしれません。

3.話し返す目的で会話しているから

さらに、人の話を聞いている間も、その内容を理解しようとするのではなく、頭の半分以上は、自分が次に何を話そうか、どのタイミングで割り込もうかを考えています。これは「listen」ではありません。

4.場を支配したいコントロールの欲求

会話をコントロールするために、一方的に話す習慣を取り入れる人もいます。自分が会話を支配していれば、他人の意見を聞いたり、質問に答える必要はなく、相反する考えに建設的に対峙する必要や、異議を唱えられる心配もありません。特に組織で権限や力を持っている人がこれを実行するのはとても簡単です。
裏を返せば、自分が想定しない方向や、行きたくない方向、知らない話題に話が進まないように会話をコントロールする事で、自己防御しているのです。

5.勝ち負けの場であり、自分が正しいと証明しようとする

会話を勝ち負けの場だと考え、とにかくバトルに持ち込む人もいます。自分が話すことは自分の意見を主張する事であり攻撃です。相手に話をさせる事は攻撃を許す事です。相手の話を聞くことで相手の主張を受け入れてしまうのは避けなければなりません。
本来勝ち負けが最終目的の会話や対話はほとんどないはずですが、一方が正しく、他方は正しくないという前提で、常に好戦的で、自分が正しいと証明したい人にとって、会話は、討論、口論、話す時間の奪い合いの場です。

6.自分は相手より上で、相手にアドバイスするものだと思い込んでいる

求められてもいないのに、アドバイスしたがる人は、基本的に自分の方が相手より上だと思っています。相手の話を聞くのは、相手が良いか悪いか、正しいか正しくないか判断するためで、相手の悪い所を見つけては、自分を満足させるために助言します。反対に、聞き上手な人は、判断や評価を前提とせず、自分が気持ち良くなるためでなく、相手が気持ちよく話せるように努めます。

7.注目を浴びたい、自己中心型

ある種の人たちは、極端に自己中心的で、注目を浴びること自体が目的です。決して親密になるための対話を求めているのではなく、一方的に話す割りには、話に中身がない事も少なくありません。そのような人は自分の小さな世界に夢中で、他人の事をそれほど気にしていませんし、相手に共感することもありません。

8.相手に認められたい承認欲求

承認欲求は、マズローの5段階の欲求ピラミッドの4段階目の人間の欲求レベルである一方、アドラーは、承認を求めるのは、他人の期待に応え続けることであり望ましくないと否定します。
「自分を認めて欲しい!」「相手に良い印象を与えたい」が優先しますから、自分の優れた点や、相手の期待を満たす点を必死に訴えたり、自分を説明する時間が多くなり、他人の話を聞く余裕がありません。

9.聞かなくても分かっているから

相手が話し始めた瞬間に「あー、それ〇〇でしょ?知ってるよ」と相手の話を打ち切ったり、「あー、それ〇〇でしょ?□□が△△で、それで。。。」と遮って、相手の話を奪い、自分の話にしてしまう人もいます。既に説明した支配欲求や自己中心型にも通じますが、自分が知っている事はすべて自分が話さないと気が済まないタイプでもあります。

10.聞くことよりも話すことを評価する文化、教育、社会

以上、他人の言う事を聞かず、話したがる理由を様々挙げてきましたが、根の深い根本的な理由が、私たちの社会が、聞く事より話す事を評価する事が多いからです。つまり、次のようなイメージがあります。
 話す = 積極的、エネルギーに満ちている、自分が主張できる、ポジティブ
 聞く = 消極的、自分の意思がない、流されている、ネガティブ

学校でもそうです。手を挙げて自分の意見を積極的に発言できる生徒が評価されます。また正解した人、正しい人を評価します。「みんなの考えを聞きましょう!」と手を挙げる生徒はいませんし、一言も発せずずっと静かに聞いていて「よく聞いていましたね」と先生から褒められる事もありません。相手を聞く技術は、学校でも家庭でも職場でも教えられません。

聞くよりも話すことが評価される文化や習慣が染みついていて、聞いているより話す方が社会的にメリットがある場合が多いのです。
※ ま、日本の会社では黙っている人間が評価される事もありますが(笑)、これについてはここでは深掘りしません。

要するに、人の話を聞けと言っても、一言で解決できるような簡単な問題ではないのです。

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どうすれば変えられるのか?

すでに紹介したように、人は聞くよりも話していたいのですが、一方で講演会やコンフェレンスのように、みんなが聞くモードになっている場面では、普段マシンガンのようにしゃべる人さえおとなしくします
会話も同様で、その場の規範(ノーム)を整えて、共有すればよいのです。

例えば、「久しぶりにお茶しに行かない?」「おー、久しぶり!飲みにでも行こうか!」と誘えば、暗に、お互いの近況報告かなと想像しますが、ただ単に「お茶しに行こうか」と誘うのではなく「相談があるから聞いて欲しいんだけど」と誘えば、会って話す時には、たいてい相手は聞くモードになっていますね。

会話の目的をはっきりさせ、参加者にその心構えをさせる事です。相手の目的がよく分からないときは「〇〇を確認したいってことですか?」などやんわり相手の目的を確認し、前提の履き違えを防止します。

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参考になる事例を紹介しましょう。アメリカのSt John’s Collegeは、一方的に教えるという講義がなく、すべて対話で授業を進めるユニークな大学ですが、下記の様な授業のマナーがあります(5)(6)

1.参加者は手を挙げたり、講師から許可を得ることなく発言できます。他の人の発言の最後に続けてください。これを奥ゆかしくどのタイミングでどのように行うか理解するには多少訓練が必要です。
2.一人一人の発言時間は同じではありませんが、全員が何かに貢献することが重要です。
3.簡潔な発言は、長い演説より効果的です。簡潔に話しましょう。他の人が自分のアイデアを基に話せるように分かりやすく話しましょう。
4.聞くことは話すことと同じくらい重要です。アイデアをつなげると面白い会話になります。
5.質問することは、参加の重要な形です。
6.他人の考えに挑戦したり、修正案を提示することは、十分に尊重され、真実を追求するために行われる限り、全く問題ありません。私たちの会話は、議論ではありません。参加者は誰かに勝ったり、誰かを打ち負かそうとしてはいけません。
7.参加者はできる限り、グループで一緒に読んだ本を引用します。最近の学術論文への言及だけで会話を切り上げることは、悪しき行為とみなされます。
8.真面目な会話でも、いや真面目な会話こそ、ユーモアのセンスは素晴らしいものです。

この授業に参加したBenquo氏は、それまでの人生で経験してきた会話とは全く違う経験だったと振り返っています(7)。誰かが話し終わるまで、参加者みんながその人に耳を傾けます。つい口を挟んでしまった時は謝ります。授業を経験するにつれて、誰も横やりを入れてこないと分かると、だらだらと話す事がなくなり、多くの参加者が自分の考えの要点を簡潔にまとめて話すようになって、一人一人が話す長さはむしろ短くなっていきました。
全員が聞くことに、より集中していったと述べています。誰も会話を恣意的にある方向に誘導しようとはせず、誰にも会話がどの方向に向かうのか分かりません。互いが互いを尊重し理解に努め、全員がその瞬間に集中する事で、新しい発見、真のコラボレーションが生まれるのです。

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最後に

交渉に関する名著「Getting to Yes:ハーバード流交渉術」の共著者であるウィリアム・ユーリーは、交渉の専門家であり、ハーバード・ネゴシエーション・プログラムの共同創始者であり、カーター元アメリカ大統領の国際交渉ネットワークの設立を支援し、世界中の紛争解決に携わってきましたが、交渉とは相手の話を「聞く」事だと述べています(8)
聞くことで相手の意識を変える事ができるのです。主張し合う事で交渉がお互いが望むところにたどり着く事はありません。聞くことは相手に寄り添い、相手にフォーカスがあります。逆に、話すことは自分を主張する事で、自分にフォーカスがあり、自分にフォーカスし合っていては、お互いを変える事はできないのです。相手の話を聞く事で相手が自律的に変わっていくのです。

彼は、世の中にあふれる「トークショー」や「ピース・トーク」ではなく、「リッスンショー」や「ピース・リッスン」が増えれば、世界中でもっと「Yes」が増え、より多くの紛争が解決されるだろうと言います。
私も、主張し合う、人を責め合うのではなく、いたる所で「リッスンショー」が見られる未来を期待したいと思います。

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参考文献
(1) Adam Grant, “The lost art of listening“, Ideas.Ted.Com, 2021/3.

(2) Stephanie Vozza, “6 reasons why you’re a bad listener (and how to change it)“, FastCompany, 2019/1.
(3) Christina Canters, “8 Reasons Why People Don’t Listen To You“, The C Method, 2020/7.
(4) Sarah White, “Why Listen to Reply Instead of Understand Is the Key to Failure“, Lifehack
(5) Mark Roosevelt, “Has critical thinking vanished? A conversation with the president of St. John’s College”, DeseretNews, 2018/11.
(6) “Stephen R. Van Luchene, “Learning through conversation”, St. John’s College, 2015/11.
(7) Benquo, “Wait vs Interrupt Culture”, lesswrong, 2013/11.
(8) William Ury, “The power of listening”, TEDxSanDiego, 2015/1.

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