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コラボラティブ契約(Collaborative Contracting):プロジェクトの新しい契約の形

  • 投稿カテゴリー:海外建設
  • 投稿の最終変更日:2021年1月14日
  • Reading time:4 mins read

コラボラティブ契約は欧米では20~30年も前から提案されていますが、日本ではあまり認知されていません。基本的な考えは、プロジェクト関係者全てに成功するインセンティブを与え、お互いに助け合う事がお互いのメリットになる仕組みを作る事です。

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前々回前回の投稿で「予測型プロジェクトライフサイクル・ウォーターフォール型開発モデルとアジャイル型プロジェクトライフサイクル・アジャイル型開発モデル」や、「昭和型経営からアジャイル型経営への移行の必要性」を紹介しました。
今回紹介するコラボラティブ契約の基本的な概念も、従来の縦型・分断型・対立型の契約関係から、組織の垣根を超えフラットで一体型のチームを志向するという意味では、方向性・ベクトルとしては共通、同じ方向を向いていると言えます。

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コラボラティブ契約(Collaborative Contracting)の枠組みの契約の形が提案されたのは1990年代イギリスでもう20年以上30年近くも前ですから表題のような「新しい」にはかなり語弊があるかもしれません。しかし、日本では一部の事業者や専門家を除いてはあまり認知されていないと思います。
実はこのような長い歴史がある欧米でさえ今でも「比較的新しい」契約形態として紹介される事が多いですから、まだ「新しい」と言い切ってしまっても良いでしょう。

コラボラティブ契約の基本的な概念は同じですが、欧米豪で名称や呼ばれ方が違い、仕組みも若干異なります。
● イギリス:「NEC(New Engineering Contract)」という契約約款が1993年に正式に発行。2017年に発行されたNEC4が最新。他国でも実績あり
● オーストラリア:アライアンス契約(Alliance contracting)
● アメリカ:IPD(Integrated Project Delivery:インテグレーテッド プロジェクト デリバリー)

コラボラティブ契約は、これらの契約の総称として使われることが多いです。更には後述するパートナリングのように、より緩やかな協力的な仕組みまで含んで呼ぶ事もあります。「Relational Contracting」という言い方もコラボラティブ契約同様の総称として使われる事があります。

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例えば総価請負契約(英語では、Lump Sum / Fixed Price / Stipulated Sum と言われ、プロジェクトの範囲全部を最初に決めた金額で行うという契約です)のような従来の契約方式は、プロジェクトを進める中で問題が生じて契約当事者が対立する関係になる事が多く、結果的にどちらかが何かを勝ち取ると、他方は失うまたは負けるというようなWin-Loseの商業的インセンティブが根付いています。

総価請負/ランプサム契約のような従来の契約形態下では、通常請負会社はプロジェクトの価値を求められる以上に高めるような努力はせず、契約で求められる事のみを責任を持って行おうとします。
最初に金額を決めますから、プロジェクトオーナーは出来るだけ途中で問題や追加コストが発生した場合のリスクを請負会社に押し付けようとします。ただし、請負会社としても追加コストの発生は避けたいですから、プロジェクトオーナーの意図とは反対の思惑で動きます。問題が起きた時も協力して解決しようというよりはお互いに責任を押し付け合う構図になってしまいます。
このような契約では、請負会社は自ら追加のコストを使ってまでより良い物を作ろうとか、オーナーや設計者、下請業者のコストを下げるようなインセンティブはありません。設計にミスがあっても、請負会社が自ら追加のコストを使って、設計者のミスに対処しようとも思わないでしょう。

つまり、プロジェクト全体と各当事者の利害は必ずしも一致しません。プロジェクト全体でみれば成功なのにある当事者だけ赤字という事もあります。逆にプロジェクト全体でみれば大失敗なのに、ある当事者だけ大きな利益を上げるという事も有り得ます。

契約上の対立の問題を軽減するため、パートナリングという仕組みがあります。懸念事項、想定される課題などを前もってプロジェクト関係者が協議し解決を試みる制度です。
パートナリングはアメリカとイギリスで仕組みが若干異なるのですが、アメリカでは裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution:ADR)に関連付けられて用いられ、紛争の早期予防・初期対応という意味合いで導入される事も多く、パートナリングがない場合に比較し紛争解決費用が抑えられる効果はあります。
しかし、契約自体は基本的に従来の形式であり、パートナリングは契約上の対立の問題を軽減するが対立をなくすものではなく、その枠組みには限界があります。

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コラボラティブ契約の背後にある基本的な考えは、プロジェクト関係者全てに成功するインセンティブを与えることです。
例えば、設計者、元請、下請、トータルで費用を最適化しようなんて考える事は、従来の契約形態ではどの立場からでも有り得ない事ですが、コラボラティブ契約では有り得るのです。

パートナリングの仕組みを使っていたとしても、紛争の度合いが大きくなってきたりプロジェクトの収益が大きく悪化してきたら、身銭を切って相手のコスト低減を助ける事はしないでしょう。しかし、コラボラティブ契約では相手を助ける事が自分の利益にもなり得るのです。

コラボラティブ契約は相互利益の仕組みをつくり、友好的な関係を助長しつつ、無駄なコストをお互いに費やすのではなく生産性を上げプロジェクトの成果を向上させるものです。

「そんなの言うは易く行うは難し、できるならとっくの昔にやっているよ。。」と思われるかもしれません。

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では、どうやって実現していくのか?
。。。「相互信頼と協業の精神をもって行動する」事によってです。

「相互信頼と協業の精神をもって:in the spirit of mutual trust and co-operation」は、先に紹介したイギリスのNEC契約約款に記載されています。
アメリカ建築家協会(American Institute of Architects)発行の「Integrated Project Delivery: A Guide」にも一番最初に契約の原則として「相互の尊重と信頼:Mutual Respect and Trust」が謳われています。

なんとっ!

日本では曖昧であり見直す必要があると悪い意味で引用されることが多い建設業法第18条の「信義に従って誠実にこれを履行するものとする」が大事だというのです!海外で契約をやっている日本人にとってはびっくりですね。

日本では「信義に従って誠実にこれを履行する」原則のもと、工期や金額の変更については、「発注者と受注者とが協議して定める。。。協議が整わない場合には、発注者が定め、受注者に通知する。(公共工事標準請負契約約款より引用)」で、結局実際上は片務的(片方に有利 → つまり発注者側に有利)になっています。
日本で「信義に従って誠実にこれを履行する」が機能しないのは、どう誠実に対応するかの具体的な記述が書かれていないからです。

コラボラティブ契約は、日本の契約約款のように、ただ「誠実に履行する」の一文が条項に含まれているだけではないのです。「どう誠実に対処する」のか、どう「Win-Win」の関係を作るのか、コラボラティブ契約はその具体的な仕組みまで落とし込んでいます。
次回にコラボラティブ契約をより詳細に説明していきます。

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