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マッキンゼーの建設レポート紹介:コロナ後の建設業ニューノーマル

  • 投稿カテゴリー:海外建設
  • 投稿の最終変更日:2023年6月22日
  • Reading time:4 mins read

建設業は、他の産業が既に経験したような破壊的な変革をまだ受けていませんが、現場作業の工業化、製品とプロセスの垂直統合・デジタル化、新規参入によって業界は大きく変革します。

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日本で活躍するビジネスコンサルタントの方々には、「マッキンゼーで〇年」とプロフィールに書かれている方が多くいっらしゃいます。元マッキンゼーと書くだけで肩書に箔が付くような、、、そんなイメージがあります。

マッキンゼー出身者の方々は他に、起業家、経営者、政府や行政の顧問まで数多く幅広く活躍されています。
正式な会社名はマッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company, Inc.)、アメリカが本社の世界的なコンサルティング会社です。

私もそのようなマッキンゼー出身の方々が書かれたビジネス本を色々読ませてもらっています。
というか買って読んでみたら著者がマッキンゼー出身だったという事ですが。
そしてマッキンゼー社自体が発行しているレポートも時々読みますが、その中には建設関係のレポートもあります。

マッキンゼーの建設関係の最近のレポートを2点簡単に紹介します。
「The next normal in construction, June 2020」(建設業の新しい標準、2020年6月)
「How construction can emerge stronger after coronavirus, May 2020」(コロナ後にどうやって建設業が強く回復できるか、2020年5月)

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The next normal in construction, June 2020」(建設業の新しい標準、2020年6月)によると、
● 建設業は世界のGDPの13%を占める最大の産業であるにも関わらず、生産性はこの20年間で年間僅か1%しか向上していません。これは世界経済の生産性向上2.8%のわずか3分の1に過ぎません。
● 工事の遅延と予算超過は当り前で、リスクが大きいにも関わらずEBITマージン(利息税金控除前利益率)は僅か5%程度で、10年平均のEV/EBITDA倍率(企業価値を会社が年間に生み出すキャッシュで割った指標)はS&P500社平均が12.4であるのに対して、建設業は5.8とパフォーマンスも低いレベルに留まっています。
● リスク回避の保守的な姿勢と非効率による低いパフォーマンス、デジタル化が遅い事が変革を遅らせており、デジタル化に関しては、他産業がここ28年で90%の導入率を達成しているのに対して、建設業は35年で60~70%しか達成していません。
● 大規模プロジェクトの20%は遅延し、80%は予算オーバー、さらには訴訟に繋がる事もあり、顧客は概してプロジェクトのパフォーマンスに満足していません。

建設業は、他の産業が既に経験したような破壊的な変革をまだ受けていません。
建設業だけが生産性の向上で取り残された訳ではなく、かつては、農業、商業用航空機製造、造船、自動車製造等も生産性の課題がありましたが、それらの産業は既に変革を受け、変化に一番上手く対応した企業がその価値を引き上げる事になりました。

破壊的な変革が差し迫った今、建設会社の価値の半分は危機に晒されています。ソフトウエア会社や、現場の作業を現場外に移転つまり現場工事を製造化する会社は価値を上げる一方で、従来からのスタイルの総合建設会社、専門建設会社の価値は、施工業務以外へ業務転換しない限り、価値が低下していきます。

コロナウイルス流行(COVID-19)前から既に破壊的変化の兆しは起きてきています。例えば、
● 新規不動産におけるモジュラー建設(あらかじめブロックのようなモジュールを工場等で製作し、工事現場に運んでつなぎ合わせたり積み重ねて建物を建てる工法)の2015年から2018年までシェアは51%増加、売上は200億米ドルから2.4倍増加。
カテラ社(Katerra社)のような新規参入
※ カテラ社は米国のスタートアップ企業で、計画、意匠設計、構造設計、材料調達、製造、総合建設、特殊建設、内装、プロジェクトマネージメントまでの建設にかかる一連の段階でサービスを提供し、垂直統合、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)により建設の合理化・環境負荷低減を図ろうとしています。

建設作業の工業化、新素材、製品とプロセスのデジタル化、新規参入によって業界は大きく変革します。
顧客は洗練されてきており、より適応性のある建築とともに、より簡素でデジタルなコミュニケーションを期待しています。
IOT(Internet of Things:モノをインターネットに接続)を統合したスマートビルディングやスマートインフラシステムによりデータ利用性、効率の良いオペレーション、パフォーマンスベースの契約が増えると予想しています。

スタートアップによる新規参入、またはベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンドから資本注入された既存企業によって、既存のビジネスモデルは破壊されていき、今後起きる破壊的技術革新・破壊的イノベーションに対応するか先導しなければ取り残されるとしています。

マッキンゼーが400人の建設業界の経営者に調査した所、建設業界は変化が必要であり、5年前、10年前に比較しその必要性は高まっていると90%が回答しています。

そして、コロナウイルスの流行は既に始まっている変化を加速させます。

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次回は「How construction can emerge stronger after coronavirus, May 2020」(コロナ後にどうやって建設業が強く回復できるか、2020年5月)で、コロナによって起きる事、それにどう対応して行くべきかの提言を紹介します。

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