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昭和型経営からアジャイル型経営へ:経営層の意識改革

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2022年2月2日
  • Reading time:4 mins read

失われた30年間の平成を挟んでもなお昭和型経営から抜けられない企業は多いです。正解を誰も知らない予測困難なVUCA時代に突入しアジャイル型経営を取り入れた自律的組織への転換が急務です。

何年も。。どころか十何年も言われて続けている事ですが、今日のビジネス環境は、テクノロジーの加速度的な進化と情報のデジタル化・グローバル化で目まぐるしく変化しています。

多くの会社の経営層は、今変革を実行する事がいかに重要であるかは理解しています。しかし、実際にそれを形にし実行、変革まで落とせている会社はそれほど多くありません。

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システム開発・ソフトウェア開発でよく利用される開発手法に「ウォーターフォール・モデル」と「アジャイル・モデル」があります。
ウォーターフォールモデルは、従来からあるスタンダードな開発モデルで、以下のような工程で行われます。

ウォーターフォールモデル


上図のように工程を作業(フェーズ)毎に分割し、これまた従来からあるガントチャート等で進捗を管理します。前工程が完了しないと次工程に進めない、ウォーターフォール(滝)の流れのように進めていく開発モデルです。

「ウォーターフォール・モデル」はプロジェクトマネジメントの分野では「予測型プロジェクトライフサイクル」にあたります。予測型ライフサイクルは、開始前にやるべき事とその順序が明確になっており、あらかじめ計画した通りにやる事で成果を上げるプロジェクトに最適です。
プロジェクトのスコープ、スケジュール、コストはライフサイクルの初期段階で決定され、実施段階でのスコープの変更は限定的かつ慎重に管理されます。

一方アジャイル・モデルは、その対局として引用される事が多い開発モデルです。
アジャイル(Agile)とは「俊敏な」とか「素早い」という意味ですが、アジャイル型開発は、仕様の変更が当然起きるという前提で、初めから詳細に設定せず、おおまかな仕様で開始します。
下図のように、小単位かつ短期間でウォーターフォール・モデルのような一連の作業を回し、そこで得た新たな発見を次の反復のインプットにして改良・改善を繰り返していく手法です。

アジャイルモデル

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これらを経営に当てはめると、ウォーターフォール型マネジメントは、不確定要素が少なく手順が明確な経営のスタイルに向いています。
例えば、レガシー産業(成熟産業)では、既にビジネスモデルが確立されており、決められた手順通りに間違いなく作業を行う事、その作業をいかに合理的に行うかが求められてきました。
昭和の高度経済成長期の多くの企業も同様で、繰り返し作業をひたすら繰り返す均質な社員がマニュアル通り決まった手順で働く事で売上利益を積み上げる事ができました。
高度経済成長期は基本的に需要が拡大しますから、残業し労働時間を増やし供給が需要を満たすほど、売上利益も増えるモデルでした。

経営においてウォーターフォール型マネジメントは大量生産型、昭和型経営スタイルであるとも言えます。

今は残念ながら目まぐるしく変動する社会でビジネスの不確実性と複雑性が増しており、また飽和社会、人口漸減の一方で競争は激化し、多くの産業で供給が需要を上回っている状態です。
消費行動も昭和とは大きく変わってきています。レガシー産業のみならず多くの産業で「同じことをきちんと繰り返し行いお客様に提供する」だけでは企業は経営が成り立たない、会社が存続出来ない事は周知の通りです。

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今、会社経営でもアジャイル型の思考が必要となってきています。新たなイノベーションが必要とされるスタートアップ型の思考です。スタートアップビジネスでは、ビジネスモデルが確立されておらず、将来を予見することも困難なため、従来のように予定調和型の経営や事業の進め方はできません。
アジャイル型は、仮説を立てて、小さくお金をかけずにやってみて、その結果から、その方向で更に進めるのか軌道修正するのか、実験と検証を繰り返すモデルです。

イノベーション・創造性が必然となる令和時代の経営環境下ではアジャイル型マネジメントが必要です。ウォーターフォール型のマネジメントだけでは企業は成長できません。

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平成時代にはグローバル化やデジタル化等、既にその事業環境の変化は明らかになっていました。
しかし、バブル崩壊と失われた20年(未だ変われない昭和型企業にとってはもう30年でしょう)という言葉が示すように、多くの企業はその変化に付いて行くことができないばかりか押し寄せる大きな変化に気づいてさえいなかった企業もありました。
日本企業でその変化に付いて行けたのはごく一部で、総じて日本経済全体が停滞した時代でした。

30年間の平成を跨いで令和の時代になっても「昭和型経営スタイル」を続ける会社は残念ながら多く存在します。
しかし、令和時代は、平成で取り残された会社もいよいよ変わらないと存続が脅かされる時代です。

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プロジェクトライフサイクルと、システム開発モデル、経営の時代背景をまとめると、下図のような相関になります。

ウォーターフォールとアジャイルの比較

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昭和型経営の会社は、経営層が未だに昭和の高度経済成長期の成功体験と経営スタイルを引きずっていて、事業モデル・経営モデルの根本を変えないといけないという事自体を理解していません。
または危機感はぼんやり感じているものの、従来の予定調和型ビジネスベースで構築され定着した重層組織で、従来の目標管理・人事システムで「求められる事をきっちりやる」事で認められてきて、正解を誰も知らない課題に対してどう対処したらいいのかが分からない。
改革に必要な手法とリーダーシップを持ち合わせていないのです。

ベンチャー系企業、IT系企業でアジャイル型の経営ができている会社が比較的多いのは、ある意味必然とも言え、業務自体をアジャイル型で進める事が他産業より早く行われ、何十年の長きに渡って築かれ、がちがちに固まり変える事が難しくなった組織・企業文化がないからです。

一方でレガシー企業においては、既存業務はウォーターフォール型で、そもそもアジャイル型で進める様な業務自体が社内に存在しませんでした。
アジャイル型で進めるべき新規事業も従来のウォーターフォール型で進めてしまって結局成果が出ない。

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アジャイル型経営への移行が難しいのは、イノベーションの必要性の認知とそれをやるんだという強い意思があるトップの下でないと決して実現しない点です。
ウォーターフォール型からイノベーション型マネジメントへの変換は、企業文化の改革なくしてはなし得ず、トップの意識が変わらないと変わり得ないのです。
その意識のないトップがいくら「新規事業やれ、イノベーションやれ」と号令をかけても、「コンサルを使って進めてもらえ」と第三者に投げても、はたまたボトムアップで変革を試みても、トップの意識と行動が変わらないままだと自らが気が付く事さえなく自らその芽を潰してしまう結果になるのです。

しかし、予測型ビジネス下の事業手法・組織・人事・管理スタイルが何十年も体と頭にしみ込んだ人間に「ウォーターフォール型マネジメントからアジャイル型へ移行しよう」、「昭和型経営から脱却しよう」、言うは易く行うは難きです。

では何が必要なのかを次回紹介します。

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