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ステークホルダー・エンゲージメントの手順:その2 ステークホルダーのマッピング 反対者の特定

  • 投稿カテゴリー:Change Management
  • 投稿の最終変更日:2021年7月11日
  • Reading time:5 mins read

変革のプロジェクトや取り組みを成功させるにはステークホルダーがエンゲージメントを持って関わる事が必要です。今回はエンゲージメントの手順として前回に引き続き「2.ステークホルダーの理解(分類・マッピング等)」を更に説明していきます。

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ステークホルダー・エンゲージメントの手順は、プロジェクトや取り組みの準備段階で、その取り組みに対するステークホルダーの態度・関心・期待・影響を知るために使用されます。
なぜ知る必要があるかと言うと、それを元にステークホルダーにいかにエンゲージしてもらうか考えるためです。
また、ステークホルダーが時間の経過とともにどのように態度を変えたかを追跡するためにも利用されます。

下記の順序でステークホルダーのエンゲージメントを獲得していきます。
1.ステークホルダーの特定・認識(ステークホルダーリストの作成)
2.ステークホルダーの理解(分類・マッピング等)
3.エンゲージメントの計画
4.エンゲージメントプランの実施
5.エンゲージメントのモニタリング

ステークホルダー・エンゲージメントは、1から5まで順番に対応して終わりではなく、見直し反復していきます。

前回は、1.と2.を途中まで紹介しました。今回は「2.ステークホルダーの理解(分類・マッピング等)」を引き続き説明していきます。

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説明のため、製造と販売を手掛ける会社A社を取り上げます。下図のA社の組織図の登場人物をそのまま社内の改革の取り組みに関するステークホルダーとします。

図:製造販売会社A社の組織図 = 改革案のステークホルダー

なお、このA社で「高宮開発課長」が「高宮あきと」こと、この物語?の主人公です(笑)。改革意欲に燃えていますが、なかなか組織で実現できず苦しんでいます。今回の提案の発案者はこの「高宮開発課長」です。

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ステークホルダーを理解するために、前回紹介し批判した(汗)「Power – Interest(権限 - 関心度)」グリッドモデルをカスタムした「あきとモデル:Power – Ownership(権限・影響力 - エンゲージメント・コミットメント)」のグリッドモデルを使用します。

「Power – Interest(権限 - 関心度)」のグリッドモデルと同様に、縦軸はPower(権限・影響力)の大小を示しますが、横軸は以前紹介した変革のオーナーシップ(エンゲージメント・コミットメント)のステップである「認知 ⇒ 比較 ⇒ 支持 ⇒ オーナーシップ」の状態を示します。

図:変革のオーナーシップ・コミットメントカーブコミットメントカーブ

「変革のオーナーシップ」は、まず変革の取り組みを「認知」し、現状と変革のメリット・デメリットを「比較」した上で、変革を「支持」し、「オーナーシップ」を持って変革に携わる事で達成できるというステップを示したものです。
ただし、取り組みを「認知」して「比較」した後、必ずしも皆すんなり「支持」に進む訳ではありません。比較時の「支持」以外の反応として、「反対」と「中立」があります。
また、最初の状態として取り組みを認知する前の状態、「まだ認知していない」状態があります。認知していない状況では取り組みへの反応はまだ分かりませんので、他の段階と別扱いにしています。

上の組織図のステークホルダーをグリッドモデルに当てはめたものが下図になります。

図:「Power – Ownership(権限・影響力 - エンゲージメント・コミットメント)」のグリッドモデル

このように視覚的に捉える事で、ステークホルダーを理解し、優先度を付けやすくなります。またステークホルダー間の関係、あるステークホルダーが他のステークホルダーへ与える影響も認識しやすくなります。
上図のグリッドでは分かりやすく似顔絵を使っていますが、実際の作成の際は、名前でも、イニシャルだけでも結構です。個人名でなくグループ名になる事も多いでしょう。

上図を見て頂ければ、改革に燃える高宮開発課長が最も右側に位置し、高いオーナーシップを持っている事が分かりますね。田中営業部長、山本営業課長といった営業チームからは支持されているようですが、肝心の直属の上司である鈴木事業部長が反対で、更に事業部内で並列の位置にいる山口製造課長も反対の立場です。社長や総務部、その他役職のない社員の多くはまだ改革案を認知していない状況の様です。

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まず、最も権限・影響力のあるステークホルダーに注力してください。
当り前ですが、組織の上層部にいるステークホルダーほど組織内の権限・影響力は強いですね。
ただし、組織上の立場に比較して実際の影響力の方が強いオピニオンリーダー、インフルエンサー的なステークホルダーもいます。もう権限はそれほどないが、なお大きな影響力を持つご意見番的な元上役・相談役がいる場合もあります。

組織改革のような組織を横断する大規模な取り組みの場合は、経営陣を含めたグリッドの上側に位置するマネージャー層のコミットメントが「絶対に」必要になります。
チェンジ・マネジメントでは「スポンサー」といいます。スポンサーとは、プロジェクト成功の責任を共同で負い、プロジェクトの成功に向けて全面的な支援を行う最大の後ろ盾となる存在です。実は私「ステークホルダー分析」と同様に「スポンサー」という言葉も「自分事感」があまり感じられず好きでないのですが(笑)。

あなたが変革プロジェクトの担当者だとしても、必ずしも最も権限がある社長に直接アプローチできる立場にあるわけではありません。もし社長と直接話せる立場だとしても、直属の上司をスルーして社長に上申しては上司から大きな反発を生む恐れもあります。

また、それなりの人数のステークホルダーが関わる取り組みであれば、反対するステークホルダーが「必ず」います。
グリッドの右側にいるエンゲージメントが高いステークホルダーは対応が比較的容易ですが、グリッドの左側、特に「反対」にいるステークホルダーは対応に、何倍、何十倍ものエネルギーと慎重さが必要になります。

特に慎重かつ早期の対応が必要なステークホルダーは、グリッドの左上のエリアにいるステークホルダー、つまり、権限・影響力が強く、かつ反対の立場を取るステークホルダーです。権力が大きいため、対応を誤ると、このたった一人のために取り組みがとん挫する事もあり得るからです。上図のグリッドでは鈴木事業部長になりますね。

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大事なのは、「反対」の立場にいるステークホルダーを「抵抗者」とか「障害」と見てはいけない事です。
会社や顧客のためを思って反対している場合もあります。
この取り組みを行うとお客さんに迷惑がかかるのではないかとか、もっと優先すべき取り組みがあるなどの理由で反対している場合は、会社の事を真剣に考えた結果の反対です。
また取り組みを良く検討した上で、そもそも取り組みに不備・欠陥があるから反対という人もいます。

そういう意味では、反対しているステークホルダーは取り組みを進めるうえで将来的にぶち当たるだろうリスク情報を与えてくれる貴重な存在です。

一方で、現状維持バイアスで、ただただ現状にしがみ付いていたい風に見える反対者もいるでしょう。
しかし、取り組みの内容や目的をそもそもよく知らされていない、又は誤解していて反対しているだけで、適切な情報を与えて理解してもらう事で「支持」の状態に進める事もあります。
または、自分になりの意見があるのにそれを聞いてもらう機会がなくて、もやもやしている場合もあります。そのような場合は話を聞いてもらえるだけで「支持」の状態に進める事もあります。

反対する理由も多種多様です。いくつか挙げると、
● トップや上司が真剣でないから、どうせまたうまく行くわけがない、労力の無駄と反対している
● 今のシステムは自分が導入したので、他のやり方に変えられるのは抵抗がある
● 今のやり方に慣れるのに大分苦労したので、また繰り返したくない
● 今とにかく忙しくて、他の事に時間を割く余裕がない
● 自分の仕事が増えるのではないかと心配して反対
● 逆に自分の仕事が減って残業手当が減るのではないかと心配して反対
● 自分が意見する機会が与えられていないから反対
● リソースを取り合う事になる別のプロジェクトの担当者が反対
● 高宮か、気に食わないんだよねー、あいつの提案は取り合えず全部反対(笑)

「反対」にいるステークホルダーに関しては、なぜ反対しているのか根本原因を探っていきます。慎重に正しく判断する事が極めて重要です。
分からなければ本人に直接聞いてみるのも選択肢の一つです。誠実な態度で接すれば、結構本音で教えてくれるものです。他のステークホルダーに相談してみるのも良いでしょう。
上に列記した反対理由をよく見てもらえば分かるように、実は取り組みそのものには反対していないものの、他の理由で反対している、支持できないという場合も多いのです。

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次回「ステークホルダー・エンゲージメントの手順:その3」で引き続き、「2.ステークホルダーの理解(分類・マッピング等)」を更に説明していきます。

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