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ステークホルダー・エンゲージメントの手順:その1 ステークホルダーを特定し理解する

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2024年3月30日
  • Reading time:5 mins read

ステークホルダー・エンゲージメントの手順について3回に分けて紹介します。1回目は「1.ステークホルダーの特定・認識(ステークホルダーリストの作成)」と「2.ステークホルダーの理解(分類・マッピング等)」です。

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前回までお話したように、変革のプロジェクトや取り組みにあたっては、ステークホルダーと積極的に向き合い、ステークホルダーのニーズや見解をくみ取り、変革の目的、ステークホルダーにとっての恩恵を理解してもらう必要があります。
ステークホルダーとは、プロジェクトや変革などの取り組みに影響されたり、逆に影響を与える人たちです。

今回はステークホルダーからエンゲージメントを得るためのステップを紹介します。
彼らのエンゲージメントを後押しし、プロジェクトの積極的な支援者になってもらうことで、プロジェクトを成功に導くことができます。

下記の順序でステークホルダーのエンゲージメントを獲得していきます。

1.ステークホルダーの特定・認識(ステークホルダーリストの作成)
2.ステークホルダーの理解(分類・マッピング等)
3.エンゲージメントの計画
4.エンゲージメントプランの実施
5.エンゲージメントのモニタリング

今回から3回の記事に分けて紹介していきます。早速、順番に見ていきましょう。

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1.ステークホルダーの特定・認識(ステークホルダーリストの作成)

最初のステップとして、ステークホルダーを特定していきます。
原則として、全てのステークホルダーをリストアップします。しかし、小さなプロジェクトや取り組みではそれが可能ですが、大規模なものになると、ステークホルダーが数百人から千、万という単位の人数になります。組織改革のような組織を横断する大規模な変革プロジェクトでは、少なくても社員全員がステークホルダーになります。全員リストアップするだけでへとへとになりそうです(笑)。
その場合は、部署やチーム、事業者等、反応や影響が比較的共通すると思われるグループをひとかたまりとして認識しておくのが現実的です。

ただし、1つの大きなグループの中に動機や影響が異なる小さなグループの人たちをまとめて認識してはいけません。例えば、何かのプロセスを変更するプロジェクトにおいて、一言で手続きに関わる人たちといっても、その指示を与える人たちとその作業を実際におこなう人たちでは、変化に対する受け止め方が異なるはずです。そのような人たちを認識し損ねておくと、後で文句やフラストレーションを感じ、取り組みに非協力的になる可能性があります。

そしてステークホルダーがどういう役割・立場で、取り組みにどのような影響を与えるか、または、どのような影響を受ける可能性があるか、ステークホルダーが期待することやメリットは何か、エンゲージメントが必要な理由をそれぞれ認識しておきます。

ステークホルダー特定時のポイントは、抜けがないようにリストアップすることです。抜けがあると後になって「俺はそんな事聞いてないぞ!」とか「えっ?初耳ですが。。」となってしまいます。
組織図やその他社内データの利用、マインドマップ、ブレーンストーミング、関係者(ステークホルダー)への聞き取りや対話などで抜けがないように特定していきます。

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2.ステークホルダーを理解(分類・マッピング等)

前のステップで特定されたステークホルダーそれぞれに対して異なった対応が必要になります。 その中には、プロジェクト・取り組みの鍵となるステークホルダーが存在するはずです。そのために、特定したステークホルダーを理解していく必要があります。
特定したステークホルダーを理解した上で、重要度や優先度をつけて、次の段階でエンゲージメントを計画するという流れです。

チェンジマネジメント、プロジェクトマネジメントの分野では、この作業を「ステークホルダー分析」と言います。
「分析」という言葉をステークホルダーに使うのは、上から目線かつ冷たい感じを与えるため使いたくありませんが、説明の便宜上使っていきます。

一般に紹介されているステークホルダー分析方法は、下記のようにいくつかあります(こちら英語ですが、ステークホルダー分析のWikipediaへのリンクです)。

① 2軸のグリッドで表す方法(例えば「1. 権限と関心度」、「2. 権限と関与度」、「3. 影響度と関与度」などの2軸)
② 上の2要素モデルにさらに1要素加えて3要素にして、3次元の立方体(キューブ)で表す方法
③ 突出モデル(Salience model:権力、緊急性、正当性の3つの領域)で評価する方法
④ ステークホルダーの相関をマッピングする方法

このような「分析モデル」はいくつもあります。ただし、その多くは効果的に利用するには一般化、簡略化され過ぎていて、実際の取り組みに利用するにあたっては、参考程度とするか、他のモデルと組み合わせたり、組織、取り組み、変革、プロジェクト等の実際に合わせてカスタムしなければなりません。

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例えば、上に紹介した複数のモデルの中で多く引用されるのが下図のステークホルダーの「Power – Interest(権限と関心度)」グリッドモデルです。ステークホルダーの持つPower(権限・影響力)を縦軸に、Interest(関心度)を横軸に取りプロットします。それぞれのステークホルダーがどの領域にいるかによってステークホルダーを理解し対応していくものです。

図:「Power – Interest(権限・影響力と関心度)」のグリッドモデル

「権限と関心度」モデルは、多くの場合このように紹介されます。

  • 右上の領域にいるステークホルダー:権限・関心共に高い →「Manage Closely」密に対応していく
  • 左上の領域にいるステークホルダー:権限は高いが、関心が低い →「Keep Satisfied」常に満足させる必要があるが、情報を与えすぎるとうんざりするので気を付ける
  • 右下の領域にいるステークホルダー:権限は低いが、関心が高い →「Keep Informed」密に情報共有してサポートしてもらう
  • 左下の領域にいるステークホルダー:権限・関心共に低い →「Monitor」必要な情報は与え、モニターしていく

。。。そうでしょうか???
紹介しておいて言うのもなんですが、私はこの「Manage Closely」「Keep Satisfied」「Keep Informed」「Monitor」が、どうしても腑に落ちないのです(笑)。
たしかにこの説明に当てはまるステークホルダーもいるでしょう。しかし、全てのステークホルダーにこの対応があてはまるでしょうか?

そもそも「関心がある」と言っても、好意的な意味で関心がある場合、つまり取り組みに支援的な場合と、否定的な意味で関心がある場合、つまりとにかく口を挟んできて提案を潰しにかかるという意味でものすごく関心がある場合があります。両者ではもちろん対応の仕方が全然違うでしょう。
仮に「好意的に関心がある」意味だったとしても、もしステークホルダーを単純にたった4つに分類して「Manage Closely」のようなただ一言でシンプルに対応できるのなら、全ての組織改革はもっと上手く簡単に実現しているはず、、、と思ってしまいます。

また、これらのモデルで欠落している重要な要素は、それぞれのステークホルダーの感情です。変化の取り組みにどのような感情をもつのか、それを知るためにはそれぞれの関係者たちの身になって考えるだけでなく、彼らと直接コミュニケーションを取らないと分からないことがあります。
このようなマッピングはツールであって、作ることが最終目的ではありません。繰り返しますが、重要なのはステークホルダーの感情や関係性の理解で、ツールはそれを助けるものでなければなりません。

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そこで、私が使うのはこのモデルをカスタムした「あきとモデル」です(笑)。
「おまえ!モデル自体を批判しておいて、別のモデルを提起するのかよ!」とご批判を頂くかも知れませんが(_ _)、ちょっと区切りが悪いので(汗)、次回説明させて下さい。。。

ということで、次回、ステークホルダー・エンゲージメントの手順:その2へ続きます。

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