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ステークホルダー・エンゲージメントの手順:その1 ステークホルダーを特定し理解する

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2023年4月30日
  • Reading time:4 mins read

ステークホルダー・エンゲージメントの手順について複数回に分けて紹介します。1回目は「1.ステークホルダーの特定・認識(ステークホルダーリストの作成)」と「2.ステークホルダーの理解(分類・マッピング等)」です。

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前回までお話したように、変革のプロジェクトや取り組みにあたっては、ステークホルダーと積極的に向き合い、ステークホルダーのニーズや見解をくみ取り、変革の目的、ステークホルダーにとっての恩恵を理解してもらいます。
ステークホルダーとは、プロジェクトや変革などの取り組みに影響されたり、逆に影響を与える個人や組織です。

今回はステークホルダーのエンゲージメントを得るためのステップを紹介します。
彼らのエンゲージメントを後押しし、プロジェクトの積極的な支援者になってもらう事で、プロジェクトを成功に導くことができます。

下記の順序でステークホルダーのエンゲージメントを獲得していきます。
1.ステークホルダーの特定・認識(ステークホルダーリストの作成)
2.ステークホルダーの理解(分類・マッピング等)
3.エンゲージメントの計画
4.エンゲージメントプランの実施
5.エンゲージメントのモニタリング

今回から複数回に渡っての紹介になりますが、順番に見ていきましょう。

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1.ステークホルダーの特定・認識(ステークホルダーリストの作成)

最初のステップとして、ステークホルダーを特定し認識していきます。
原則としては全てのステークホルダーを一人一人リストアップし認識します。
しかし、小さなプロジェクトや取り組みではそれが可能ですが、大規模なものになると、ステークホルダーが数百人から千、万という単位にもなります。組織改革のような組織を横断する大規模な変革プロジェクトでは、少なくても社員全員がステークホルダーになります。全員リストアップするだけでへとへとになりそうです(笑)。その場合は、部署や事業者等、反応や影響が比較的共通すると思われるグループをひとかたまりとして認識しておく方が現実的です。

そしてステークホルダー達がどういう役割・立場で、取り組みにどのような影響を与えるか、または、どのような影響を受ける可能性があるか、ステークホルダーが期待する事やメリットは何か、エンゲージメントが必要な理由をそれぞれ認識しておきます。

ステークホルダー特定時のポイントは、抜けがないようにリストアップすることです。抜けがあると後になって「俺はそんな事聞いてないぞ!」とか「えっ?初耳ですが。。」となってしまいます。
組織図やその他社内データの利用、マインドマップ、ブレーンストーミング、関係者(ステークホルダー)への聞き取り、コンサルタントへの相談などで抜けがないように特定していきます。

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2.ステークホルダーを理解(分類・マッピング等)

1.のステップで特定されたステークホルダーそれぞれに対して異なった対応が必要になります。 また、その中でも、プロジェクト・取り組みの鍵となるステークホルダーが存在するはずです。そのために、特定したステークホルダーを理解していく必要があります。
特定したステークホルダーを理解した上で、優先度をつけ次の段階でエンゲージメントを計画するという流れです。

チェンジマネジメント、プロジェクトマネジメントの分野では、この作業を「ステークホルダー分析」と言います。
私は「分析」という言葉をステークホルダーに使うのは、上から目線かつ冷たい感じを与えるため使いたくないのですが、説明の便宜上使う場合がありますのでご了承下さい。

一般に紹介されているステークホルダー分析方法は、下記のようにいくつかあります(こちら英語ですが、ステークホルダー分析のWikipediaへのリンクです)。

① 2軸の表(グリッド)で表す方法(例えば、「1. 権限と関心度」、「2. 権限と関与度」、「3. 影響度と関与度」等の2軸)
② 上の2要素モデルに更に1要素加えて3要素にして、3次元の立方体(キューブ)で表す方法
③ 突出モデル(Salience model:権力、緊急性、正当性の3つの領域)で評価する方法
④ ステークホルダーの相関をマッピングする方法

他の評価モデルの紹介の際にも説明しましたが、このような「分析」モデルはいくつもあります。ただし、その多くは実際に使うには一般化、簡略化され過ぎていて、取り組みに利用するにあたっては、参考程度とするか、他のモデルと組み合わせるか、組織、取り組み、変革、プロジェクト等の実際に合わせてカスタムしなければなりません。

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例えば、上に紹介した複数のモデルの中で多く引用されるのが下図のステークホルダーの「Power – Interest(権限と関心度)」のグリッドモデルです。ステークホルダーの持つPower(権限・影響力)を縦軸に、Interest(関心度)を横軸に取りプロットします。それぞれのステークホルダーがどの領域にいるかによってステークホルダーを理解し対応していくものです。

図:「Power – Interest(権限・影響力と関心度)」のグリッドモデル

「権限と関心度」モデルは、多くの場合このように紹介されます。
● 右上の領域にいるステークホルダー:権限・関心共に高く、「Manage Closely」、密に対応していく
● 左上の領域にいるステークホルダー:権限は高いが、関心が低く、「Keep Satisfied」、常に満足させる必要があるが、情報を与えすぎるとうんざりするので気を付ける
● 右下の領域にいるステークホルダー:権限は低いが、関心が高く、「Keep Informed」、密に情報共有する事でサポートしてもらう
● 左下の領域にいるステークホルダー:権限・関心共に低く、「Monitor」、必要な情報は与え、モニターしていく

。。。そうでしょうか???
紹介しておいてなんですが、私はこの「Manage Closely」「Keep Satisfied」「Keep Informed」「Monitor」が、どうしても腑に落ちないのです(笑)。
たしかにこの説明に当てはまるステークホルダーもいるでしょう。しかし、全てのステークホルダーにこの対応があてはまるでしょうか?

「関心がある」と言っても、好意的な意味で関心がある場合、つまり取り組みに支援的な場合と、否定的な意味で関心がある場合、つまりとにかく口を挟んできて提案を潰しにかかるという意味でものすごく関心がある場合があります。両者ではもちろん対応の仕方が全然違うでしょう。
仮に「好意的に関心がある」意味だったとしても、もしステークホルダーを単純にたった4つに分類して「Manage Closely」のようなただ一言でシンプルに対応できるのなら、全ての組織改革はもっと上手く簡単に実現しているはず、、、とも思ってしまいます。

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そこで、私が使うのはこのモデルをカスタムした「あきとモデル」です(笑)。
「おまえ!モデル自体を批判しておいて、別のモデルを提起するのかよ!」とご批判を頂くかも知れませんが(_ _)、ちょっと区切りが悪いので(汗)、次回説明させて下さい。。。

ということで、次回、ステークホルダー・エンゲージメントの手順:その2へ続きます。

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