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人生はゴールをめざさない:目標達成中毒(Achievement Addiction)からの脱却

  • 投稿カテゴリー:Change Management
  • 投稿の最終変更日:2023年1月1日
  • Reading time:6 mins read

私たちは、人生の何から何まで目標を立てようとします。幼い頃から目標を立てて達成するように教えられ「君は何になりたい?」と問われてきました。そして何を達成し何になったかで自分や他人を評価しますが、目標を達成するその先の目的が欠けてしまっています。私たちは「君はどんな人になりたい?」と問われるべきだったかもしれません。

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はじめに

もう少しで2022年も過ぎようとしています。この年末年始に新たな年への目標を立てる人も多いでしょう。過ぎ行く年の目標を達成できて充実した1年を過ごせた人もいるでしょう。一方で、今年はさえなかった、目標を達成できなかった、来年こそはよい1年になるようにと願ったり、よい1年にするぞと気持ちを新たにする人もいるでしょう。

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新年の抱負を達成する人は8%だけ

年末年始のような節目となる時期は、私たちにフレッシュスタート効果(fresh start effect)を与えてくれます。別の言葉で言えば、リセット効果でしょうか?過去をリセットしたり、自分を見つめなおし、気持ちを新たに再スタートしようというきっかけを与えてくれます。

しかしアメリカのビジネス情報誌「Inc.」の記事によると、60%の人たちが新年の抱負を立てるものの、それを達成する人はわずか8%に過ぎません。(1)

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不適切なゴール、ゴールのデメリット

なぜ私たちはこれほどまでに自分が設定した目標を達成できないのでしょうか?

その理由の1つに、前回紹介したように、目標は立てるものの、それを達成する仕組みを考えないことが挙げられます。本サイトでも以前紹介しましたが、よくないゴールや目標の設定や、実現可能性の低いゴールや目標設計には次のような特徴があります。

  1. ゴールを立てても達成する仕組みがない
  2. ゴールの前提となるべき「なぜ?」が明確でない
  3. 矛盾するゴールが存在する
  4. 体裁を整えるだけで、本気で達成しようと思っていない

さらには、ゴールや目標を設定することがマイナスの効果をもたらす場合もあります。以下のような問題です。

  1. ゴールを設定しただけで満足して達成した気になってしまう
  2. ゴールを達成すれば成功だが、達成できなければ失敗という両極端な結果をもたらす
  3. ゴールを達成できない自分は不十分、不完全だという負の感情をもたらす
  4. ゴール設定によって視野が狭くなり、他の大事なことが見えにくくなる
  5. 是が非でもゴールを達成しようとして、非倫理的な行動をとることがある

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ゴールは、通過点やマイルストーンであり、最終目的ではない

もちろん、ゴールや目標を設定することには多くのメリットがあります。マイクロソフトGoogleも「OKRs:Objectives and Key Results(目標と成果指標)」を使うことで大きな成長を実現しました。目標を定めて仕事に取り組むと、従業員のパフォーマンスを改善できます。目標の難易度を上げて明確なゴールを設定すると、従業員のエンゲージメントが一層向上するという研究結果もあります。目標は私たちに方向性を示し、意識をフォーカスさせ、そのプロセスにコミットして前進する原動力になります。

しかし、良いゴールや目標は、通過点やマイルストーンであって、最終目的ではありません。
目標を達成することが目的ではなく、目的にたどり着くために目標を設定するのです。よくないゴールは、ゴール自体が目的になっています。よい目標やゴールにはその背景に大きな目的が存在し、目標はその目的にたどり着くための通過点なのです。

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Achievement Addiction:目標達成中毒

私たちは、仕事だけでなく、人生の何から何まで目標を立てようとします。
私たちは、幼い頃から何か目標を立てて達成するように教えられてきました。そのため「何かを達成すること」を自分の価値観と結びつけてしまうことさえあります。(2)
そして他人に対しても「何を達成したか」でその人の価値を判断し、どれほど多く大きなことを達成したかで自分と他人を比較します。私たちの多くは何かを達成することに夢中になっていて、仕事や設定した目標における成功と、人としての成功との間に大きな違いがあることを忘れています。

例えば、私たちは仕事で目標の達成を追い求め、その達成のために、自分や家族との時間を削ってでも夜遅くまで働きます。
私たちは、プライベートでも目標の達成を追いかけます。例えば、フルマラソンで4時間を切ってゴールするという目標を立てます。達成したら成功、達成できなかったら失敗です。しかし、4時間を切れなかったら本当に失敗なのでしょうか?そこまでの努力はすべて無駄でしょうか?

また、頑張ってフルマラソンで4時間を切ることができれば、次は3時間半、その次は3時間と目標のハードルを上げていきます。以前紹介したヘドニック・トレッドミル(hedonic treadmill:快楽適応)のように私たちは達成したことに満足できず次のゴールを目指します。そして次のゴールを達成するために、他を犠牲にしてでも時間やエネルギーをどんどん増やしてつぎ込んでいきます(効率的に時間を利用してタイムを縮めることができる人たちもいますが)。目標を達成するとやっと解放されたという安堵感を覚えることさえあります。

コロナウイルスのパンデミック中はマラソン大会がなくなり走るモチベーションが保てなかった人もいたでしょう。しかし、そもそも走る目的がレース以外のところにあるのならば、そのようなことはなかったかもしれません。大事なのは、レースや記録という目標の先にある目的です。

目標を設定しないリーダーもいます。クラウドベースのソフトウェア会社BasecampのCEOであるジェイソン・フリード(Jason Fried)はこう言います。
「私が目標を立てない理由は、目標のほとんどは人為的なものであり、目標を達成して満足するか、達成できずに腹を立てるかのどちらかだからです。そして、もし達成したら、また次の目標を設定するのです。」
フリード氏もランニングを例に挙げています。
「私は以前、熱心なランナーでした。設定したタイムに到達したいと頑張って、目標タイムにわずかに届かなかった時、憤慨したものです。しかし、本当に問うべき質問は、走って楽しかったか?新鮮な空気を楽しんだか?よい運動ができたと思えたか?であるべきだったでしょう。」(3)

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私たちは「何かを達成すること」の中毒になっています。

以前ほど仕事中毒(ワーカホリック)という言葉を聞くことは少なくなりましたが、一方で、私たちは新たな中毒の種を探し続けるのです。

目標を達成しても、その瞬間の生活が変わるだけです。真の長期的思考とは、目標を持たない思考です。(4)

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目指すべきは「点」ではなく「状態」

私は以前、目指すべきは「点」ではなく「状態」だと書きました。ゴールは何かを達成することではなく、ありたい状態にあることだと説明しました。そして、私自身について言えば、自分、仕事、家族、社会の4つのバランスを取って、成長し貢献している状態だと紹介しました。
例えば、仕事で多くの目標を立てて成功しようとすると、他の3つの自分、家族、社会がおざなりになります。自分個人の目標を高くし過ぎると、その他の3つが犠牲になります。もちろん、どうしても仕事が忙しい時もあるでしょう。家族に緊急の出来事が起きて付きっ切りになることもあるでしょう。短期的にはバランスを取れないこともありますが、全体としてバランスを取りたいと心がけています。

私たちはよく子どもたちに「将来、何になりたいの?」と聞きますね。

難関校に合格したい。一流企業に入りたい。プロスポーツ選手になりたい。ユーチューバーになりたい。お金持ちになりたい。といった答えが返ってきます。

しかし、このようなゴールは達成した時点で終了です。それ自体が目的となっているゴールや目標は「点」であり「イベント」です。ゴールが点である場合、達成の喜びは一瞬でしかありません。もっと大事な質問は「何」ではなく「なぜ」であり「誰」です。つまり尋ねるべき質問は「将来、何になりたいの?」ではなく「将来、どんな人間になりたい?」です。私たちはどんな職業であれ、ありたい自分であることができます。しかも、それは今すぐにでも実現できます。そしてありたい自分であることに終わりはありません。

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さいごに

年初の抱負に話を戻して、もしあなたが「年初だから目標を立てようかな」と安易に考えるのならば、目標を設定するのはやめておいた方がよいでしょう。もし年始だからといって目標を立てると、本来立てる必要のないゴールを無理やり作為的に立ててしまう可能性があります。

それよりも次のことを考えてみてください。

あなたはどんな人ですか?どんな人になりたかったですか?どんな人でありたいですか?

A good traveller has no fixed plans, and is not intent on arriving. ~ Lao Tzu
よい旅人は決まった計画をもたず、どこかにたどり着くことが目的でもない。 ~ 老子

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参考文献
(1) Peter Economy, “10 Top New Year’s Resolutions for Success and Happiness in 2020“, Inc., 2019/12.
(2) Siobhan Harmer, “Do You Have An Achievement Addiction?“, Lifehack
(3) “Jason Fried“, In Pursuit from Glassdoor, 2019/11/5.
(4) James Clear, “Atomic Habits: An Easy & Proven Way to Build Good Habits & Break Bad Ones”, Avery, 2018/10.

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