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外発的動機と内発的動機 - 自己の価値観と目的に向き合い、内発的動機に導かれる

  • 投稿カテゴリー:人が変わる
  • 投稿の最終変更日:2026年2月15日
  • 読むのにかかる時間:14 mins read

人が長期的なモチベーションやパフォーマンスを上げるためには、内発的動機が必要です。報酬などの外発的動機は最低限の動機付けにしかならず、また短期的な効果しかありません。内発的動機に導かれるためには、自分と向き合い、自分の価値観、目的を明らかにすることです。

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はじめに

「今の仕事、本当にやりがいを感じていますか?」
多くの人が、給与や評価のために働いていると答えるでしょう。しかし、それだけでは長期的なモチベーションを維持することはできません。一時的に頑張れても、いずれ疲弊してしまう。そんな経験はありませんか?

「報酬が上がってもモチベーションが上がらない」「昇進しても満足感が続かない」── 多くの組織や個人が、このジレンマに直面しています。

本当に持続可能なモチベーションの源泉は、実は私たちの内側にあります。この記事では、心理学の研究に基づいて、外発的動機と内発的動機の違いを明らかにし、自分自身の価値観に導かれて働き、生きるためのヒントをお伝えします。

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外発的動機とは? 内発的動機とは?

外発的動機付け」とは、報酬を得たい、見返りが欲しい、注目を浴びたい、みんなから評価されたい、または反対に、懲罰や嫌な思いを避けたいという理由から生まれる行動の動機付けのことです。

内発的動機付け」とは、自分がやりたいと思い、楽しさ、喜び、やりがいを感じるからこそ、ある行動に取り組むことです。
例として「新しいチャレンジや探求、自分の能力の向上、他人や社会への貢献」などが挙げられます。内発的に動機付けられた行動は、報酬や外部評価を求めるものではなく、それ自身のために行う活動であり、行動そのものが報酬になります。

日常の例で考えてみましょう。

例えば、「テストで100点取ったら、ゲームソフトを買ってあげる」と親に言われて勉強するのは外発的動機です。 結果として、短期的にはテストの点数は上がるかもしれませんが、報酬がなければ勉強しなくなります。また、「学ぶこと自体の楽しさ」を感じる機会を失います。

「恐竜のことがもっと知りたい!」という興味から、図鑑を読んだり、博物館に行ったりするのは内発的動機です。誰に言われなくても自分から学び続けます。学ぶこと自体が喜びだからです。

私自身を例に挙げてブログの執筆について言えば、「PV数を上げて広告収入を得たい」という理由で記事を書くのは外発的動機です。もし、PV数が伸びなければモチベーションが下がります。また、「読者に価値を提供する」より「クリックされやすい記事」を優先して書くようになるかもしれません。

そうではなく、「自分が学んだことを誰かと共有したい」「考えを言語化することで自分の理解を深めたい」という理由で記事を書くのは内発的動機です。結果、まったく利益にならなくても(汗)、書くこと自体に充実感を感じます。読者からの「参考になりました」というコメント一つでも、深い喜びを感じられます。

どちらが良い悪いではなく、長期的に続けられるのは内発的動機に導かれた行動だということです。

外発的動機は、短期的には行動を促進することができます。しかし長期的なモチベーションの維持には効果がありません。にもかかわらず、多くの会社では、外発的動機に頼った従業員の管理、つまり、報酬で従業員を評価することがいまだ主流です。

「そうは言っても内発的動機だけでは仕事はできないでしょ!」「給料がないと生活できないでしょ!」という意見はごもっともです。

フレデリック・ハーズバーグ(Frederick Herzberg)は、マネジメントの教科書的理論でもある二要因理論(Hygiene theory, Motivation-hygiene theory, Dual-factor theory)で有名です。

彼は、従業員の満足度に影響を与えるものとして、①衛生要因(Hygiene factors)と②動機要因(Motivators)の2つの要素を挙げています。

外発的動機は①衛生要因(Hygiene factors)にあたります。積極的に満足感を与えるものではありませんが、足りないと不満をもたらします。つまり、衛生要因は会社が従業員に仕事をさせる上で最低限必要な条件です。
もし勤め先から「来月から給与出ないけど頑張って働いてね」と言われても、働き続けられないですよね?

衛生要因(外発的動機)が最低条件である一方、パフォーマンス、コミットメント、情熱を高めるのは、②動機要因(Motivators)内発的動機なのです。

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外発的動機の負の影響

外発的動機付けが常に動機付けに役に立たないと言っているのではありません。
外発的動機づけは、ある状況においては有益です。例えば、やりたくない仕事を消化する必要がある場合、ルーチン作業の効率を上げる場合、興味のない活動に関心を持ってもらいたい場合などに役立ちます。

更に、新しいスキルや知識の習得によって、内発的に活動するきっかけになるかもしれないという期待を込めて利用することもできます。

しかし、外発的動機付けの難しさは、雇用者が望むするようには、報酬や賞罰と望ましい行動や結果を結び付けられないという点です。

例えば、旧来型の報酬制度で、仕事の成果によらず、出社して会社に8時間いるだけで報酬が約束される場合は、一生懸命仕事をしなくても、とりあえず毎日会社に来て仕事をしているフリをしておけばいいやという考えが生まれます。

外発的動機付けを報酬を与える側が望む通り設計するのはとても困難で、常に抜け道や意図せぬマイナスの効果が存在し、そのため報酬制度の議論は決定打がなく永遠に繰り返されるのです。

(1) 外発的動機は内発的動機を低減させる

さらに困ったこととして、外発的動機付けは内発的動機を低減させることさえあります。

人がすでにやりがいのあるものと見なして自発的におこなっている活動に外発的動機を付け加える場合です。
例えば、内発的動機からボランティアや無償の人助けをおこなう人に「報酬」を提示すると嫌がられることがありますよね?

「人のために」と善意で行っている行為に、外発的動機である報酬と結び付けられて、金銭的な価値に置き換えられるのを嫌うからです。

「すでに内的報酬を得ている行動に対して、過剰な外的報酬を与えることは、内発的動機を低下させる」ということは研究でも証明されており、「過剰正当化効果(overjustification effect」または「モチベーションのクラウドアウト(Motivation crowding theory」として知られています。

その他にも外発的動機には、以下に示すような負の影響があります。

(2) 不正や自己利益を助長する

自分の地位や報酬を維持したり上げたりすることに注力して、全体の利益を犠牲にすることです。メディアでもそのような不祥事の事例が繰り返し大きく報道されています。

ある製造業の営業部門では、個人の売上高に応じて報酬が設定されていました。その結果、以下のような問題が起きました。

  • Aさんは、自分の売上目標達成のために、本来は同僚が担当すべき顧客に先回りして提案し、社内で対立が生まれた
  • Bさんは、四半期の売上を上げるために、顧客が本当に必要としていない過剰なスペックの製品を売り込み、結果的に会社の信頼を大きく下げた
  • Cさんは、月末に売上を計上するために、顧客に無理な納期を約束し、製造部門に過大な負担をかけた

このように、「個人の売上」という外発的動機だけが強調されると、会社全体の利益(顧客満足、チームワーク、長期的な信頼関係)が犠牲になってしまうのです。

(3) 短期的な視点を生む

通常、報酬は短期的な結果に対して与えられます。まだ見えない10年後の成果への貢献に対して今月の報酬が設定されることはありません。そのため、報酬は私たちの意思決定の焦点を短期的な効果に偏らせ、長期的な効果は軽視するのです。

(4) 視野を狭くする。創造的な思考を妨げる

報酬によって、短期的視点、報酬への最短ルートに目が向き、その結果、視野が狭くなります。そして、創造的で自由な発想が妨げられます。このことも多くの研究によって証明されているものです。

(5) 上げた報酬は上げ続けなければならない

報酬はいったん与えられると、それが当り前=スタンダード、デフォルトになります。
つまり、報酬が下がるのが論外であるだけでなく、一生懸命頑張って報酬が上がらないだけでなく、据え置きでも不満に思います。さらなる動機付けにするためには報酬を上げ続けなければなりません。

私たちの脳はそのように機能しているのです。これを心理学上、馴化(Habituationと言います。
馴化とは、ある刺激がくり返し提示されると、その刺激に対する反応が徐々に少なくなっていく現象(慣れ)です。

快楽適応・ヘドニックトレッドミル(hedonic treadmill, hedonic adaptationも同様の傾向を表す言葉です。
ポジティブなことに対してもネガティブなことに対しても、大きな出来事や人生の変化があっても、人間はすぐに比較的安定したレベルの幸福感に戻る傾向があります。この理論によると、人は報酬が上がると、期待や欲求も連動して上昇し、結果として永久に幸福感を得ることができません。

私たちの脳にドーパミンを生み出した「期待」はすぐに馴化し、さらにドーパミンを生み出し続けるには、期待を高め続ける必要があるのです。そのため繰り返しになりますが、報酬は長期的な動機付けのためには向いていないのです。

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内発的動機

ここまで見てきたように、外発的報酬は、短期的な行動を促進することはできます。しかし長期的なモチベーションにするにはほとんど効果がありません。
それに対して、内発的動機づけは、無限に湧き出る泉のようなものです。行動を起こす原動力となります。内発的に動機付けられている場合、私たちは、その行動そのものをやりたいから行動するのです。その意味で、内発的に動機づけられた行動は私たちのアイデンティティと一体化しているのです。

アメリカ人の作家のダニエル・ピンク(Daniel H Pink)はその著書 『Drive:(邦訳)モチベーション 3.0』の中で、内発的動機付けのアプローチには、次の3つの本質的な要素があると説明しています。

自律性(自主性):自分の人生を自分で決めたいという欲求
成長(習熟):重要なことをもっと知りたい、もっとうまくなりたいという衝動
目的:自分よりも大きなもののために何かをしたいという切なる願い

あるIT企業のエンジニア、Dさんの例を見てみましょう。

Dさんは入社3年目で、日々の業務は既存システムの保守が中心でした。新しい技術に触れる機会も少なく、「このままで良いのか?」という漠然とした不満を抱えていました。給与には特に不満はなく、むしろ同年代より高い方でした。しかし、モチベーションは上がりませんでした。

そんなとき、Dさんは自分の価値観と向き合う時間を持ちました。振り返ってみると、学生時代に最も充実していたのは、「新しい技術を学び、それを使って誰かの課題を解決したとき」でした。Dさんのコアとなる価値観は、「学び・成長」と「問題解決による貢献」だったのです。

Dさんは、保守業務の中にも、この価値観を体現する方法を見つけました。

①自律性:上司に相談し、保守作業の一部を自動化するプロジェクトを提案。週1日、自分の裁量で新技術を学びながら自動化ツールを開発する時間を確保した。

②成長:毎週、新しい技術や設計パターンを1つ学ぶことを自分に課した。それを社内の勉強会で共有し、他のメンバーにも教えることで理解を深めた。

③目的:「この保守業務が自動化されれば、チーム全員が本当に価値のある新規開発に時間を使える。それは会社全体への貢献だ」という目的を明確にした。

6ヶ月後、Dさんが開発した自動化ツールによって、チームの保守作業時間が30%削減されました。給与が上がったわけではありませんでしたが、Dさんのモチベーションは以前とは比較にならないほど高くなり、毎日、成長している実感が生まれました。

これが、内発的動機に導かれた働き方の力です。

また、ペンシルベニア大学心理学教授アンジェラ・ダックワース(Angela Duckworth)は著書『Grid:(邦訳)やり抜く力』の中で、① 興味、② 練習、③ 目的、④ 希望の4つの要素を挙げています。その主張の根底にあるのは内発的動機に導かれることの重要性です。

実は、これらの最近の内発的動機の研究や書籍のベースになっているのは、1985年、アメリカの心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアン共著の『Self-Determination and Intrinsic Motivation in Human Behavior』です。(1)
内発的動機と外発的動機を体系的に紹介し、各方面から広く認められています。

デシとライアンは、「自己決定理論(SDT:self-determination theory)」として理論を発展させ、内発的動機に必要なのは、「①自律性、②有能性、③関係性」であるとしました。(2)(3)

つまり、デシとライアン以降、使われる言葉に違いはあるものの、根底にあるのは、自分がやりたいと思うこと、楽しさや喜び、やりがいを感じることに取り組むことこそが大切で、それ自体が報酬であり、長期的な動機につながるという点です。

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内発的動機に導かれるためには?

では、内発的動機に導かれて、仕事をし、生活を送るためにはどうすればよいのでしょうか?

前回紹介した『Power of Full Engagement:フルエンゲージメントの力:(邦題)メンタル・タフネス:成功と幸せのための4つのエネルギー管理術』では、この内発的動機の源は「価値観」であり、私たち一人一人が自身の「価値観」に向き合う必要があると説明しています。

コアとなる個人の価値観にはつぎのようなものがあります。

  • 成長・学び・探求
  • 創造性・革新
  • 自由・自律性
  • 誠実さ・正直さ
  • 思いやり・親切さ
  • 公正さ・正義
  • 勇気・チャレンジ
  • 調和・平和
  • 貢献・社会への影響
  • 家族・友情・つながり
  • 卓越性・専門性
  • 楽しさ・遊び心
  • 感謝・謙虚さ

自分が最も重要と思う価値観、外的要因に関わらず自分が体現したいと思う価値観を定義するのです。それが行動の土台となり柱になります。

そして、その価値観を行動に移すためのステートメントを作成するのです。

「寛容さ」がコアとなる価値観の場合、ステートメントは、「私は寛容さを自分の価値観として体現します。人にエネルギーを与えます。見返りは期待しません。自分より私が大切に思う人たちを優先させます」といったものになります。(さらっと書いてますが、簡単にたどり着くことはできません。自己と繰り返し繰り返し向き合わなければなりません)

その他、次のような例が挙げられます。

価値観が「成長・学び」の場合:「私は常に成長し続けることを大切にします。そのために、毎週少なくとも1つ新しいことを学び、失敗を成長の機会として捉えます。うまくいかないことがあっても、『ここから何を学べるか?』と自分に問いかけます。」

価値観が「貢献・思いやり」の場合:「私は他者への貢献を大切にします。そのために、毎日少なくとも1人の同僚や家族に、心からの関心を持って接します。忙しくても、困っている人がいたら手を止めて話を聞きます。見返りは期待せず、与えることそのものを喜びとします。」

価値観が「誠実さ・正直さ」の場合:「私は誠実さを何よりも大切にします。そのために、都合の悪いことでも正直に伝え、約束は必ず守ります。もし守れない場合は、早めに誠実に説明します。短期的な利益のために自分の誠実さを曲げません。」

自分の価値観を体現することが目的であれば、プライベートの生活のみならず、どうしても給与以上の価値を見出せないつまらない会社の仕事においても、「部下を導く、困っている同僚を助ける、顧客に寄り添う、いたわりを持って他人と接する」など、個人の価値観に基づいた目的、内発的動機に導かれた行動を見出すことができます。

また、価値観やステートメントは、一度作って終わりではありません。定期的に振り返る必要があります。

  • 今週、自分の価値観に沿って行動できた瞬間はいつだったか?
  • 価値観に反する行動をしてしまった瞬間はあったか?なぜそうなったか?
  • 来週、価値観をより体現するために、何を変えられるか?

また、人生のステージが変われば、価値観も変化することがあります。それは自然なことです。重要なのは、常に自分自身と対話し続けることです。

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さいごに

外発的動機は、私たちを動かす一つの力です。しかしそれだけに頼っていては、本当の充実感や持続的な成長は得られません。
内発的動機──自分の価値観に基づいた目的を持つこと──これこそが、長期的なモチベーションと幸福感の源泉です。どんなにつまらないと感じる仕事の中にも、自分の価値観を体現する方法は必ず見つけられます。

内発的動機に導かれることは、一朝一夕にできることではありません。自分自身と向き合い、本当に大切にしている価値観は何かを問い続ける必要があります。
まずは、静かな時間を作って、自分に問いかけてみてください。

  • 「私が本当に大切にしている価値観は何だろう?」
  • 「外部の評価を一切気にしないとしたら、私は何をしたいだろうか?」
  • 「10年後、どんな自分でありたいだろうか?」

その答えが見つかったとき、あなたの仕事や日常の行動に、新しい意味と深いやりがいが生まれるはずです。報酬や評価のためではなく、自分自身のために生きる──その第一歩を、今日から始めてみませんか?

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参考文献
(1) Richard M. Ryan, Edward L. Deci, “Intrinsic motivation and self-determination in human behavior“, New York, NY: Plenum, 1985
(2) Richard M. Ryan, Edward L. Deci, “Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being“, American Psychologist. 55 (1): 68–78. 2000.
(3) “Self-determination theory“, wikipedia
(4) Kendra Cherry, medically reviewed by Steven Gans, “Differences of Extrinsic and Intrinsic Motivation“, verywellmind.com, 2020/1/15.
(5) Di Domenico, Stefano I, and Richard M Ryan. “The Emerging Neuroscience of Intrinsic Motivation: A New Frontier in Self-Determination Research” Frontiers in human neuroscience vol. 11 145., 2017/3/24
(6) David Burkus, reviewed by Jessica Schrader, “Extrinsic vs. Intrinsic Motivation at Work What’s the real difference?“, Psychology Today, 2020/4/11.
(7) Evelyn Marinoff, “Why Intrinsic Motivation Is So Powerful (And How to Find It)”, Lifehack, 2021/4/19.
(8) Pierre-Yves Oudeyer, Frédéric Kaplan, “How can we define intrinsic motivation ?“, the 8th International Conference on Epigenetic Robotics: Modeling Cognitive Development in Robotic Systems, 2008

 

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