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外発的動機と内発的動機 - 自己の価値観と目的に向き合い、内発的動機に導かれる

  • 投稿カテゴリー:Change Management
  • 投稿の最終変更日:2022年3月25日
  • Reading time:7 mins read

人が長期的なモチベーションやパフォーマンスを上げるためには、内発的動機が必要です。報酬などの外発的動機は最低限の動機付けにしかならず、また短期的な効果しかありません。内発的動機に導かれるためには、自分の価値観、目的に向かい合い、それを明らかにすることです。

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外発的動機とは? 内発的動機とは?

「外発的動機付け」とは、報酬を得たい、見返りが欲しい、注目を浴びたい、外部評価を上げたい、または逆に、懲罰や嫌な思いを避けたいという理由から生まれる行動の動機付けのことです。

「内発的動機付け」とは、自分がやりたいと思い、楽しさや喜び、やりがいを感じるからこそ、ある行動に取り組むことで、例として「新しいことへのチャレンジや探求、自分の能力の向上、学習、他人や社会への貢献」などが挙げられます。内発的に動機付けられた行動は、報酬や外部評価を求めるものではなく、それ自身のために行う活動であり、行動そのものが報酬なのです。

外発的動機は、短期的には行動を促進することができます。しかし長期的なモチベーションには効果がありません。にもかかわらず、多くの会社では、外発的動機に頼った従業員の管理がいまだ主流です。

「でも内発的動機だけでは仕事はできないでしょ!」「報酬がないと生活できないでしょ!」という意見はごもっともです。
フレデリック・ハーズバーグ(Frederick Herzberg)は、マネジメントの教科書的理論でもある二要因理論(Hygiene theory, Motivation-hygiene theory, Dual-factor theory)で有名ですが、従業員の満足度に影響を与えるものとして、①衛生要因(Hygiene factors)と②動機要因(Motivators)の2つの要素を挙げています。
外発的動機は衛生要因(Hygiene factors)に当たり、積極的に満足感を約束するものではありませんが、足りないと不満をもたらします。つまり、衛生要因は従業員に仕事をさせる上で最低限必要な条件です。もし勤め先から、「来月から給与出ないけど頑張って働いてね」と言われても、続けられないですよね?

衛生要因(外発的動機)が最低条件である一方、パフォーマンス、コミットメント、情熱を高めるのは、衛生要因ではなく、動機要因(Motivators)=内発的動機なのです。

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外発的動機の負の影響

外発的動機付けが常に動機付けに役に立たないと言っているのではありません。外発的動機づけは、ある状況においては有益です。例えば、やりたくない仕事を消化する必要がある場合、ルーチン作業の効率を上げる場合、興味のない活動に関心を持ってもらいたい場合などに役立ちます。更に、新しいスキルや知識の習得によって、内発的に活動するきっかけになるかもしれないという期待を込めて利用する事も可能です。

しかし、外発的動機付けの難しさは、望ましい行動や結果に、雇用者が望むするように報酬や賞罰を適切に結び付けられないという点です。例えば、従来型報酬制度で、仕事の成果によらず出社して会社に8時間いるだけで報酬が約束される場合、定時の間仕事をしているフリをしておけばいいという考えが生まれます。外発的動機付けを報酬を与える側が望む通り設計するのはとても困難で、常に抜け道や意図せぬマイナスの効果が存在し、そのため報酬制度の議論は決定打がなく永遠に繰り返されるのです。

外発的動機は内発的動機を低減させる

さらに困った事として、外発的動機付けは内発的動機を低減させることさえあります。人がすでに内発的にやりがいのあるものと見なして実行している活動に外発的動機を導入する場合です。
例えば、内発的動機からボランティアや無償の人助けを行う人に「報酬」を提示すると嫌がられることがありますよね?善意や利他的な思いからやっているのに、それを外発的動機である報酬と紐づけられたり、金銭的な価値に置き換えられる事を嫌うからです。
この、すでに内的報酬を得ている行動に対して、過剰な外的報酬を与えることは、内発的動機を低下させると研究で証明されており、「過剰正当化効果(overjustification effect)」または「モチベーションのクラウドアウト(Motivation crowding theory)」として知られています。

以下その他の外発的動機の負の影響です。

不正や自己利益を助長する

報酬を維持したり増やすこと、自分の地位の維持にフォーカスし、全体を犠牲にすることです。メディアで報道されるような不祥事のみならず、会社の目的に相反し自己保身に走る従業員はどこの組織にもいるでしょう。

短期的な視点

報酬は大概、短期的な結果に対して与えられます。10年後の成果への貢献に対して今月の報酬が設定されることはないでしょう。そのため、報酬は私たちの意思決定の焦点を短期的な効果に偏らせ、長期的な効果は軽視します。

視野を狭くする。創造的な思考を妨げる

報酬によって、短期的視点、報酬への最短ルートに目が向き、その結果、視野が狭くなり、創造的で自由な発想を妨げます。このことも多くの研究によって証明されているものです。

報酬は上げ続けなければならない

報酬は一度与えられると、それが当り前=スタンダード、デフォルトになります。つまり、報酬が下がるのが論外であるだけでなく、一生懸命頑張っても報酬が変わらないと不満に思いますし、更なる動機付けにするためには報酬を更に上げなければなりません。
私たちの脳はそのように機能しているのです。これを心理学上、馴化(Habituation)と言います。馴化とは、ある刺激がくり返し提示されると、その刺激に対する反応が徐々に見られなくなっていく現象(慣れ)です。
快楽適応(hedonic treadmill, hedonic adaptation)も同様の傾向を表す言葉です。ポジティブまたはネガティブな大きな出来事や人生の変化があっても、人間はすぐに比較的安定したレベルの幸福感に戻る傾向があり、この理論によると、人は報酬が上がると、期待や欲求も連動して上昇し、結果として幸福感は永久に得ることができません。
私たちの脳にドーパミンを生み出した「期待」はすぐに馴化し、さらにドーパミンを生み出し続けるには、期待を高め続ける必要があるのです。そのため繰り返しになりますが、報酬は長期的な動機付けのためには向いていないのです。

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内発的動機

ここまで見てきたように、外発的報酬は、特に短期的には、行動を促進することはできます。しかし長期的なモチベーションにするにはほとんど効果がありません。
それに対して、内発的動機づけは、無限に湧き出る泉のようなものです。行動を起こす原動力となります。私たちは、その行動そのものをやりたいからこそ、その行動をするのです。その意味で、内発的に動機づけられた行動は私たちのアイデンティティと一体化しているのです。

アメリカ人の作家のダニエル・ピンクはその著書 「Drive:(邦訳)モチベーション3.0」の中で、内発的動機付けのアプローチには、次の3つの本質的な要素があると説明しています。
① 自律性(自主性):自分の人生を自分で決めたいという欲求。
② 成長(習熟):重要なことをもっと知りたい、もっとうまくなりたいという衝動。
③ 目的:自分よりも大きなもののために何かをしたいという切なる願い。

また、ペンシルベニア大学心理学教授アンジェラ・ダックワース(Angela Duckworth)は著書「Grid:(邦訳)やり抜く力」の中で、① 興味、② 練習、③ 目的、④ 希望の4つの要素を挙げていますが、その主張のアプローチの根底にあるのは基本的に内発的動機に導かれる事の重要性に帰着します。

実は、これらの内発的動機の研究や書籍のベースとも言えるものが、1985年、アメリカの心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアン共著の「Self-Determination and Intrinsic Motivation in Human Behavior(1)」で、内発的動機と外発的動機を体系的に紹介し認められたものです。デシとライアンは、「自己決定理論(SDT:self-determination theory)」として理論を発展させ、内発的動機に必要なのは①自律性、②有能性、③関係性であるとしました(2)(3)

つまり、デシとライアン以降、使われる言葉の違いはあるものの、根底にあるのは、自分がやりたいと思うこと、楽しさや喜び、やりがいを感じることに取り組むことこそが大切で、それ自体が報酬であり長期的な動機につながるという点です。

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内発的動機に導かれるためには?

では、内発的動機に導かれて、仕事をし、生活を送るためにはどうすればよいのでしょうか?

前回紹介した「Power of Full Engagement:フルエンゲージメントの力:(邦題)メンタル・タフネス 成功と幸せのための4つのエネルギー管理術) 」では、この内発的動機の源は「価値観」であり、私たち一人一人が自身の「価値観」に向き合う必要があると説明します。
コアとなる個人の価値観には、幸せ、調和、勇気、楽しさ、思いやり、公正さ、正直さ、寛容さ、家族、友情、創造性、自由、親切さ、誠実さ、、、などがあります。自分が最も重要と思う価値観、外的要因に関わらず体現したいと思う価値観を定義するのです。それが目的や行動の土台、柱になります。
そしてその価値観を行動に移すためのステートメントを作成するのです。

例えば、「寛容さ」がコアとなる価値観の場合、ステートメントは「私は寛容さを自分の価値観として体現します。人にエネルギーを与えます。見返りは期待しません。自分より私が大切に思う人たちを優先させます」といったものになります(さらっと書いてますが、簡単にたどり着く事はできず、自己と繰り返し向き合う事が必要です)。

こうすれば、プライベートの生活のみならず、どうしても給与以上の価値を見出せないつまらない仕事でも「部下を導く、困っている同僚を助ける、顧客に寄り添う、いたわりを持って他人と接する」など、個人の価値観に基づいた目的、内発的動機に導かれた行動を見出す事ができます。

The Power of Full Engagement: Managing Energy, Not Time, Is the Key to High Performance and Personal Renewal

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参考文献
(1) Richard M. Ryan, Edward L. Deci, “Intrinsic motivation and self-determination in human behavior“, New York, NY: Plenum, 1985
(2) Richard M. Ryan, Edward L. Deci, “Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being“, American Psychologist. 55 (1): 68–78. 2000.
(3) “Self-determination theory“, wikipedia
(4) Kendra Cherry, medically reviewed by Steven Gans, “Differences of Extrinsic and Intrinsic Motivation“, verywellmind.com, 2020/1/15.
(5) Di Domenico, Stefano I, and Richard M Ryan. “The Emerging Neuroscience of Intrinsic Motivation: A New Frontier in Self-Determination Research” Frontiers in human neuroscience vol. 11 145., 2017/3/24
(6) David Burkus, reviewed by Jessica Schrader, “Extrinsic vs. Intrinsic Motivation at Work What’s the real difference?“, Psychology Today, 2020/4/11.
(7) Evelyn Marinoff, “Why Intrinsic Motivation Is So Powerful (And How to Find It)”, Lifehack, 2021/4/19.
(8) Pierre-Yves Oudeyer, Frédéric Kaplan, “How can we define intrinsic motivation ?“, the 8th International Conference on Epigenetic Robotics: Modeling Cognitive Development in Robotic Systems, 2008

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