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何が企業の成長を阻むのか?学びと変化を妨げる5つの要素

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2023年4月30日
  • Reading time:8 mins read

学びと変化。これが出来なければ、誰も正解を知らない不確実な時代に、企業として成長できないだけでなく、もはや存続する事すら危うい時代になりました。しかし、言うは易く行うは難し、過去の習慣や考え方、システムが学びと変化を妨害します。

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先の読めないVUCA時代を生き抜くために、組織は学び続けていく事が必要です。しかし、学ぶ事ができない所か、学ぶ事を拒否する組織も多く存在します。今回は、そのような学ぶことができない組織の特徴を見ていきましょう。

1.階層主義

まず学びができない組織の特徴として挙げられるのが、階層主義の組織と文化です。

同僚レベルでは割と自由で創造的な意見の交換や、本音の話ができる。しかし、経営者や上司など上の階層の人間が入ると、空気が一気に重くなり、自由な発言が出てこない、、、という事は良くありますね。
新しいアイデアが出ない部下たちに上司が声を荒げます、「君たち、しっかりやってくれよ!」、「真剣に考えてくれよ」。
部下たちは更に萎縮し、または、何か言ってねちねちダメだしされるのも面倒だから何も言わないという選択肢を取り、組織は閉塞化という負のスパイラルに陥っていきます。

この構図を下のイラストでもう一度確認します。
左側の同僚達のグループでは意見が活発にされています。しかし、右図のように部長が加わった途端みんな黙ってしまいました。さて、この二つのイラストを見比べて、建設的な議論を妨げている要因は何だと思いますか??

正解は、、、部長です!
簡単すぎましたね。。。

では第2の質問。右の絵の状態から、意見の交換が活発なチームに変えるにはどうすれば良いでしょうか?

正解は、、、部長が議論に加わらなければよい!
これも簡単でしたね。自由な議論を妨げているこの部長がいなくなれば良いのです。

残念ながら、この部長は昭和型・高度成長型の指示型業務管理が全盛だったころの管理スタイルが身体にこびりついていて、部下に指示を出したり、叱ったりする事は出来るものの、部下の意見を傾聴する事ができません。

また、旧来型(昭和型・高度成長型)の組織や業務の仕組みにおいては、年齢と共に業務上の経験を積み重ねていけば、組織の中で上級管理職や経営者として立ち回れるスキルを自然と身に付ける事ができました。上級管理職や経営者が経営について多くを知らなくても、会社もそれなりに成長し回っていく事ができる時代だったのです。
しかし、今は状況が違います。特に組織の上に立つ人間ほど多くを学ばなければなりません。組織の上に立つ者は権限が持つパワーがとても大きいため、指示しかできない、学べないリーダーが組織全体に及ぼす負のインパクトはあまりに強大です。

あなたが上のイラストの部長の場合、取るべき道は2つに1つです。1つ目の方法は、建設的な意見を妨げるあなた自身をその場から取り除く事。
それがいやならば、建設的で自由な議論の腰を折ったり邪魔をしない事。つまり、自分の意見を声高に訴え、人の意見を遮り否定したりせず、最大限他人の意見を聞くように心掛ける事です。自分が発言する際も、一方的なメッセージだけで終わらせず、何か欠けている所、気になる所がないか、みんなに聞いてみる事です。

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以前「組織文化とリーダーシップ、組織属性との強力な磁力」で説明したように、イノベーションと階層主義は組織文化として真逆の対立する関係にあります(1)。つまり階層主義を維持しつつ新しい学びから事業を創造する事は、双方の組織文化の特性からそもそも極めて困難なのです。

とは言っても、階層主義を組織からすぐに無くすことも不可能でしょう。

ではどうするべきかと言うと、学びや自由で新しいアイデアを期待する場では、極力階層主義の要素を取り払うことです。
先ほどは部長がいなくなればいいと述べましたが、地位や権限の高い者の意見が支配したり優先される前提があると、新しいアイデアは生まれない事を事前に理解する必要があります。そして階層主義の前提が議論を妨げるのを防止するためには、全ての参加者の意見を平等に扱うグランドルールを明確にしておく事も大切です。

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2.自由な意見や対話を妨げる空気と環境

次に学びができない組織の特徴として挙げられるのが、自由な意見や対話を妨げる空気や環境の存在です。
会議では多くは語られないが、会議後の休憩室では活発に意見が交わされる。。。という事は良くありますね。

会議で議論すべき事が会議室では実施できず、会議が終わってから解き放たれたかのように、本来会議中にすべきだった議論が湧きあがる。先ほど説明した階層主義の効果で、役員や上司の威圧的な態度や否定的な発言が、自由な対話や学びを妨げるのみでなく、もし、会議室の重い空気がその閉塞感を助長するのであれば、会議の場所を変えてみてはどうでしょうか?例えば、役員のホームグランドである役員会議室から、従業員のホームグランドである休憩室に変えてみます。
。。。とは言ってもそんなに広い休憩室もないでしょうから(笑)、カフェテリアでやってみる、眺めが良い郊外の施設でやってみる、お花畑でやってみる(笑)。
環境を変える事はそんなに難しくありません。すぐにでも実行可能です。同じ会議室でもホワイトボードを用意して椅子をなくしてやってみるという事なら、お金も手間もかかりません。環境を変える事は簡単で、意外に変化のきっかけになる可能性もあります。

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3.同じ話を何度も繰り返す

この辺りから学べない組織の本質に切り込んでいきます。皆さん、覚悟はよろしいでしょうか?(笑)

皆さんの組織では、結論にたどりつかない同じような議論を何度も何度も繰り返していませんか?
会議後に振り返ってみても会議で決まった事が誰も良く分からない(そもそも振り返りさえされない)。その次の会議でもああだこうだと表面的な会話がなされ、また同じ話を繰り返す。でも結論は出さない。そしてまた繰り返す。ひどい場合は何年にも渡って。

同じ話を繰り返すのは、それ以上問題の核心に踏み込んで議論する勇気がなく、足踏みを続ける事を選んだ結果として現れる症状です。
問題の核心に迫ってしまうのが怖いのです。
問題の核心に迫ると、解決策を知らない自分の欠点や組織のタブーが露呈されてしまうからです。
これからの時代は、複雑な課題の未知なる解決策を求め、みんなで取り組んでいく時代です。そのため、知らないという事は全く恥ずべき事ではありません。分からない事は、ではどうしようか?と考えたり相談したりして、新しい見方ややり方を吸収しながら前に進んでいけばいいのです。しかし、地位とプライドが邪魔をして、知らないという事実を認める事ができず、それを知るために自分の行動を変える勇気もないのです。
一方で足踏みを続ける事はとても楽です。そのため同じ話を繰り返してお茶を濁したり、アイデアが浮かばない事を他人のせいにしておくのです。

学ぶことができない組織は、自己の失敗、改善すべき点も認める事ができません。
学ぶことができない組織にとって、失敗は自己を否定する事であり、評価や名誉を脅かすものであり、失敗を成功へのステップ、欠点を成長や学びのチャンスと捉える事ができません。
以前「変革を阻むUncertainty:不確実さのパワー」でも紹介しましたが、学ぶことができない組織では、未知への世界への好奇心や探求心より、未知への不確実さや不安への恐怖が上回ります。好奇心を持つ勇気がないので学ぶ事もできず足踏みを繰り返すのですが、いずれ周りの人たちに置き去りにされてしまいます。

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4.過剰な丁寧さ、忖度、年功序列、対立の回避

過剰なまでの丁寧さは日本の組織によく当てはまる特徴です。もちろん人と人との関係で、相手を敬う気持ちや丁寧さは必要です。年配者を敬う事も大事でしょう。
しかし、過度の丁寧さや配慮は、物事の本質を直視する事から目を背け、スタイルに意識を向かせる危険性があります。

そもそも、過度な丁寧さは通常、心の底から湧き出る尊敬の気持ちの表現と言うよりは、形式的なものに過ぎません。過度に礼儀正しい組織が友好的という事も決してなく、丁寧さが相互の敬意や信頼が根付いている事を証明する訳でもありません。

そのような組織では、失敗の原因追究や新しい事を学ぶことより、礼儀正しい事、相手の顔を潰さず顔を立てる事が優先されます。行き過ぎた発言をしてメンバーを不快にする事を恐れます。相手を傷つける事を恐れ、反論される事を恐れます。関係を壊す事を恐れ、関係を維持する事が他の事より優先されます。
これを「対立の回避」や「対立の恐怖」、英語では「Fear of Conflict」とか「Fear of Confrontation」と言います。
対立を回避する事は、以前「The Five Dysfunctions of a Team:あなたのチームは機能していますか?」の中で、機能しないチームの5つの特徴の1
つであるとも紹介しました。
若い従業員が議論に新しい視点を持ち込むのは「生意気」であり、その視点を支持しみんなが理解できない話を展開する事は「失礼」とされます。そのため、本来は新しい視点が必要なのに、今までと同じ枠組みの話しかできません。

「対立の回避」は学びの敵です。「アイデアをぶつける」、「意見をぶつけ合う」という言い方がありますが、お互いの意見をぶつけ合うことで、発展的で新しいアイデア、学びが生まれるからです。「対立」のない組織は健全は組織ではありません(2)

対立を回避する組織では、ビジネス環境が変わってきたという話はされます。変わらないといけないという会話も交わされます。しかし、その先の展開がありません。みんな誰かが何か言い出すのを待っていて、取り合えず様子をみるのですが、全員が様子を見るため、結局誰も何も反応しません。仮に、誰かが勇気を出して発言しても、深掘りするのではなくうやむやにされ、結局、元の話に戻っていつもと同じ会話を繰り返すのです。

更に「対立の回避」が色濃い組織は、社内の人間関係の維持が、顧客や外部環境よりも優先される企業でもあります。
繰り返し報道されるデータ改ざんなどの企業の不祥事も、だれも「これ、おかしくないですか?」の声があげられない、顧客価値や信頼、外部環境を無視し、内部環境の秩序を維持する、過剰な丁寧さ、忖度、空気、年功序列、対立の回避を優先した結果現れる現象です。

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5.古い社員教育の仕組み

最後に、学べない組織は、実は「学ぶための制度」である社員教育システム自体にも問題があります。
建前上「社員教育に力を入れています」とうたう日本の会社は多いですね。しかし、社会環境が激変するなか、何十年にも渡って同じ教育システムを続けていて、既にそのシステムが形骸化している事に気づいていないどころか、その社内教育の仕組みそのものが従業員の学びを妨げている事さえあります。

自分のキャリアは自分が作っていく外国のビジネス環境に比べ、日本の企業は、旧来型(昭和型・高度成長型)事業構造では効果的だったOJT(On the Job Training)の弊害のため、未だに、教育は会社が提供するものであり、仕事をやりながら自然に覚えるもの、会社の指示に従ってやっておけばよいものという意識が少なからずあります。

OJT以外の企業が提供する学びの機会である中堅社員向けの研修や、管理職研修、役員向けの研修は機能しているでしょうか?
そもそもそのような研修の目的、つまり、それぞれの研修でどのようなスキルを習得してもらうのかさえ、もはや誰も良く分かっていない(笑)という事はないでしょうか?実は、集まって研修後に酒を交わすのが目的という事もあるかもしれません。

そもそも受動的な学びの機会で学べる事は非常に限られています。学ぶ側に強い学びの意思がなければ、単なる従業員同士の交流機会の提供だけで終わってしまいます。交流機会の提供だけであれば今やオンラインでも可能です。

これからの社員教育には、今後社会や事業の方向性の変化、テクノロジーの発展等によって、組織で必要になるスキルそして必要なくなるスキルを、まず組織自らが明確にする事が必要です。
組織が必要なスキルを明確にしたその次に、従業員に、その
今後組織で必要になるスキルを理解してもらいます。
その上で、従業員にスキルアップの機会の選択肢を与え、従業員自らに何が自分に必要なのかを考えてもらい、自分で判断して選択し自らの意思で学んでいってもらう事が必要です。つまり、未知なる領域に足を踏み入れ、新たな知識を得る喜びを感じる後押しをし、従業員の自律的なキャリア開発を支援するのです。

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参考文献
(1) Kim S. Cameron, Robert E. Quinn, “Diagnosing and Changing Organizational Culture – Based on the Competing Values Framework, Third Edition”, Jossey-Bass, A Wiley Imprint, 2011
(2) Fadi Smiley, “Leadership Guide to Conflict and Conflict Management – Leadership in Healthcare and Public Health“, The Ohio State University Pressbooks

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