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パーキンソンの2つの法則 ①仕事は期限が来るまで増え続ける ②組織は些細な仕事ほど時間をかける

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2024年6月29日
  • Reading time:6 mins read

今回はイギリスの海軍史家パーキンソンの2つの法則を紹介します。1つは「仕事は期限に達するまで増え続ける」という法則で、もう1つは「組織は些細な物事ほど、不釣り合いなまでに時間と労力をかける」という法則です。

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はじめに

久しぶりに製造販売会社A社の登場です!1年ぶりくらいでしょうか??
A社は、創業75年を迎えた製造業の老舗企業です。しかし、かつては格下であったB社やC社が、次々に新たな製品を開発し販路を拡大して業績を大きく伸ばす一方で、A社の業績は右肩下がりです。今や立場は完全に逆転しました。
A社では、今日もまた、次こそは成功する新規製品開発を夢見て、会議に精を出します。

佐藤社長  「鈴木部長、B社に追いつくための新規事業案はできたかな!!」
鈴木事業部長「はい、社長。高宮くん、社長に資料を説明してくれるかな。」
高宮開発課長「社長、お手元の資料の2ページ目をご覧ください。B社に追いつくためには、B社を追い抜くような大胆な改革の覚悟が必要です。お客様の多様化したニーズに他社よりもすばやく対応することが重要です。そのため、アディティブマニュファクチャリングに自律型AIを組み合わせたジェネレーティブデザインを採用し、さらには事業領域を拡大し、医療や宇宙産業向けの製造にも取り組みたいと考えております。」
佐藤社長  「。。。なるほど。ところで、このページの右上の日付は2023年ではなく2024年の間違いだよな。そして、その下の表は単位がずれていないかな?」
高宮開発課長「失礼しました。ご指摘ありがとうございます。」
佐藤社長  「あと、見た感じ、やっぱり文字が多すぎて見ずらいよな。もっと読む側に配慮して読みやすさも考えて資料を作ってくれると助かるな。あと今月から会議資料はA3ではなくA4に統一するという話だったはずだぞ。まあ、いいよ。まずは資料を作り直して、それから調査を進めてまた進捗を報告してください。」
高宮開発課長「。。。はい分かりました。ではそのように致します。」

みなさん、この会話、何かがおかしいのですが、おわかりになるでしょうか?

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パーキンソンの凡俗法則:Parkinson’s Law of Triviality

イギリスの海軍史家であり作家であるC.N.パーキンソン(C.Northcote Parkinson)が1957年に発表した法則に「パーキンソンの凡俗法則:Parkinson’s Law of Triviality」があります。

それは「組織は些細な物事ほど、不釣り合いなまでに重きを置く」という法則です。つまり、組織は取るに足らないことほど、時間と労力を費やすというものです。

この法則の起源は1957年と大分古いですが、デンマークのソフトウェア開発者であるポール・ヘニング・カンプ(Poul-Henning Kamp)によって1999年に紹介され、その後、ソフトウェア開発の分野で広く知られるようになりました。

パーキンソンはこの法則を説明するたとえ話として、原子力発電所の計画を承認する架空の委員会を例に挙げています。

その委員会は、発電所に設置する職員用の自転車置き場の屋根を何色にするかとか、トタン屋根にするかアルミ製にするかなど、理解しやすいがどうでもいい議論には活発に意見を交わして時間を費やすものの、それよりもはるかに重要でより難しい発電所自体の議論では意見もせず、大した時間も費やしません。

なぜなら、自転車置き場は誰でも思い描くことができるため、自分の存在を誇示する意味でも、何か貢献したとアピールする意味でも、あるいは自分の好みを反映させたくて、とりあえず何か言っておきたいからです。しかし、原子炉の内部構造や回路設計の話になると、容易に想像できず、それを知ろうとする気もないため、意見を言うことができず、専門家の指示にただ従うだけになります。

このパーキンソンの凡俗法則は「自転車置き場の屋根現象:bicycle-shed effect」と呼ばれることもあります。

組織は誰にでもできるような小さな決断には必要以上に時間を費やす一方で、重大で複雑な決断には必要な時間をかけないで最終判断を下すのです。
先ほどのA社の佐藤社長もそうですね。難しいが重要な議論には触れないで、表面的で議論の本質とはまったく関係のないところにしか言及していません。

「そんな会社、今時あるかよ~」とお思いになる会社員の方はラッキーです。
悲しいかな、世の中には、この原子力委員会やA社と大差ない会社はごまんと存在します。

しかも、自転車置き場の屋根の色のような、どうでよいが誰にでも意見が言えるようなことに大勢の人たちが意見し始めると逆に収束しなくなります。このような単純な決断は、誰か数人で決めるとか、多数決を取るなどして決めればよいだけです。知識があるという理由だけで、その知識を持つ人すべてが議論や決定に関与する必要はまったくないのです。

そもそも論を言えば、原子力発電所に自転車置き場自体が必要なかったかもしれませんが、この人たちはそのような本質的な問題に気が付くことすらありません。もしその次の委員会の議題が、発電所の事務所の座席表といったより身近なものに移った場合は、議論はさらに白熱し、大量の時間を無駄にすることになるでしょう。

私にも同じような経験がたくさんあります。

以前働いていた職場で、本社の各部署から管理職が20名位集められて、社外向けの報告書に使う写真はどうするとか、表紙の色やレイアウトはどうするとか意見を求められて、「こんなの、マネージャーレベルの人間を大勢集めて決めることじゃないだろ!」と思ったことがあります。しかも、最終的に決めた写真やレイアウトをさらに社長が確認して承認するのです。
「こんな大事な時期に、他に山ほど大事な仕事があるだろっ」と突っ込みたくなりましたが、多くの経営者は、重大な決断が必要となる仕事ほど怖がって手を付けられず、簡単な仕事でお茶を濁しておくのです。
本来、よく知らない、理解できない問題こそ突っ込んで詳細に調べて、判断材料を集めて決断しなければなりませんが、そもそも「知らない」という事実を受け入れることができないため、その先に進むことができません。

みなさんにはそのような経験はありませんか?
どうでもいい社内手続きやくだらない管理業務にやたら時間をかけている割には、本来やるべき重要な仕事にはまったく手を付けていないというようなことはありませんか?

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パーキンソンの法則:Parkinson’s Law

C.N.パーキンソンは、この「パーキンソンの凡俗法則」を発表する2年前の1955年に、違う法則であり、また、より知られた法則である「パーキンソンの法則:Parkinson’s Law」をエコノミスト誌に紹介しています。5ページ程度の記事で、全文がこちらのリンクから読むことができますのでご関心のある方はどうぞご覧ください。

パーキンソンの法則は「仕事は与えられた時間を埋めるために拡大する」という法則です。つまり、仕事は期限に達するまで増え続けるというものです。

パーキンソンによれば、与えられた時間が、実行すべき作業に必要な時間になります。
特に役所仕事やデスクワークはそうです。つまり、同じ内容の仕事でも1週間の期限が与えられれば1週間でおこない、半年の期限が与えられれば半年でおこなうのです。期限が延びるほどだらだら仕事をしたり、無駄な作業を積み重ねるのです。

そして、その仕事量と、作業を実行するスタッフの数との間にも、ほとんど相関はありません。そして、仕事の量が増えようが減ろうが、スタッフの数は増え続けます。

パーキンソンは、1914年と1928年の海軍の統計値を引用しています。
1914年から1928年にかけて、海軍の要員は32%、艦艇は68%も減少しました。しかし、事務職員はその14年間に78%も増加したのです。本来必要な最前線で手を動かす現場要員は減る一方で、減らそうと思えばいくらでも減らせるオフィスワークを行う職員はむしろ増え続けるのです。

同じような現象は、以前本サイトの記事「クソどうでもいい仕事と、週4時間だけ働く超合理的な仕事」でも取り上げました。
私たちは100年前と同じように9時から5時まで仕事をしています。技術の進歩や作業の合理化や原価低減によって、最前線で働く人たちの数は削られてきました。しかし、それと反比例して、オフィスで働く人たちの数は増え続けているのです。
オフィスで働く人たちが年々生産的になっているかというとそうでもありません。多くのオフィスワーカーが時間を持て余していたり、本来する必要のない仕事を捻出して仕事をした気になっています。お互いがお互いに仕事を増やし合い、本来はもはや1日8時間週5日も働く必要がないのに、8時間の時間を仕事で埋めようとするのです。

パーキンソンは、官僚組織を強烈に皮肉り、パロディ化するため、次のような数式まで導き出しました。

それぞれの記号は次を意味しています。
x:毎年必要となる新しいスタッフの数
k:部下の任命を通して昇進を図ろうとするスタッフの数
m:部門内で議事録に対応するために費やされる人的時間数
P:任命時の年齢から退職時までの年数
n:有効に機能している管理ユニットの数

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さいごに

IKEAの創業者であるイングヴァル・カンプラード(Ingvar Kamprad)は、かつてこう言いました。(1)

1日を10分ずつに分け、その10分をできるだけ無駄にしないようにすれば、驚くほど多くのことを成し遂げられる。

例えば、一般的な会議の時間は、必要かどうかに関係なく1 時間です。しかし、会議を10分を基準にすれば、どれだけ私たちは合理的に時間を使うことができ、どれだけの成果を挙げることができるでしょうか。

他にも仕事の合理化につながるありとあらゆる様々な手法が世の中には存在します。その中のいくつかは導入しようと思えば簡単に導入することができます。しかし残念ながら、そのような合理化の手法を社内に取り入れようとしても、そもそも取り入れる気がさらさらない組織には取り入れることはできないのです。

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参考文献
(1) Elizabeth Benton, “The Next 10 Minutes“, Primal Potential, 2018/1/30.

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