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できる経営者は自分を知り、できない経営者は自分を知らない self awareness in leadership

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2024年6月29日
  • Reading time:8 mins read

多くの経営者たちが従業員の一挙一動に鋭い目を向けます。しかし、自分自身にはその鋭い目は向けず、自分と向き合うことを避けます。なぜならば、自分と向き合えば、本当の自分を知ってしまうからです。それまで被っていた仮面が剥がれるからです。自分を知ることができない経営者は、自らが率いる人たちを知ることも、組織を知ることもできません。

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はじめに

前回、「なぜ私たちは自分自身に嘘をつくのか?」という記事を書きました。自分自身にうそをついているということは、本当の自分から目を背けているということです。そして、多くの人たちが実際に本当の自分から目を背けています。

目を背けているのは、経営者や組織のリーダーたちも同じです。
いいえ、一般の人たちよりもむしろ、経営者たちの方が自分と向き合うことを避けているかもしれません。自分と向き合わないということは自分を知らないということであり、自己認識や自己意識がないということでもあります。

多くの組織は、自分を知らない、知ろうとしていない人たちによってコントロールされています。
自分を知らない経営者やリーダーは、他人をよく知ることもできません。自分を知らない経営者やリーダーは、エゴや利己心に支配されています。権力やステータスに溺れています。自分を知らない経営者やリーダーは、組織の現状は何とか維持できるかもしれませんが、組織をその上のレベルに引き上げることはできません。

今回はリーダーシップと自己認識について見ていきます。

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自己認識の勘違い

多くの真のリーダーや専門家たちが、リーダーが成功するための重要な前提として「自己認識」を挙げています。
「自己認識」とは「自分自身を知っていること」であり、「自分を俯瞰できること」であり、「心の奥底にある隠された自分を知ること」です。英語では「self awareness(セルフ・アウェアネス)」と言います。

そして、世の中では、専門家などによって自己意識を高めるための数多くの手法やテクニックが紹介されています。検索すればインターネットでもそのような情報はいくらでも見つけることができます。それらの手法やテクニックには次のようなものがあります。

  • エモーショナル・インテリジェンスを高める
  • エンパシー(他人に共感する力)を高める
  • マインドフルネスを高める
  • 自己効力感を高める
  • 自分に正直、誠実である
  • 謙虚である、自己を内省できる
  • 話す能力より聞く能力を高める
  • 批判を受け入れることができる
  • 自分を律することができる
  • 一貫性があり信頼できる
  • 自分の弱さや失敗を認めることができる
  • 柔軟性や適応性を高める
  • 自分が大切にする価値観を知る
  • 情報を隠さず、できるだけオープンにする
  • 学習し続ける成長のマインドセットをもつ

しかし、残念ながら、自己認識の浅い人がそれらの方法を表面的になぞったとしても、決して自己認識を高めることはできません。なぜなら多くの場合、本当の自己認識は「自分が考える自己認識」よりももっと深いところにあるからです。

多くの人はそこに達することができません。なぜならそこにたどり着かないように心の中に自ら高い障壁を設けているからです。そして、自分が設けた高い障壁の外側にある自分の表面的な姿だけを見て、自分を知っていると勘違いしているからです。

組織心理学者のターシャ・ユーリック(Tasha Eurich)と研究チームは、5,000人近くの参加者を対象とした10回に及ぶ調査を含む大規模な研究で、自己認識とは本当は何なのか、なぜ自己認識が必要なのか、そしてどうすれば自己認識を高めることができるのかを調べました。その結果、ほとんどの人が自分は自己認識していると信じているにもかかわらず、実際にその基準に当てはまる人は10%から15%しかおらず、自己認識はとても稀な資質であることを発見しました。(1)

少なからずいるのは、「リーダーに必要な特性は、自己認識であり、エンパシー、エモーショナル・インテリジェンスである」と言葉を知っているだけなのに我が物顔の人たちです。ただ知っていると思っているだけで、それを1ミリも実践していないのに、「私は知っている」「私はあなたたちとは違う」と勘違いしている人たちです。もちろん「知らないこと」と「知っていること」には大きな差があります。しかし「知っていること」と「それを実践していること」との間にも大きな溝があります。

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本当の自己認識とは?

自分を理解していると思っている人のほとんどが自分を理解していません。自分の心の奥底にあるブラインドスポットに届いていません。

自己認識があるということは、その見えていないものを見るということです。自分の特性、様々な思考や感情をもたらす心の奥底にあるものを知り、それを受け入れていることです。

しかし、自らが心の中に設けた障壁の内側にある感覚に注意を向けそれを知ることは、見たくなかった自分を見るということであり、はじめは痛みをもたらします。そのため、多くの人はその痛みを避けるために障壁を設けているのです。障壁を設けて見て見ぬふりをしているのですが、逆にそれに完全に支配されているのです。そして、その内側にあるものに振り回され、問題を引き起こされているのです。

その内側にあるものに抵抗せず、そこにあるものをただ知るのです。古いレコードのように頭の中に繰り返し現れては、ぐるぐる再生される自分の声に気付くのです。そして、それをただ受け入れるのです。心を乱されず、それを自分のアイデンティティーにすることもせず、観察者であり続けるのです。心を客観視する存在となるのです。自分を客観視できれば、思考や感情の裏側にある、より深い自分を感じることができます。これが自己認識です

自分の内にあるものとつながることができれば、利己的な自分から離れ、無私の自分と一体化します。それによって、意識と感覚と思考がより研ぎ澄まされます。チームへのフォーカスと意思決定の質が向上し、メンバーからの信頼とエンゲージメントが高まります。これが自己認識の力です

自己認識は終わりのない旅です。自己認識にノルマはありません。自己認識に十分だというレベルもありません。いくらでも満たせる燃料タンクのようなものです。しかし、しばらく放っておくと、満たされていたはずの燃料がいつのまにかなくなっていることがあります。自己認識は、繰り返し繰り返し訪れなければならない場所でもあります。

重要なのは、本当の自分がどこにいるのか、何を望んでいるのか、どこに向かおうとしているのかを知ることです。

成功する真のリーダーたちは自己認識に基づいています。自己認識があるおかげで、自分のリーダーシップスタイルを判断し、適応させることができるようになります。あらゆる機会に自分がどう成長しているのかを自信を持って知っています。また、自分が知らなかった偏見や先入観を理解することもできます。自分と周囲の人たちの強みを生かして組織を伸ばしていくことができます。

To know yourself, you must sacrifice the illusion that you already do.
     ~ Vironika Tugaleva

自分自身を知るためには、すでに知っているという幻想を犠牲にしなければならない。
     ~ ヴェロニカ・タガローヴァ

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自己意識のないリーダーたち

世の中には自分を知らないリーダーたちがたくさんいます。

多くの経営者、リーダーたちは、巨大な風船のように膨れ上がった自らのエゴや利己心に完全に支配され、自分自身を見失っています。いかに自分がすぐれているかを証明するために、長く伸び切った天狗の鼻を自慢したり、地位を利用して周囲のひとたちをこき下ろしたり、自分の責任をより弱い立場にある従業員に転嫁します。
多くの経営者が、自分が失敗したり、言い間違えたりしたときには、何事もなかったかのように振る舞います。しかし、従業員の失敗に対しては、容赦なく厳しくあたります。

多くの経営者たちが従業員の一挙一動に鋭い目を向けています。しかし、自分自身にはその鋭い目は向けません。本当のリーダーは他の誰に対してよりも、自分へのハードルを高く設定します。そして、本当のリーダーは従業員をマイクロマネージするのではなく、目標達成のためのタスクや優先順位や連携に細かな目を向けます

リーダーは自らを最も知らなければならない人たちです。自分が知らないということも知らなければなりません。しかし、多くのリーダーが誰よりも厚い覆いを自らに被せて、自分を知ることを拒否しています。本当の自分がそれほど優れていないことを他人に知られてしまうことを恐れて、虚勢を張ります。

リーダーは自分が持つ影響力を最も知らなければならない人たちです。しかし、多くのリーダーがそれを知らず、不用意な発言で周囲の人たちの口をとざさせ、貴重なフィードバックを受け入れることを拒み、チームの生産性を著しく棄損するのです。

自分を知るためには、建設的なフィードバックを受け入れ、自分がどのように認識されているかを知ることが効果的です。そのためには、チーム内で少なくとも 1 人は、包み隠さず正直に意見する人、必ずしも聞きたくないことを言う勇気のある人をおかなければなりませんが、多くのリーダーはそのような人間を近くにおきたくありません。本当の自分を教えてくれる貴重な存在は煙たがり、エゴを喜ばせるイエスマンを近くにおきます。

リーダーたちの膨れ上がったエゴはイエスマンが大好きです。エゴは他人から批判されることや自分の弱さを指摘されるのを最も嫌います。エゴは本当の自分を知りたくありません。チームが機能するためには誠実なコミュニケーションが必要ですが、誠実さはエゴの天敵です。

社会における会社の役割が少しづつ変化する中、組織のリーダーには変化を引き起こし、従業員たちを進むべき道に引き連れていくことが求められます。しかし、変化もエゴの天敵です。エゴは膨れ上がった偽りの自分の姿が大好きで、その自分の姿を変えたくないのです。

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リーダーに求められる自己意識

2019 年、超党派のNPO団体であるアメリカの公共サービスパートナーシップ(The Partnership for Public Service)は、連邦政府のリーダーシップの基準を設定した「公共サービスリーダーシップモデル(Public Service Leadership Model)」を発表しました。このモデルは、連邦政府で働く人たちが能力を最大限発揮し、リーダーとして各機関のミッションを推進する上で注力すべき2つの核となる価値観として①公共の利益へのコミットメントと②公共からの信頼を掲げ、それを支える4つの重要な能力として、①自己認識、②他者の関与、③変化の主導、④成果の達成を特定しています。(2)

このリーダーシップモデルに限らず、自己認識が組織を導く立場にあるリーダーたちにいかに重要であるかは数多くの人たちがすでに指摘しています。そしてそれらはとても的を得ています。しかし、悲しいかな、それを受け止めるべき側の経営者やリーダーのほとんどがその真の意味を理解できていないのです。そして、理解できていないのに、何となく理解しているつもりになっているのです。それは自分自身を知らないからです。

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さいごに

私たちは他人のことはよく見えます。他人の弱点はさらによく見えます。リーダーにはメンバーの弱点がさらによく見えます。
私たちは自分のことはよく見えません。自分の弱点はあまり見えません。リーダーには自分の弱点がまったく見えません。

組織がうまく動かない理由は、リーダーにはよく見えているメンバーの弱点にあるのではなく、リーダーにはまったく見えていないリーダー自身の弱点にあるのです。組織が成果を挙げられない理由は従業員たちにあるのではなく経営者にあります。リーダーたちが最初に評価しなければならない人物はチームのメンバーではなく自分自身です。リーダーが初めに導くべきなのはチームのメンバーではなく自分自身です。

Leadership is trust, not a right.
     ~ John C. Maxwel

リーダーシップとは権利ではなく、メンバーからの信頼である。
     ~ ジョン・マクスウェル

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参考文献
(1) Tasha Eurich, “What Self-Awareness Really Is (and How to Cultivate It) It’s not just about introspection“, Harvard Business Review, 2018/1/4.
(2) Robert McDonald, Douglas Conant, Andrew Marshall, “A Nonpartisan Model for Developing Public-Service Leaders“, Harvard Business Review, 2020/4/20.

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