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チェンジコミュニケーションその2:コミュニケーションプラン

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2024年3月30日
  • Reading time:9 mins read

チェンジコミュニケーションの基本は5W1H(Who誰が, Whenいつ, Whereどこで, What何を, Whyなぜ, Howどうやって)にWhom(誰に)を付け加えた6W1Hです。一番見落とされるのが「Why=なぜ」です。普段でも大切なコミュニケーションの場面で、そのコミュニケーションで達成したい目的は何か意識すると効果的なメッセージにする事ができます。

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前回、チェンジコミュニケーションその1で、コミュニケーションが重要な理由やモデルなどコミュニケーションの基本的な部分を紹介しました。
今回はチェンジマネジメントにおけるコミュニケーションプランを見ていきましょう。

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そもそもチェンジコミュニケーションとは何か?

チェンジマネジメントは、人や組織が現在の状態(As Is)からより望ましい将来の状態(To Be)への移行を支援します。チェンジコミュニケーションは、そのためにコミュニケーションが支援することです。

以前、下図の変革のステップ「認知 ➡ 比較 ➡ 支持 ➡ オーナーシップ」を紹介しました。

図:チェンジ・コミットメント・カーブ(認知 ➡ 比較 ➡ 支持 ➡ オーナーシップ)

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変革のステップは、まず変革の取り組みを「認知」し、現状と変革のメリット・デメリットを「比較」した上で、変革を「支持」し、「オーナーシップ(エンゲージメント・コミットメント)」を持ってステークホルダーが自分事として携わることで変革が実現できるというステップを示したものです。
チェンジコミュニケーションは、人がこのコミットメントカーブのステップを昇っていくサポートをします。
変革の取り組みは、上図のオーナーシップの段階までたどり着いて初めて変革が軌道に乗り始め、その後その変化を組織に定着させ、更に当初設定した変革のそもそもの目的を達成するまでの更なるステップがあります。コミュニケーションはその最後のステップまで継続的に必要です。

また、変革を成功させるためには、上記のオーナーシップ(エンゲージメント・コミットメント)のみでなく、下図の組織文化、組織と人のキャパシティ(能力)も現在の状態(As Is)から望ましい将来の状態(To Be)に移行する必要があります。コミュニケーションは、文化の変革やキャパシティ(能力)向上においても不可欠です。

図:変革に必要な3要素:文化、オーナーシップ、キャパシティ(能力)

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なぜコミュニケーションのプランを立てないと行けないのか?(1)(2)

  • 計画によって、誰が誰にいつどのようなメッセージを伝えるか、コミュニケーションの意図を明確にします。
  • 利用可能なコミュニケーションのチャンネル(メディア、媒体)の選択肢を事前に確認し、ステークホルダー毎に最適のメッセージを最適なチャンネルで発信するのに役立ちます。
  • チーム内でコミュニケーションに関する認識を統一でき、チームでより良いコミュニケーションを作り上げる事ができます。
  • チェンジコミュニケーションは長期に及びます。変革の過程で必要になるメッセージを事前に理解し、準備しておくのに役立ちます。
  • 計画はコミュニケーションの効果・効率を高め、持続させます。
  • 最初に計画する事で、後の段階で時間と労力を節約できると共に、間違ったメッセージを送ったり、意図しない混乱を避ける事ができます。

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いつコミュニケーションのプランを立てるのか?

コミュニケーションの計画は、チェンジマネジメントの計画時に行います。
ただし、コミュニケーションプラン作成の前段として、ステークホルダーの特定を終了している必要があります。チェンジコミュニケーションはステークホルダーに対するコミュニケーションだからです。
ステークホルダー以外に対するコミュニケーションを計画することはありません。もしそのような事が生じた場合は、最初に全てのステークホルダーの特定できていなかったことを意味します。

チェンジマネジメントは、「one-size-fits-all」の万能型のマニュアルで全てが解決するようなアプローチではありません。 組織構造、組織文化、向き合う課題等によって、対応がひとつひとつ異なります。また、取り組みを進めるにつれて新たな課題が浮き上がってきます。
チェンジマネジメントは反復的なプロセスです。 コミュニケーションプランも最初に作って終わりではなく、取り組みを進めるに並行して、振り返り、見直していかなければなりません。

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コミュニケーションプラン

基本は5W1Hです。5W1Hは、Who(だれが)When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)を指し示す言葉です。あらゆる場面において適用可能なビジネスの基本であるのみならず、教育現場でも使われますので、ご存じの方は多いかと思います。
ただし、チェンジコミュニケーションでは、5W1HにWhom(だれに)を加えた6W1Hになります。だれが(Who)だれに(Whom)コミュニケーションを取るのかは、チェンジコミュニケーションではとても重要です。

コミュニケーションプランは次のステップで進めていきます。

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1.コミュニケーションの目的を明確にする (Why)

過去の記事でも、「何事においても目的を明確にするのが大事」としつこい位繰り返していますが、チェンジコミュニケーションについても同様です。何のためにコミュニケーションを取るのか?コミュニケーションにはそもそも達成したい目的があるはずです。チェンジコミュニケーションがとりとめのない漫談である事はあり得ません。
そのコミュニケーションで何を達成しようとしているのか?

変革の取り組みの目的は、コミュニケーションプラン作成段階前には既に明らかになっています。コミュニケーションについても、目的を明確にする必要があります。その目的は明確であると共に、現実的である必要もあります。変革の取り組みの各段階において、以下の様々な目的のコミュニケーションが行われます。

  • 信頼関係の構築
  • ステークホルダー間で合意を形成したい
  • スキルアップ、メンタリングのためのコミュニケーション
  • 危機感を醸成する
  • 変革への認知を高める
  • 変革への支持を高める
  • 新しい考え方をもたらす
  • 新しい行動を促す
  • エンゲージメント、参加意欲を高める
  • プロジェクトの内容やステップの説明と共有
  • 新しいツールの使い方の説明
  • 文化の形成  。。。等々

目的に対するコミュニケーションの役割は何か?
コミュニケーションは最も大事な要素のひとつですが、コミュニケーションが全ての課題を解決するわけでもありません。メッセージだけでは人は変わらない事も多く、コミュニケーションは変革に重要な道具であるものの、一方で必要な道具の一つに過ぎない場合もあります。前回の記事で、コミュニケーションの機能を紹介しました。その機能に見合った役割を確認します。

つまり、コミュニケーションの目的を意識します、そしてその目的に対するコミュニケーションの役割を意識します。
チェンジコミュニケーションに限らず、コミュニケーション全般において、その目的と役割を意識する事はコミュニケーションスキルの向上に役立ちます。

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2.誰にメッセージを送るのかを明確にする (Whom)

メッセージの送り先は事前に特定したステークホルダーです。その中の誰に向けて送るメッセージなのか明確にする事で適切なコミュニケーションを計画することができます。メッセージはグループごとに変える必要があります。また、複数のステークホルダーに同時に同じメッセージを送ることもありますが、グループごとに使用するチャンネル(メディア、媒体)や内容を変えた方が効果的な場合も多いです。

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3.鍵となるメッセージを明確にする(What)

メッセージは、受け手に関連性があり、受け手が理解でき、偽りがなく信頼でき、記憶に残るようなメッセージである必要があります。受け手に関連性のないメッセージを送ってしまうのはよく起きる間違いです。

コミュニケーションの目的に応じて、具体的なメッセージを用意します。メッセージは、ステークホルダー毎に変わります。メッセージの受け手が、自分にどう影響するのか、どういうメリットがあるのか感じられるメッセージである必要があります。
ステークホルダーから変革に対するオーナーシップ(エンゲージメント・コミットメント)を得るためには、個人レベルでやる気になってもらわなればなりません。この個人レベルのやる気は他人が強制することができません。頭で理解しても、心が付いていかなければ、労力を注ぎ込むことはできません。心配を払拭し、やる気を引き出すような個人個人の心に訴える的を得たメッセージが必要です。
つまりメッセージは、送り手の視点からのみでなく、受け手の視点と受け手の気持ちで考えることが大切です。

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4.正しい人からコミュニケーションを発信する (Who)

あなたが変革の取り組みの担当チームやチェンジマネジメントチームのリーダーだとしても、あなたが組織に対するコミュニケーションの発信者になるわけでありません。コミュニケーションに応じて、最も適切な人に発信してもらいます。

従業員は通常、変革について、会社のリーダーや経営者、直属の上司から聞きたいと思います。自分の業務の変更を、隣の部署や、社内の噂話、部下から聞きたいとは誰も思わないですね。

変革スキルのトレーニングなどでは、チェンジマネジメントチームから主体的に発信することもあるでしょう。しかし、通常は、会社のトップからチェンジコミュニケーションがスタートし、組織の階層を下っていくのが理想です(ただし、会社のトップにコミットメントがない、もしくは変革に拒否反応を示している場合は違う手順を考える場合もあります)。

チェンジマネジメントチームやチェンジスポンサー(組織で変革を支持・推進する経営者や上級管理職)は、変更の背後にある理由を理解しますが、組織を下るに従って、メッセージは正確に理解されなくなっていきます。
タワーズワトソン社の調査によると、上級管理職の68%は組織の大幅な変革の理由について「メッセージを受け取っている」と述べていますが、その数字は中間管理職では53%、最前線の監督者では40%にまで低下します。(3)(4)

変革の目的が経営者や上司に十分に説明されていないと、彼らが自信を持って変革について話すことができません。
従業員は自信がなく、不安を感じながら話す人を信頼することはできません。経営者のみならず、部署やチームを指揮する管理者、チームリーダーを教育することは重要です。経営者は、変革の理由と方法だけでなく、変革が従業員に具体的にどのように影響するかも理解する必要があり、更に重要なのは自らの言葉で話し、自ら行動に移すことです。従業員は経営者が本気か口だけか、誠実か誠実でないかを、経営者の行動からすぐに見抜きます。

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5.適切なコミュニケーションの手法(チャンネル、メディア)を設定する(How)

変革のコミュニケーションでは、同じ趣旨のメッセージを何度も何度も繰り返す場面があります。変革の取り組みは、新しい考え方や行動の導入ですが、これは一度説明して「はい、次から自分でやってみて下さい」「はい、分かりました」とはいかないからです。繰り返し繰り返し、1つの媒体に頼らず様々な媒体を利用して、メッセージの角度も変えたりして、働きかけていかなければなりません。
そのためにも、初めに利用可能なコミュニケーションのチャンネル(メディア、媒体)を確認しておく必要があります。

また、コミュニケーションのスタイルや好みは、世代や人によって異なります。最も効果のあるチャンネルを通じて働きかけることが重要です。各チャンネルには長所と短所があります。特に近年コミュニケーションのチャンネルの選択肢は大幅に増えており、それに従って世代間ごとに好むメディアも異なってきています。対面での双方向コミュニケーションが理想的ですが、新しい双方向のチャンネルであるソーシャルメディアやビジネスチャットも積極的に導入を検討して下さい。折角時間をかけて良いメッセージを作り上げても、チャンネルを間違ってはその効果を発揮できません。また、個別のコミュニケーションが必要な場合もあれば、複数のステークホルダーを集めることが必要な場合もあるでしょう。

下図は、ステークホルダー・エンゲージメントの手順で説明した、ステークホルダーのエンゲージメントのレベルと手法です。このモデルは、そのままコミュニケーションの手法にも当てはまります。コミュニケーションをどのレベル、どの手法にするかは、ステークホルダーによって異なり、また同じステークホルダーでも取り組みの段階によって異なります。

図:ステークホルダーのエンゲージメント・レベル
(adapted from IAP2 Spectrum of Public Participation, 2018(5))

図:ステークホルダー・エンゲージメントの手法

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6.フィードバックを繰り返す

上図のステークホルダーのエンゲージメントレベルでみられるように、一方向のコミュニケーションは何かを通知する場合が中心で、その他のコミュニケーションでは双方向コミュニケーションが主体になります。
最高の変革の実装プロセスやプログラムを設計したつもりでも、変革で影響を受ける人たちの話を聞いていなかったり、コミュニケーションが一方向で完結している場合は、その時点ですでに失敗しています。

当り前の事ですが、双方向のコミュニケ―ションが必要な場合は、双方向のコミュニケ―ションを可能にするチャンネルを使用します。しかし、本来双方向のコミュニケ―ションが必要な場面で、単一方向のチャンネルを使って一方的にメッセージを発信してしまう事のなんと多い事でしょう。

大量の電子メールや従来型のイントラネットを介してのみ変化を伝えている組織は、従業員の注目を集めるのに失敗しています。
従業員が自分の声を共有できるようにするのはもちろん、変革のコミュニケーションに従業員を参加させる必要があります。従業員が関与すればするほど、取り組みはより多くの賛同を得られるでしょう。

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次回「チェンジコミュニケ―ションその3:ベストプラクティス」で、チェンジコミュニケーションのその他のポイントを紹介していきます。

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参考文献
(1)  “Developing a Plan for Communication”, The Community Tool Box, a service of the Center for Community Health and Development at the University of Kansas
(2) “Top 10 Reasons for Creating a Communications Plan“, Network for Good, 2009/1

(3) Victor Lipman, “New Study Explores Why Change Management Fails – And How To (Perhaps) Succeed“, Forbes, 2013/9
(4) “2013-2014 Change and Communication ROI Survey Report, How the fundamentals have evolved and the best adapt”, Towers Watson
(5) International Association for Public Participation, IAP2 Spectrum of Public Participation, 2018
(6) Khadim Batti, “7 Best Practices in Change Management Communication“, whatfix, 2019/9
(7) Norm Schultz, “Communicating Change: How to Create a Communication Plan“, Free Management Library, Authenticity Consulting, LLC, 2011/6

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