You are currently viewing デジタルトランスフォーメーション(DX)とチェンジマネジメント:DXは技術でなく経営課題

デジタルトランスフォーメーション(DX)とチェンジマネジメント:DXは技術でなく経営課題

  • 投稿カテゴリー:Change Management
  • 投稿の最終変更日:2021年1月14日
  • Reading time:5 mins read

デジタル・トランスフォーメーション(DX)は、取り組みを進めている企業と、上手く進められない企業の格差が広がりつつあります。DXを単なるIT導入の技術課題ではなく経営課題と捉え、企業⽂化・組織改革として対応しなければ恩恵は享受できません。

~ ~ ~ ~ ~

DX導入を、既存業務へのIT導入や置換、業務効率化と捉えている会社は多いかと思います。IT化によって多少の業務効率化を達成できても、それはDXの本質ではありません。
もっと上の視点からDXを見据え、企業・組織の改革ツールとして捉えている会社との格差はどんどん広がっていきます。

DXの行政の旗振り役である経済産業省は、2018年9月「DXレポート」にて、DXを以下のように定義しています。

『企業がビジネス環境の変化に対応し、データとデジタル技術を活⽤して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変⾰するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業⽂化・⾵⼟を改⾰し競争上の優位性を確⽴すること』

この定義で、明確に、デジタル技術は「活用」するものであり、変革・改革するべきは「ビジネスモデル、組織、プロセス、企業⽂化・⾵⼟」とされていますね。

また、同じく経済産業省の2019年7月「DX推進指標」とそのガイダンスでは、DXが進まない要因を次のように指摘しています。

経営者がDXの必要性を認識し、デジタル部門を設置するなどの取組が見られるものの、実際のビジネス変革にはつながっていないという状況が、多くの日本企業に見られる現状と考えられる。
こうした現状において、具体的な課題として、例えば、以下のような点が指摘されている。

1) 「顧客視点でどのような価値を創出するか、ビジョンが明確でない」
。。。Whatが語られておらず、ともすると、「AIを使ってやれ」の号令で、Howから入ってしまっていることにある。(また、業務改善・効率化にとどまってしまっているケースも多い。)

2) 「号令だけでは、経営トップがコミットメントを示したことにならない」
。。。ビジネスモデルや業務プロセスを変革し、企業文化を変革していくためには、その変革を実行し、根付かせるための経営としての『仕組み』を明確化し、全社で持続的なものとして定着させることが必要である。
具体的な『仕組み』として、組織を整備し、権限を委譲しているか、適切な人材・人員をアサインしているか、予算を十分に配分しているか、プロジェクトや人事の評価の仕方を見直しているか、必要な人材の育成・確保を行っているかといったことが必要となる。

3) 「DXによる価値創出に向けて、その基盤となるITシステムがどうあるべきか、認識が十分とは言えない」
。。。ITシステムの話になると、経営者はIT部門に任せてしまうケースが多い。DXによる価値の創出に向けてITシステムをどのように見直すのか、経営者自らがリアルに認識し、必要な打ち手を講じていくことが不可欠である。

そして、DXの推進に際し、上記の課題やそれを解決するために押さえるべきツールとして下図のように「DX推進指標」を提起しています。

図:「DX推進指標」の構成
(2019年7月経済産業省「DX推進指標」とそのガイダンスより抜粋)

「DX推進指標」の構成

~ ~ ~ ~ ~

私は以前、改革を実現するには、組織改革に対するレディネス(自信)が必要であると説明しました。
「レディネス」とは直訳すれば「準備」で、ある課題対応や施策実行に対して、知識、経験、興味、心身などの必要な条件が整っているかどうかの指標です。
また、レディネス(自信)は下図のように、①文化、②オーナーシップ(コミットメント)、③キャパシティ(能力)の3要素からなると紹介しました。

レディネス(準備)が高まれば変革に対する個人と組織のコンフィデンス(自信)が高まります。
変革のレディネスが低く、それに比べて変革のスコープが大きすぎると、変革に十分な能力や自信がなく成功しません。

上記の経済産業省の「DX推進指標」の各項目も、下図のように①文化、②オーナーシップ(コミットメント)、③キャパシティ(能力)のレディネスの3要素に当てはめる事ができます。DXは組織の変革・チェンジですから、チェンジマネジメントの手法を使う事によって成功の確率を高める事ができます。

~ ~ ~ ~ ~

2019年3月のHarvard Business Review「Digital Transformation Is Not About Technology」でも、2018年に1.3兆米ドルがDXに費やされたが、9,000億米ドルが無駄となり、「DXの失敗はテクノロジーの問題ではない」と下記の5つの重要な教訓(Lesson)を紹介しています。

Lesson 1: DXに投資する前にビジネス戦略を考える事
DXで組織のパフォーマンスを向上させることを考えているリーダーは、特定のツールをすでに念頭に置いていることがよくあります。。。しかし、DXは、より上位のビジネス戦略によって導かれる必要があります。。。(成功例では)具体的な目標が設定された後に、それを実現するためにどのツールを採用するべきか決定されました。。。

Lesson 2: 社員を最大限活用する事
変革(DXおよびその他の変革)を求める組織は、しばしば外部コンサルタントを頼りますが、コンサルタントは「ベストプラクティス」の名の下に、「one-size-fits-all」の画一的なソリューションを提案しがちです。
私たちのアプローチは日々の業務で何がうまく行き何がうまく行かないか良く知る内部の人間を頼りにします。。。新技術が失敗するのはテクノロジーの欠陥ではなく、事情に精通する内部情報を軽視するためです。

Lesson 3: カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を外からインプットする事
DXの目標が顧客満足度の向上である場合、顧客からの詳細なインプットを伴う診断フェーズを実施しておく必要があります。。。

Lesson 4: 仕事がなくなるのではという従業員の不安を理解する事
従業員は、DXが自分の仕事を脅かす可能性があると感じた場合、意識的または無意識のうちに変化に抵抗する可能性があります。 DXが効果的でないことが判明すれば、経営陣は最終的にその努力をあきらめ、自分達の仕事は救われるだろうと考えます。 リーダーは、従業員の懸念を認識し、DXのプロセスは従業員が将来の市場に合わせて専門知識を向上させる良い機会であると強調することが重要です。

Lesson 5: シリコンバレーのスタートアップ企業の文化を導入する事
シリコンバレーのスタートアップは、アジャイルな意思決定、素早いプロトタイピング、フラットな組織構造で知られています。 DXのプロセスは本質的に「不確実」です。変更を暫定的に行い調整していく必要があります。 意思決定は迅速に行う必要があります。 組織全体のグループが参加する必要があります。 その結果、従来の組織階層は邪魔になります。 従来の組織からある程度離れたところでフラットな組織構造を採用するのが最善です。。。

~ ~ ~ ~ ~

2018年のPMIとForbes Insightsによるレポート「The C-Suite Outlook: How Disruptive Technologies are redefining the Role of Project Management」によると、537名の企業幹部への調査の結果、組織の80%近くが破壊的イノベーション技術を使用して過去1年間で変革の取り組みを実施したものの、4分の1だけが目標に対して目に見える恩恵を得たとしています。
高い成果を達成した上位11%の会社幹部は以下を重視したと述べています。

  • 継続的な変革を促進する文化を尊重する
  • 混乱の時代には、チェンジマネジメントが重要であることを理解する
  • 破壊的なデジタル変革を行う際は、「破壊者」または「先駆者」として自己認識する

また同レポートは、破壊的イノベーション技術を利用して組織変革の目標を達成又は上回った要因として下表の項目を挙げています。

~ ~ ~ ~ ~

今回は引用が多かったですが(汗)、DXは単なるIT技術の導入ではなく組織変革です。IT導入を「小さな変革」として、その後のより大きな変革に繋げる事はとても有効ですが、それ自体を目標にしてはいけません。
変革の技術的側面を担うプロジェクトマネジメントと、人的側面を担うチェンジマネジメントの両輪で対応する事が、変革の成果達成の確率を上げるために重要です。
チェンジマネジメントのノウハウが体系的にある日本企業はまだ少ないですが、事業を通してプロジェクトマネジメントのノウハウが社内に既にある会社は多いと思います。
しかし、残念ながら、DXやシステム導入をIT部門や管理系部門中心に行い、従来から社内にあるプロジェクトマネジメントのリソース、ノウハウが生かされていないケースもあります。また逆に製造部門や技術部門のみの範囲で進める場合も多いです。
今回紹介した中にもあるように、既にある社内リソースの活用、部署横断的な取り組みも必要です。

コメントを残す

CAPTCHA