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組織文化の変革その2:失敗例と正しい手順

  • 投稿カテゴリー:Change Management
  • 投稿の最終変更日:2021年7月14日
  • Reading time:8 mins read

社内システムや組織構造を変えただけでは組織は変わりません。組織文化の変革が必要です。組織文化とリーダーシップは他の組織属性に対して強力な磁力をもっているので、これらの変革なしでは、他の改革もすぐ元の姿に引き戻されてしまいます。変革の失敗例と組織文化を変える手順を紹介します。

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変革の失敗例:安易な組織図の変更

あなたが会社の社長だと想像してください。 そして、組織の方向性を根本的に変えたいと考えています。 それを実現するためにあなたが最初に行うことは何でしょうか?
もしあなたがほとんどの社長や他の経営者と同じならば、あなたはまず組織図、つまり組織の構造を変えることを検討するでしょう。

経営者が組織の方向を変えたい時、なぜ一番最初に組織図に手を付けようとすると思いますか?
その答えは、組織図の変更はとても簡単だからです。しかも、変えた成果がはっきり目に見えます。
新しい部署を作ったり、役割や権限の組み換えをしたり、エクセル上で、右から左にドラッグ・アンド・ドロップするだけで簡単に組織図を変える事ができ、権限があれば実際にそれを実行できます。時には部署の名前を変えるだけだったりしますが、その場合はドラッグ・アンド・ドロップすら不要です。

目に見えにくい組織文化の変化と異なり、組織構造の変化は簡単で、それが成功だろうが失敗だろうが、とにかく変えた事実は目にはっきりと見えるため「よしよし、変革が実現できた」と自己満足し、またその実行力をアピールする事もできます。
しかし、多くの場合、組織構造をかき回しただけでは成果を上げる事はできません。
同様に、社内プロセスやシステムなど他の目に見える分かりやすい所に安易に手を出してしまうのは、多くの会社が往々にして陥る変革の間違いです。この失敗には組織文化の視点が抜けているのです。

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なぜ、経営者は改革やアジャイルを嫌うのか?

経営層が変革を恐れる一方で、組織の中には、変革意欲に燃える中堅職員がいる事も少なくありません。
実際、多くの変革は組織の中間にいる従業員から始まります。(1) 経営層は実務の現実からはかけ離れてしまっている場合が多く、中間層が、顧客や組織の実状を一番良く知っている層だからです。(2)

本来、変革意欲に燃える中堅職員は変革のリーダーたるべき存在です。しかし、多くの経営者は彼らを煙たがります。

前回、下図の組織文化の4つのタイプを紹介しました。

図:組織文化のタイプ(adapted from The Competing Values Framework(3)

それぞれの組織文化に適応したリーダーシップのスタイルがあり、更にはその文化にマッチした従業員が昇格していくと説明しました。「類は友を呼ぶ」と言いますが、長く定着し固定化した文化を持つ組織では、その文化に適応する特性を持つ人たちが評価されます。

変革に燃える真のリーダーシップを持った従業員は「臨機応変」型で、「階層」文化に長くどっぷり浸かった経営者にとっては、対角線上にある真逆の思考を持つ、うっとおしく、迷惑な存在です。残念ながら、そのような改革志向の従業員は、大企業に典型的な階層文化のリーダーとは「水と油」の相容れない関係にあり、変革を叫んでも抵抗に遭いはじかれるだけで、変革を実現できるような中枢の存在になり得ません。

組織変革のために外部コンサルタントを雇う事もあるかと思いますが、コンサルタントの選択も同様で、現状の組織文化にマッチするコンサルタントが採用される傾向があるため(階層組織では、臨機応変型への変革を煽る「過激な」コンサルタントは採用されにくい)、成果を挙げられない事が多いのです。
文化はリーダーの影(the shadow of the leader)とも言われますが(4)(5)、リーダーの言動・思考・選択が文化に強力な磁力を及ぼすのです。

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効果的な組織は、組織文化の下にサブユニット的に、違う文化を持つセグメントを開発する事があります。例えば、階層型文化の組織の中に、臨機応変型(アジャイル型)の小さな組織を作り新規事業開発に取り組む、日本の大企業の新規事業開発で見られる「出島」と言われる手法がまさにこれにあたります。
「出島」は、経団連や経済産業省が提言する「Society 5.0」において、

イノベーション創発のためには、大企業内の既存の組織風土や意思決定プロセスを経るのではなく、本体から離れた組織「出島」を設け、新たな知識やコミュニティへのアクセスの機会や事業における人材・権限・資金・技術を与えることにより、ノンリニアな「0→1」の新たな取組みを推進することが有効な場合もある。

と紹介されています。(6)(7)
しかし、一方ではアジャイルやスクラムが実施されている「臨機応変」型の部署で働く約400人に対する調査では、その88%が、組織内でのアジャイル/スクラムチームの管理方法と、組織の他の大部分の管理方法との間に「緊張」がある事を報告しています。「緊張なし」と報告したのはわずか8%でした。(8)
この調査からも、本当に企業として効果的に新規事業を行うためには、「出島」のような本体から隔離された「臨機応変」型の部署を作るだけでなく、更に取り組みを進めて、その文化を組織全体が受け入れられるように、全社的な組織文化の変革に繋げていく必要があります。

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組織文化を変える手順

例えば、「同族」文化が強く「市場」文化が弱い組織の事業環境が、競争の激しい好戦的なものに変わってしまった場合、組織文化を変えなければ文化と環境のミスマッチのため生き残るのが難しいでしょう。 組織文化は、社会や環境の要求とある程度の互換性を持って変化していく必要があります。

しかし、組織文化の変革は、他人が無理やり押したり引きたりして変えようとしても実現できません。経営者や従業員自らにその必要性に気づいてもらうしかありません。「気づき」も「腹落ち」もない状態で進めても、どこかで抵抗にあい進まなくなります。

前回OCAI(組織文化評価手法:Organizational Culture Assessment Instrument)のモデルを紹介しましたが、このようなモデルを使う事で、その「気づき」をもたらす効果が期待できます。
一方で、以前、このようなモデルに全てに万能なものはなく、一つのツールで全て解決できるような事は決してないとも説明しました。組織文化改革には一つとして同じ例はないからです。しかし、組織をある指標や角度において的確に捉える事ができるツールであれば、それを効果的に利用し変革の可能性を高める事はできます。

OCAIを提言している「Diagnosing and Changing Organizational Culture」(3)は、以下の組織文化変革の9つのステップを紹介しています。

1.現在の組織文化に関して、議論を重ねコンセンサスを得る。
OCAIのツールを使うと自社の文化のスタイルのプロット図が作成できます。これをいくつかのグループに分かれて作成、議論を重ね修正していき、全員でコンセンサスを得られるまで何度も繰り返します。

2.好ましい将来の組織文化について、議論を重ねコンセンサスを得る。
次に、現在や将来の事業環境から判断し、変革後の望ましい組織文化を、同じように図示化し把握します。
これもコンセンサスが得られるまで議論を繰り返します。

3.変更するものとしないものを決定する。
変更前と変更後の組織文化スタイルを比較する事で、組織文化のギャップが発見できます。ギャップ解析(Gap Analysis)ですね。
前回紹介したように組織文化と様々な組織属性はリンクするので、リーダーシップやマネジメントのスタイル、プロセス、手順、望まれる行動や望まれない行動のギャップ
も把握できます。そのギャップが変革のロードマップになります。変革は、そのギャップを埋めていく作業になります。

組織文化は目に見えないので難しいと説明しましたが、図示化し比較する事で、全体像の把握し、変えるべきポイント、強化すべき特性や低減すべき特性、始める事、やめる事が明確に見えてきます。

ここまでの1から3の手順が特に重要です。見えにくい組織文化の、現状(スタート)と望ましい姿(ゴール)を可視化してそれらを比較すれば、埋めるべきギャップも明確になります。目に見えないもの、把握できない事を変えて行くのはとても難しいですが、それを視覚的に捉える事ができれば、その難易度は大きく低減します。
以下、その後の手順になります。

4.望ましい将来の文化を説明するストーリーを描く。
組織改革は組織のストーリーで最も効果的にコミュニケーションされます。(9)
浸透したい文化や価値観を物語る組織の出来事を共有します。

5.戦略的行動計画を特定する。
特にプロセス、手順、システムの変更が必ずあるはずなので、この点は注力する必要があります。

6.簡単に実現できそうな小さな変革を探す。
組織改革は「Minimum Viable Change(MVC)」で実現する等の過去の記事で何度も紹介していますが、小さな改革の成功から大きな変革へのモメンタムを作っていきます。

7.リーダーシップの変化へのコミットメントを高め、従業員にそれを明らかにする。
こちらも、変革は「認知 ➡ 比較 ➡ 支持 ➡ オーナーシップ」を踏んでのみ成功する等の過去の記事で再三紹介している通りです。

8.変革へのアカウンタビリティーを維持するための指標、数値、およびマイルストーンを特定する。

9.コミュニケーション戦略を特定する。
コミュニケーションは出来るだけ目に見えるコミュニケーションを大切にします。また縦のコミュニケーションより横のコミュニケーションに力を入れる事を意識的に心がけます。

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上記「5.戦略的行動計画」に関しては、作家であり世界銀行で長いキャリアを構築したスティーブ・デニング(Steve Denning)が提案した下記のモデルも参考になります。

図:意識変革のための組織ツール(adapted from “Organization Tool for changing minds”(10)



デニングは、変革戦略が成功するためには、将来のビジョンやストーリーを含む「①リーダーシップ・ツール」から始め、役割の定義、トレーニング、管理システムなどの「②マネジメント・ツール」を使用して変化を「定着」することを提案しています。
「リーダーシップ・ツール」は、変化にインスピレーション(動機付け)を与え、「マネジメント・ツール」は変化に必要な情報を提供します。
「③パワー・ツール」は、「強要」と呼ぶ、他のすべてが失敗したときの最後の手段です。

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文化を変えることは困難で長期的な努力を必要とします。更に変化を確実に定着させるためには、文化のみならず、組織の多くの側面に取り組むことが必要になります。会社のシンボル(文化を強化するイメージ)、システム(生産システム、評価システム、選択システム、品質システムなど)、スタッフ(人材の選択と開発)、戦略(組織のビジョン)、リーダーのスタイル(トップリーダーの行動、態度)、マネージャーのスキル(変更プロセスを実行する個人の能力)、これらの要素の変化も意図する事が、文化の変革を成功させるため重要です。

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参考文献
(1) Thomas H. Davenport, Laurence Prusak, H. James Wilson, “What’s the Big Idea? Creating and Capitalizing on the Best New Management Thinking”, Harvard Business Review Press, 2003/04
(2) Steve Denning, ”How You Can Innovate From The Middle”, Forbes.com, 2021/04
(3) Kim S. Cameron, Robert E. Quinn, “Diagnosing and Changing Organizational Culture – Based on the Competing Values Framework, Third Edition”, Jossey-Bass, A Wiley Imprint, 2011
(4) Jerome Parisse-Brassens, “Leadership shadow: Driving culture leadership“, Walking the Talk, 2017/8
(5) Sentil Kumar Muthamizhan, “How the Shadow of a Leader Impacts the Culture“, culturemonkey, 2020/7
(6) “Society 5.0 -ともに創造する未来-“, 経団連, 2019/1
(7) “Society 5.0時代のオープンイノベーション、スタートアップ政策の方向性 2.(3)⑤出島“, 経済産業省 研究開発・イノベーション小委員会事務局, 2019/3
(8) Steve Denning, ”Why Do Managers Hate Agile?”, Forbes.com, 2015/1
(9) Joanne Martin, Martha Feldman, Mary Jo Hatch, Sim Sitkin, “The Uniqueness Paradox in Organizational Stories”, Working Paper No. 678, Stanford Graduate School of Business, 1983/2
(10) Steve Denning, “How Do You Change An Organizational Culture?”, Forbes.com, 2011/7

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