You are currently viewing 変革の書籍紹介:フルエンゲージメントの力 Power of Full Engagement

変革の書籍紹介:フルエンゲージメントの力 Power of Full Engagement

  • 投稿カテゴリー:人が変わる
  • 投稿の最終変更日:2023年9月24日
  • Reading time:12 mins read

私たちはパフォーマンスやエンゲージメントを上げるため、様々な管理をしようとしますが、重要なのは、何よりも「エネルギー」を管理することです。そのエネルギーには「身体、感情、思考、信念」の4つの種類があり、この4種類のエネルギーを、一定の振幅をもつサイクルで発揮と回復を繰り返す「ポジティブなエネルギーのルーチン」を築くのです。

~ ~ ~ ~ ~

はじめに

アメリカの人事系調査会社ギャラップ社(Gallup)の毎年の職場に関する調査によると、勤務先の仕事にエンゲージできている従業員はわずか30%程度で、55%程度はエンゲージしておらず、さらに20%程度は「ディスエンゲージ」、つまり、積極的に自分の気持ちと仕事との距離をおいてさえいます。毎年の調査でこの傾向に大きな変化はありません。

ディスエンゲージしている20%の従業員たちは単に仕事に不満があるだけでなく、その不満を組織内に広めてネガティブな感情を拡散します。同社の調査によると、さらに悪いことに、従業員が組織に長く留まれば留まるほど、従業員のエンゲージメントは徐々に低下していきます。

~ ~ ~ ~ ~

今回紹介する本は「The Power of Full Engagement: Managing Energy, Not Time, is the Key to High Performance and Personal Renewal(邦訳)メンタル・タフネス 成功と幸せのための4つのエネルギー管理術」です。

著者の1人のジム・レーヤー(Jim Loehrは、数多くの世界的スポーツプレーヤーをサポートしてきた著名なスポーツ心理学者であると共に、その知見を活かし、広く個人や組織のパフォーマンスを上げるサポートしてきたHuman Performance Instituteの創始者でもあります。
もう1人の著者トニー・シュワルツ(Tony Schwartz)は、アメリカのジャーナリストであり、ビジネス書作家です。


私は、原書が出たすぐ後に本を買って読んだので、初めて読んだのはもう20年近く前になります。
当時私はアメリカで働いていて、参考になりそうなビジネス書を見つけては原書で読んだりオーディオブックで聞いたりしていましたが、本書はその中でもお気に入りで、その後何度か読み返しています。

なお、私は日本語版は読んでいないため、訳が一致しない言葉があるかもしれませんが、その点はご了承下さい。
ところで、日本語翻訳本のタイトルを時々批判する私ですが(笑)、この本の日本語タイトルにある「メンタル・タフネス」は本書の一面のみを強調する、あまり適切ではないタイトルだと感じます。。。

~ ~ ~ ~ ~

パフォーマンスを上げるには「時間」ではなく「エネルギー」を管理する

本書の最大のポイントは、高いパフォーマンスを実現するには、「時間」ではなく「エネルギー」を管理するという点にあります。

そして、管理するのは次の4種類のエネルギーです。

1.身体のエネルギー Physical energy
2.感情のエネルギー Emotional energy
3.思考のエネルギー Mental energy
4.信念のエネルギー Spiritual energy

例えば、肉体を鍛え上げるには、限界近くまでプッシュして、その後回復期間を設けます。筋肉は回復期間により大きくなります。そして回復した後、さらに限界近くまで頑張って追い込み、またその後にリカバリーする。。という作業を繰り返して少しづつ筋肉は大きく強くなっていきます。

4種類のエネルギーのキャパシティを上げるのも同じです。限界近くまで負荷をかけて、その後フレッシュな状態に戻して、再度チャレンジするのを繰り返して強くしていきます。

著者のジム・レーヤーは、数多くのスポーツプレーヤーを測定し分析した結果、高いパフォーマンスを維持するプレーヤーはこれらのエネルギーのコントロールが卓越していると気づきます。

~ ~ ~ ~ ~

アスリートはその時間の9割をトレーニングに使い、残り1割の時間を使って、結果を出すために試合でプレイします。
練習では、自分の限界まで追い込みリカバリーするというサイクルを一定の間隔で繰り返す作業をルーチン化して、能力を強化していきます。

シーズン前には最高のパフォーマンスを発揮できるように準備しておき、シーズンが終わるとリフレッシュすると共に、次のシーズンにさらに高いパフォーマンスができるように心身を整えます。

プレーヤーは、例えば、テニスの1試合の中でも、セットの合間のみならず、ゲームの合間、1つ1つのポイントの合間にも同じルーチンを繰り返すことで、自分のミスや納得のいかない判定への感情を引きずることなく、気持ちを切り替えて次に臨みます。

つまり、1試合の中でさえ、異なる複数の時間軸において、エネルギーを発揮する所とリカバリーする所、オン・オフの切り替えのエネルギーの振幅のサイクルが出来ていて、それが習慣化されていることで、無駄なエネルギーを費やすことなく半ば自動的に高いパフォーマンスを発揮することを継続するプロセスができているのです。

もともとプレイヤーたちは技術的にはとても高いレベルを持ち合わせています。ジムは、技術的な面には一切関与せず、プレーヤーのエネルギーのコントロールの仕方にフォーカスしました。

それでは、私たちの生活はどうでしょう?

私たちの多くは、毎日が会社の仕事が中心の生活で、年数回、数日から1週間程度の休みを取ることがあるものの、その休みの間でさえメール対応に追われたり、単にグダグダ過ごしてエネルギーを回復できなかったり、メリハリのない直線的なエネルギーの使い方をしたりします。

まるで、ゴールがどこにあるのか分からないマラソンを真っ暗闇の中走っているようです。著者はマラソンではなくスプリントを繰り返すようなエネルギーの使い方をしなければならないと言います。

本書の題名にある「フルエンゲージメント:Full Engagement」という言葉を聞くと、100%のエンゲージを常に持続するような印象を持たれるかもしれませんが、そうではありません。
著者は「オシレーション(Oscillation):振幅」という単語を使って説明します。
キャパシティは使われ過ぎても、使われなさ過ぎてもだめで、「一定の振幅、周波、サイクル」で強弱とメリハリをつけて使い回復することを繰り返すことで、長期的に高いパフォーマンスを発揮できるのです。

~ ~ ~ ~ ~

4種類のエネルギー

以下、その4種類のエネルギーについて見ていきましょう。

1.身体のエネルギー(Physical energy)

身体のエネルギーの素となるのは、身体の強さ、耐久力、柔軟性、回復力(レジリエンス)などです。

身体のエネルギーは、肉体労働する人だけでなく、オフィスワークでほとんど座って作業するような人にも必要な、基本的なエネルギー源である一方、最も軽視されているエネルギーでもあります

身体のエネルギーを高めるために必要なものとして、食事、睡眠、運動、休養は、誰もが容易に想像できるでしょう。
その他にも、水分(毎日2リットル程度の水を飲む)、呼吸方法(身体のエネルギーは酸素から作られるため、深く一定のリズムで呼吸すること)なども、身体のエネルギーのみでなく、他の全てのエネルギーの素になり、重要です。

2.感情のエネルギー(Emotional energy)

ポジティブな感情のエネルギーの素となるのは、自信、自己統制力、対人関係スキル、エンパシー(共感)、セルフコンパッション(自分自身への優しさ)などです。

ポジティブな感情のエネルギーをもたらすのは、純粋な楽しさ、喜び、チャレンジ、冒険などです。
そのために行う活動は、スポーツ、芸術鑑賞、読書、その他の趣味、単に1人で静かな時間を過ごすなど、人それぞれでしょう。
対人関係で言えば、ポジティブな感情をもたらす良好な関係の多くはギブアンドテイクからなっており、まずはじめに自分が相手の価値を認め、相手の話を聞くことで、相手もあなたの価値を認め話を聞いてくれるようになります。

筆者ジム・レーヤーは、彼のクライアントに「心の底から楽しさや喜びを持って、何かをおこなうことがあるか?」と聞きます。
多くの場合「ほとんどない」という答えが返ってきます。

みなさんはいかがでしょうか?

何も思いつかなければ、過去に好きだったこと、やろうと思っていたけどやっていないことにもう1度チャレンジしてみるなどして、それを日常のルーチンの中に組み込むことが、感情のエネルギーのサイクルを築くために必要です。

最近取り上げられることの多い「エモーショナル・インテリジェンス」も本書で既に言及しています。

ジムは「高くポジティブなエネルギーとフルエンゲージメントを達成するため、感情をうまく管理すること」と説明しています。
怒りや不安などのネガティブな感情は、大量のエネルギーを浪費します。
それにもかかわらず、ネガティブな感情で従業員をコントロールしようとする組織の何と多いことでしょう。
組織は従業員に対して、自主性を持たせて、自信に繋げ、成長、挑戦、インスピレーションなどのポジティブなエネルギーをもって、業務に取り組んでもらうことが大切です。

3.思考のエネルギー(Mental energy)

思考のエネルギーの素になるのは、心の準備、可視化、自分との対話、時間管理、創造性などです。

感情のエネルギー(Emotional energy)と思考のエネルギー(Mental energy)の違いは、感情のエネルギーがある出来事や経験に対して生まれたり表現したりする感情である一方、思考のエネルギーは経験や情報をどう捉えるか、判断力や集中力である点です。
身体、感情、思考の3種類のエネルギーは相互に影響し合います。例えば運動は、身体だけでなく、感情や思考にもプラスの影響を与えますね。

感情と同様に、思考にも大量のエネルギーが消費されます。休みなく働かせ続ければ頭も回らなくなりますが、それだけでなく、創造的な思考は、むしろリラックスしている間に生まれることが多く、普段仕事で使うような思考回路をオフにして、普段の思考パターンからあえて離れることで、良いアイデアが生まれたりします。

4.信念のエネルギー(Spiritual energy)

信念のエネルギーは、他の3つのエネルギーが相互に影響し合うのとは異なり、それぞれのエネルギーを発動させる動機、モチベーション、方向性となる核となるエネルギーです。

これは、自己利益を超えた価値観や個人の目的と結びつくもので、その素になるのは、勇気、情熱、統合性、誠実さなどです。

このエネルギーも他と同様に、定期的に向かい合う必要があります。定期的に向き合って、自己と合致することを確認し、コミットメントを新たに、エネルギーを強めてパフォーマンスを持続できるのです。

私たちは「感情」と「思考」のエネルギーを継続的に酷使している一方、「身体」と「信念」のエネルギーをあまり利用していません。
特に信念のエネルギーは、他の3つのエネルギーの方向を定める極めて重要なエネルギーであるにも関わらず、ほとんどの人や組織が目の前の課題に忙殺され、向き合うことを避けているものでもあります。

信念のエネルギーとは、人の「価値観」であり「目的(パーパス)」です。

人や組織が変わるためには、この4つのエネルギーのうち、まずこの信念のエネルギーに向き合いなおす必要があります。
自らの価値観や目的と向き合うことで、それが他のエネルギーの方向を修正し、結果的に私たちは変化したり成長できるのです。

~ ~ ~ ~ ~

最後に

今回、高いパフォーマンスを実現するには、「時間ではなく、エネルギーを管理すること」、そのエネルギーには4つの種類があり、その4つのエネルギーを、一定の振幅をもつサイクルで発揮と回復を繰り返す「ポジティブなエネルギーのルーチン」を築くことが重要だと紹介しました。

ここまでが本書の前半部(パート1)の紹介になります。

実は後半部(パート2)で紹介される「信念のエネルギー」つまり「目的(パーパス)」を、仕事とプライベートの両面で定義すること、自分を欺くことなく現実と向き合うこともとても重要です。それについては改めてまた次回紹介しましょう。

コメントを残す

CAPTCHA