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チェンジコミュニケーションその1:コミュニケーションモデル

  • 投稿カテゴリー:Change Management
  • 投稿の最終変更日:2021年7月11日
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コミュニケーションでは、送り手の「意図」と、実際に発する「メッセージ」、そして受け手が受ける「メッセージ」と受け手の「解釈」は、外的内的なフィルター(ノイズ)を通して変わっていきます。正確なコミュニケーションには、送り手の明確で分かりやすい表現と受け手からのフィードバックが必要です。

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今回から3回に渡り、チェンジマネジメントにおけるチェンジコミュニケーションについて紹介していきます。今回はなぜコミュニケーションが大切なのか、またコミュニケーションはどのようなプロセスを経ておきるのか、コミュニケーションのモデルを紹介し、最後に効率的で効果的なコミュニケーションに大切なポイントを紹介します。

なぜコミュニケーションが重要か

アメリカのDynamic Signal社による2019年の従業員のコミュニケーションとエンゲージメントに関する調査によると、調査したアメリカの従業員の80%が社内の非効率なコミュニケーションにストレスを感じているそうです。そして、従業員の83%はエンゲージメントが改善されれば会社を支持するのに、従業員の53%は、コミュニケーションの欠陥のため、会社は従業員から支持されたいとは思っていないのだろうと感じています。(1)

プロジェクトマネジメントの分野においては、プロジェクトにかかる金額的なリスクのうち56%、つまり半分以上は非効率なコミュニケーションによるリスクです。
更に、プロジェクトの5分の2は当初の目的を達する事ができませんが、そのうちの半分、つまり全体のプロジェクトの5分の1は、非効率なコミュニケーションが原因で目的を達成できないと報告しています。(2)
プロジェクトマネジメントの分野では「プロジェクトマネージャーの90%の仕事はコミュニケーションである」という有名なフレーズがありますが、効率的なコミュニケーションはプロジェクトの成功に欠かす事はできません。

一方で、効率的なコミュニケーションが根付いている企業とその業績は強く相関します。
コミュニケーションが効果的な企業の業績は、そうでない同業他社を1.7倍上回ります。 更に、コミュニケーションとチェンジマネジメントの両方で効果的であれば業績との相関は更に強くなり、両方で効果的な企業の業績は、どちらかの領域であまり効果的でない同業他社を2.5倍上回ります。

チェンジマネジメントとコミュニケーションの両方とも非効率な企業と比較すると、チェンジマネジメントが効果的な企業は、コミュニケーションとチェンジマネジメントの統合された戦略を作成する可能性が5倍高く、変革によって得た新しい行動とスキルを維持していく可能性が8倍以上高くなります。 (3)(4)

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コミュニケーションとは?

そもそもコミュニケーションとは何でしょうか?
広辞苑によると「社会生活を営む人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達」とあります。
端的に言うと、コミュニケーションとは「情報を伝える」事です。
英語の「Communication」の語源は、ラテン語の「Common(共通)」です。(5)「情報を伝える」事で、その情報を送り手と受け手で共通のものにします。

コミュニケーションと聞くと、真っ先に言葉でのコミュニケーションを想像すると思いますが、言語的なコミュニケーションの他に、身振り手振り、表情、しぐさなど非言語でのコミュニケーションもあります。特に対面でのコミュニケーションでは、非言語の要素が大きく影響します。
また、報告書や会議のように正式なコミュニケーションもあれば、メモや雑談など非公式なものもあります。意図的又は無意識に行われるコミュニケーションの区別もあるでしょう。

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コミュニケーションの機能

情報を伝える事で、コミュニケーションは以下のような機能を発揮します。

1.情報の伝達・共有
2.影響を与える(指示する、支配する、説得する、注意する、勇気づける、モチベーションを上げる、なだめる等)
3.感情の伝達
4.社会的な関係の形成や発展、交流、相互理解

機能とは、働きや能力を意味し、コミュニケーションを通してできる事を指します。逆に言うと、コミュニケーションでは、この持ち合わせている機能以外の事はできません。これらの機能を理解しておくことは、「あれ、そもそもこのコミュニケーションは何の機能を期待しているんだろう?」と、自分や人のコミュニケーションを俯瞰的に見たり、コミュニケーションを管理する上で効果的です。

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コミュニケーションモデル

コミュニケーションの伝達モデルの原点は、1948年に数学者クロード・シャノンが発表した「通信の数学的理論」で紹介されている下記のモデルです。(6)

図:シャノンの一般的なコミュニケーションシステム図

このモデルで、情報源(information source)からメッセージが送信機(transmitter)によって信号(Signal)に変換されてから発信され、途中ノイズの影響を受けた信号(Received Signal)が受信機(Receiver)を通して最終的にメッセージに再変換され受信者(Destination)に伝わります。

もう少し分かりやすく表すと以下の図のようになります。

図:コミュニケーション伝達モデル

送り手の「意思」はチャンネル(メディア)を通してメッセージとして送られ、最終的に受け手に「解釈」されます。「チャンネル(メディア)」は、コミュニケーションの媒体です。上図では糸電話ですが、対面での会話や電話、文書のやり取り、メール、ソーシャルメディア等様々な媒体があります。

上図のプロセスの中に、3つのフィルター(ノイズ)が存在します。それらのフィルターを通して、伝達されるメッセージが変化します。
1.送り手の意図と、実際に送り手から発信されるメッセージの間のフィルター(ノイズ)
2.送り手と受け手の間のフィルター(ノイズ)
3.受け手が受信したメッセージと、受け手がそれを解釈したものの間のフィルター(ノイズ)

送り手が発したメッセージと受け手が受けるメッセージが異なるだけでなく、送り手の意図と送り手が実際に発するメッセージ、受け手が受けたメッセージと受け手がそれを解釈した内容も異なるという事です。

フィルター(ノイズ)には以下の5つの種類があります。これらのフィルター(ノイズ)を通してメッセージが変化します。
1.外的作用:周辺の騒音や雑音、場所、外部環境
2.心理的作用:思想、信念、価値観、興味、偏見、その時の感情や身体的な状況
3.社会的作用:文化、習慣、主義、規則、世代間や男女間の違い
4.言語的作用:母国語/非母国語、送り手しか分からない専門用語
5.個人の能力:知識、理解力、経験

コミュニケーションが非母国語である場合や、異文化間のコミュニケーションでは、フィルター(ノイズ)が大きな障害になる事もあります。同じ国の人同士のコミュニケーションでも、世代間、地域間、異なる専門分野間でフィルター(ノイズ)が発生します。
送り手、受け手が同じ人であっても、その時々の感情によって、送り手の「意図」と受け手の「解釈」が違う事もあります。
より効率的なコミュニケーションを取るためには、このコミュニケーションのモデルとフィルター(ノイズ)の存在を理解しておくこと、送信者が意図するメッセージと受信者が解釈するメッセージは異なると理解しておくことはとても有効です。

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正確なコミュニケーションの伝達のためには?

PMBOK(プロジェクトマネジメントのガイドブック)は、書面でのコミュニケーションで送り手が正しくメッセージを伝えるために大切な「5C」を紹介しています。(7)
1.Correct:正しい文法と正しい記述
2.Concise:簡潔な表現を意識し、だらだらと言葉を並べる事を避ける
3.Clear:目的を明確にし、読み手のニーズに合った表現を使う
4.Coherent:分かりやすく論理的な流れ
5.Control:イメージや要約を利用するなどアイデアの流れをコントロールする

また、Forbesの記事では、「5C」を、Clear、Concise、Compelling、Curious、Compassionateと紹介しています。(8)
ClearとConciseは上の例と共通していますが、次の要素が入れ替わっています。
– Compelling:説得力を持たせる
– Curious:相手のニーズや課題に関心を持ち、相手を理解する
– Compassionate:相手に気遣い、思いやりを持ち、より安全で自由な、誤解のないコミュニケーションを生み出す相互信頼の関係を築く

PMBOKの「5C」も、Forbesの「5C」も、どちらの「5C」でも、参考になるアイデアは吸収していきたいですね。

逆に、受け手側に求められるのは、積極的傾聴やフィードバックで、送り手の会話を要約したり、送り手に分かるような相槌や反応を示したり、質問をしたり、積極的に相手の意図の理解に努める事です。

フィードバックは、送り手から積極的に求める事も大切です。送り手と受け手との間で相互のフィードバックを一回のみならず複数回繰り返す事で、より正確なコミュニケーション(=情報の伝達)が可能になります。

いかに効果的なコミュニケーションをとるかという課題に関しては、他にも多くの有益なヒントやアイデアがありますが、それはまた別の機会にご紹介したいと思います。

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次回「チェンジコミュニケーションその2:コミュニケーションプラン」にて、チェンジマネジメントにおけるコミュニケーションプランを紹介していきます。

参考文献
(1) Dynamic Signal, “2019 State of Employee Communication and Engagement Study“, 2019
(2) “The Essential Role of Communications“, PMI, 2013

(3) “2011/2012 Change and Communication ROI Study Report”, Towers Watson
(4) Jesse Jacoby, “Change Management & Communications ROI Study Highlights“, Leader’s Beacon
(5) Rajkumar, S., “Art of communication in project management“, Paper presented at PMI® Research Conference: Defining the Future of Project Management, Washington, DC. Newtown Square, PA: Project Management Institute, 2010
(6) Shannon, Claude Elwood, “A Mathematical Theory of Communication“. Bell System Technical Journal Vol. 27, pp. 379–423, 623–656, July, October, 1948.
(7) A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK®Guide) Sixth Edition, Project Management Institute, Inc.,  2017
(8) Cheryl Keates, “The Five C’s Of Effective Communication”, Forbes, 2018/9

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