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書籍紹介:エニシング・ユー・ウォント – 他人の役に立ち、自分を幸せにする

  • 投稿カテゴリー:人が変わる
  • 投稿の最終変更日:2026年7月5日
  • 読むのにかかる時間:13 mins read

ビジネスとは、単にお金を稼ぐことではありません。自分や他人の夢を叶えること、自分自身を成長させながら、より良い世界をデザインすること、何をするにしても、真の目的は人が幸せになることです。しかし、多くの人はそれが幸せにはつながらないことに気づかないまま、誰かに「こうするべきだ」と吹き込まれたものを追い求め、何十年もの歳月を費やしてしまうのです。

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はじめに

多くの人は、自分がなぜそのことをしているのか分かっていません。他人を真似て、流れに身を任せ、自らの道を切り開くことなく、大勢が通る道をたどっていきます。そして、それが自分を幸せにするものではないと気づかないまま、誰かに「そうあるべきだ」と吹き込まれたものを追い求め、何十年もの歳月を費やしてしまうのです。

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エニシング・ユー・ウォント

今回紹介する書籍『Anything you want(邦題)エニシング・ユー・ウォント:すぐれたビジネスはシンプルに表せる』の著者デレク・シヴァーズ(Derek Sivers, 1969 -)は、米国カリフォルニア州生まれの起業家、作家、プログラマーです。多くのビジネス書の作家や起業家とは異なり、「意図や目的を持って生きること」を発信し続ける思想家でもあります。

もともとはミュージシャンとして成功することを目指していましたが、オンライン音楽配信サイト「CD Baby」を立ち上げてからは、その事業を創り上げることに全力を注ぎました。この本では、その事業の成り立ちから会社の成長と売却までを物語の軸におきながら、彼の仕事観や人生観が語られています。

書籍には、彼の謙虚でありながら、主流と異なることを恐れない姿勢が貫かれています。1つ1つの章が短く区切られていて、言葉遣いも簡潔で分かりやすく、簡単に読める本です。また、彼自身の実体験に基づく洞察にユーモアが織り交ぜられて、とても楽しく読むことができます。

ある程度英語が読める方は、英語版でもそれほど苦労なく読み進められるかと思いますので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
なお、いつものように、私は英語版しか読んでいないため、日本語版との表現の違いについてはご了承ください。

また、彼については、本サイトの以前の記事でも取り上げています。

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CD Baby

1998年、シヴァーズは、偶然のような形で「CD Baby」というビジネスを立ち上げます。

そのころ、彼は主にミュージシャンとして活動していました。当時は、デジタル配信が生まれる前のCD全盛期でしたが、インディペンデント(独立系)のミュージシャンがCDを販売する手段はとても限られていました。

そこで、彼自身の音楽を売るためにウェブサイトを立ち上げたところ、友人たちからも「自分のCDも売ってくれないか」と頼まれるようになります。

利用するミュージシャンがどんどん増え、数年のうちに15万人以上の独立系ミュージシャンが利用し、数百万枚のCDを販売するようになります。毎年毎年、売上は倍増し、会社も拡大していきました。

しかし、彼は金儲けのためにこのビジネスを始めたのではありません。彼は、そもそもミュージシャンとして活躍したかったのであり、また、他のミュージシャンを助けたかっただけです。CD Babyを続けるために料金を取っているだけで、お金や会社の規模を大きくすることが目的ではありませんでした。
それを裏付けるエピソードがあるので、いくつか紹介しましょう。

1. ビジネスは人の役に立つこと

あるカンファレンスで、シヴァーズは聴衆の一人からこう質問されます。

「もしすべてのミュージシャンが自分のウェブサイトでCDを売り出したらCD Babyは消滅するかもしれません、それをどう防ぐつもりですか?」

シヴァーズはこう答えました。「私が気にしているのはミュージシャンだけです。もしミュージシャンがCD Babyを必要としなくなったら、それは素晴らしいことです!CD Babyを閉鎖します!」

質問者は衝撃を受けました。会社の存続などどうでもいいと語る経営者など、聞いたことがなかったからです。

しかし、シヴァーズにとっては、ごく自然な答えでした。優れたサービスは相手のためにあるのであって、自分自身のためではありません。

しかし、善意ある企業であっても、意図せず「自社が生き残ること」だけを目的とする状態に陥ってしまうことがよくあります。ビジネスとは、何らかの問題を解決するために始まるものですが、もしその問題が完全に解決されてしまったら、そのビジネスはもはや必要とされなくなってしまいます。そのため、企業は無意識のうちに、問題を解決し続けることができるよう、あえてその問題を存続させてしまうことがあるのです。

銀行は、お金を必要としていない相手に喜んで融資します。医療は人が必要としない治療を売ろうとします。レコード会社は、人の助けを必要としないミュージシャンと契約したがります。その他さまざまな商品やサービスの多くも、ビジネスを継続させるために、人が必要でないものを買わせようとします。

2.バナー広告を断った

CD Babyのホームページへのアクセスが増えていくにつれて、広告会社から「ホームページにバナー広告を載せませんか」という連絡を受けるようになります。しかし彼は、頑なに拒否しました。

その理由は、それが「修道院にコーラの自販機を置くようなものだから」です。

CD Babyのホームページにアクセスしてくる人たちは、音楽を買おうとしている人たちです。広告を見るためにアクセスしてくる人はいません。そのため、バナー広告は訪問してくる客を妨害するものでしかありません。ホームページを広告で埋め尽くして欲しいと願う顧客はいません。だから、広告は載せないのです。

3.投資家を一切入れなかった

スタートアップの多くが、VC(ベンチャーキャピタル)から資金調達、急成長、IPOというストーリーを描きます。

しかし彼は自己資金500ドルで始め、利益の範囲内だけで経営しました。MBA取得者のような人たちから、成長率や内部留保率、将来の事業計画などを聞かれることもしばしばありました。彼らは、もっと収益を伸ばせるはずだと言いました。

しかし、シヴァーズにとって重要なのは、自分は何をしているのか?目的は何か?人の役に立っているか?人を幸せにしているか?自分自身が幸せか?でした。彼は、銀行にお金があり、順調であれば、それだけで十分ででした。

自己資金のみで始めることは強みになります。周囲の人たちからの、こうすべきだ、ああすべきだという声に惑わされず、自分のやりたいように行うことができるからです。誰か他人が参加すれば、利益の最大化を求められるかもしれませんが、他に誰もいなければ、自分の理念を守ることができます。

4.慈善事業への寄付

2008年、シヴァーズはCD Babyを約2,200万ドルで売却しました。特筆すべきは、その時の彼の行動です。

彼は「インディペンデント・ミュージシャンズ・チャリタブル・リメインダー・ユニトラスト(independent musicians charitable remainder unitrust)」という独立系ミュージシャンのための慈善信託を設立しました。彼が生きている間は信託資産の評価額の5パーセントが毎年支払われ、亡くなった後はその資産のすべてが信託の活動のために使われます。

売却の数ヶ月前、彼はCD Babyの全資産をこの信託に移しました。買収者は、信託からCD Babyを買い取る形をとり、その結果、売却で得た現金が音楽教育のために生かされるようにしたのです。

CD Baby

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デレク・シヴァーズの人生哲学

彼の書籍や活動、ホームページを通じて、いくつかの繰り返し表現される人生についての考え方があります。今度はその哲学のいくつかを紹介しましょう。

1. 壮大なビジョンは必要ない。ただ、人の役に立つことに集中し続けるだけ

CD Babyで大きな成功を収めた頃、メディアはCD Babyは音楽業界に革命をもたらしたと評しました。

世間は、革命といえば、何か劇的で壮大なものをイメージしがちです。しかし、稲妻に打たれるような衝撃を伴うものでなければならないと思い込んでいたら、日々の生活の中で心を惹きつける小さな物事を見落としてしまいます。多くの注目を集めなくても、人に役立つことはできます。そしてその重要度は、注目を集めることよりも高いものです。

2.普遍的なルールは存在しない

私たちは皆、それぞれ異なる尺度で自分自身を評価しています。

ある人にとっては、稼ぐ金額がその尺度になります。資産が増えていけば大満足です。

ある人にとっては、どれだけ社会に貢献できるかが重要です。より多くの人たちの人生に良い影響を与えられることを重視する人もいれば、限られた少数の人たちの人生に深く関わることを大切にする人もいます。

多くのビジネス書はこう主張します。「これがビジネスの正解だ」
一方、シーヴァスはこう言います。「私にはこれがうまくいった」

シーヴァスの尺度は「どれだけ有益なものを生み出せるか」にあります。それが歌であれ、会社、記事、ウェブサイト、それが何であれ、他人の役に立つものを生み出せなければ意味がありません。しかし同時に、創造的な何かに関わっているという感覚がなければ、たとえ有益なことであっても、関心を持てません。

あなたは、どのような尺度で自分を評価していますか?

その基準をあらかじめ知っておくことは重要です。「他人にどう思われるか、他人に如何に感銘を与えるか」ではなく、自分自身の基準を知っておくことで、他人の「こうすべきだ」という意見に流されることなく、自分にとって本当に大切なことに集中し続けられるからです。

ビジネスは、芸術と同じくらい創造的なものです。型破りであれ、ユニークであれ、あるいは風変わりであれ、自分のビジネスは自分の好きなようにやればいいのです。

何千人もの従業員を抱える億万長者になりたい人もいれば、一人で仕事をしたい人もいます。
シリコンバレーに拠点を置き、大企業を顧客にしたい人もいれば、誰にも知られずに活動したい人もいます。

シーヴァスは、自分の会社が大きくなるにつれて、幸せが消えていきました。それは、彼にとって新たな学びでした。彼は、従業員が85人いるときよりも5人のときの方が幸せでしたし、一人で仕事に打ち込んでいるときの方が幸せだったのです。

どんな目標を選んだとしても、「それは間違っている。こうすべきだ」と言ってくる人たちが必ずいるでしょう。
たとえ自分の判断がビジネスの成長を遅らせることになったとしても、それでいいのです。それも自分の選択次第です。

3.大切なのは「持つこと」ではなく「あること」

CD Babyを立ち上げる前、シーヴァスがしたかったのは、素晴らしい歌手になることでした。15年間の練習と約1000回のライブを経て、少なくても彼なりの基準では、29歳でそれを成し遂げました。

CD Babyを始めた頃、彼は基本的なHTMLしか知らず、プログラミングは全く知りませんでした。しかし、サイトが成長するにつれて、自分でプログラミングを学ぶようになります。彼にとって、テクノロジーを自分の思い通りに操れるようになるのは、音楽制作と同じくらい楽しい時間でした。

会社が成長するにつれ、彼がプログラミングを全て自分でやっていることに皆が驚きました。ただし、そのために新機能の追加が進まず、何百万ドルものビジネスチャンスを逃している、と従業員が憤慨することもありました。でも、彼にとってはそれでよかったのです。彼はその過程が大好きで、プログラマーでありたかったのです。なによりもそこには学ぶことの喜びがあったのです。

すべてを専門家に任せれば、もっと早く規模を拡大でき、何百万ドルも多く稼げたかもしれません。しかし、そのことに一体何の意味があるのでしょう?

プログラマーがプログラミングを外部委託するのは、バンドが作曲を外部委託するようなものです。マラソンに申し込んだのに、非効率的だと言ってゴールまでタクシーで行きたいと思う人はいないでしょう。

結局のところ、大切なのは、何を手に入れたいかではなく、自分がどうなりたいか、どうありたいかなのです。何かを所有することは手段であって、目的ではありません。

4.十分であることを知る

CD Babyを売却しようと決めたとき、シーヴァスはすでに十分な資産を持っていました。彼は、とてもシンプルな生活を送っています。家も車も、テレビさえ持っていません。所有物が少なければ少ないほど、幸せを感じると言います。物を持たないことで、いつでもどこでも自由に暮らせ、何物にも代えがたい自由が得られるからです。実際、彼は世界中のさまざまな場所を移り住んでいます。

ですから、会社を売却して得られた膨大なお金は必要ありませんでしたし、欲しいとも思いませんでした。シンプルながらも安心に暮らせるだけの資金は確保しておき、残りの資金は音楽教育に充てるべきだと考えました。音楽教育こそが、彼の人生を大きく変えてくれたものだからです。

彼は、私たちの多くが仕事や人生を複雑にしすぎていると考えています。「自分には十分なものがある」という感覚は、何物にも代えがたいことです。

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さいごに

彼のホームページを覗いてみてください。広告もなく、これ以上簡素になり得ないほどシンプルなホームページで、AIに頼ることなく、自分自身で紡いだ言葉が綴られています。

彼は、何が自分を幸せにするのかを知っています。彼が好きでやっていることをAIにやってもらうことも、必要以上に着飾ることも、彼を幸せにするものではありません。

彼はシンプルな生活を送っています。質素ながら快適な生活であり、何よりも、新しいアイデアを「創り出す」ことを中心に置いた生活です。

2008年以来、彼は収入らしい収入をほとんど得ていません。すでに持っている以上の富を望んでいませんし、名声や評判、その他の外的な何かも求めていません。

今の彼の意欲は、もっぱら内面的なもの、そして知的な探求に向けられています。以前と変わらず精力的に活動していますが、それはあくまで自分自身の学び、創造、そして誰かへの貢献のためです。

彼は、取るべき選択肢は、「最高!(Hell yeah!)」か、「ノー(断る)」のどちらかだと言います。

多くのことに「ノー」と言えば、人生に余白が生まれます。その余白があれば、「最高だ!」と心から思える稀有なことに、全力で打ち込むことができます。誰もが忙しく、抱え込みすぎています。「イエス」と言う回数を減らすことこそが、その状況から抜け出す道です。

今すぐ始めましょう。資金は必要ありません。

壮大なビジョンであっても、役に立つ何かを作りたいなら、その1パーセントだけでも、今すぐ始めることができます。壮大なゴールラインが魔法のように現れるのを待っている人たちを尻目に、スタート地点にいるだけであなたは一歩先を行くことができます。

自分の人生における幸せが、自分だけでなく多くの人々の利益になると知ることで、より深い幸福感を味わうことができます。

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