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変革を阻む「Uncertainty:不確実さ」のパワー:その2

  • 投稿カテゴリー:人が変わる
  • 投稿の最終変更日:2022年9月19日
  • Reading time:7 mins read

前回、人は「Uncertainty:不確実さ」を嫌う事、不確実さは人に「恐れ」をもたらし、様々な障害を起こし得ることを説明しました。今回は不確実さや、未知への不安に対処する5つのステップを紹介します。

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変革を阻む「Uncertainty:不確実さ」のパワー:その1では、人は「Uncertainty:不確実さ」を嫌うこと、不確実さは人に「恐れ」をもたらし、さまざまな障害を起こし得ることを説明しました。また、変革の取り組みにおける「Uncertainty:不確実さ」への対応方法として、以下の2つの方法を紹介しました。

(1) 情報を共有する、決まっていない事を決めるなどして、できるだけ不確実な要素を排除する
(2) 不確実さに対する「恐れ」を「興奮・楽しさ」に転換する

この2つの方法はいずれも、組織の変革にも、個人の変革にも通じる「Uncertainty:不確実さ」への対処法です。
(2)に関しては、人は「恐れ」を「興奮」に転換し、時に「Uncertainty:不確実さ」に楽しんで飛び込んでいけること、「恐れ」を「興奮」に変えるのは、学習と経験で習得できるスキル(能力)だと説明しました。

今回はこれらを更に深堀りして説明していきます。
「Uncertainty:不確実さ」に対する「恐れ」を克服し、1歩を踏み出すためにはどうすればよいでしょうか?

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「Uncertainty:不確実さ」への恐れ、不安に対処する5つのステップ

1.まず自分の感情を横に置き、恐れの原因が何であるかを考える

はじめに大切なのは「Uncertainty:不確実さ」への恐れや不安は当たり前の感情であり、恥じたり引け目を感じる必要はないことです。
不安から目を背けて物事に取り組んでも、先々どこかでしわ寄せがきます。
恐れや不安といった自分の感情をひとまずよいしょと横に置き、その恐れや不安の原因が何であるか自問します。


一呼吸置いてリラックスしてみましょう。そして、感情に押し流されたりかき乱されず、よくよく冷静かつ客観的に考えてみると、恐れをもたらしているものは実はそれほど大したことでなく、「こうやってみればいいかも?」と対処可能だと気付くかもしれません。

恐れは物事を実際以上に拡大し深刻なものとして見せるのです。気持ちを落ち着けて見てみれば意外と対応可能だったりします。

ただし、冷静に見つめた結果、自分ではどうしてもコントロールできないと分かることもあります。
組織における「Uncertainty:不確実さ」 には、外的要因、組織要因、個人要因の3つの要因があります。100%外的要因の場合は、自分や組織ではどうやってもコントロールできません。また、組織要因で自分の権限を越える範疇の物事の場合も、自分ではコントロールできないので、いつまでも頭を悩ませていても仕方ありません。コントロールできないという事実をはっきり「確実:Certain」にして、その前提でどう対応できるのか先に進むしかありません。

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2.不安が的中した場合のリスクを考える

不安や恐れが的中した場合にもたらされるリスクを考えます。
リスクマネジメントにおけるリスク対応を一言でいえば、最初にリスクを明らかにして、定性的、定量的に評価し、最終的に、回避(avoid)、転嫁(transfer)、軽減(mitigate)、受容(accept)の4つの対処対応のどれかを選択します。リスクの対処方法はこの4つしかありません。

簡単な例として、前回紹介した、初めて個人旅行で行く国で初めてタクシーに乗る場合、「運転手にぼったくられるのではないか?」という不安を考えてみます。

「ぼったくられるのではないか?」という不安は取り合えず横に置いておき、よくよく冷静に考えたり調べたりしてみます。このような情報はインターネットでもある程度取得可能です。
その結果、仮にぼったくられても「あれ?たかだか数百円かな?」とわかるかもしれません。それであれば、リスクは「数百円の財産を失う」ということです。数百円程度のリスクなら「ぼったくられても授業料」位に思って、そのリスクを受容(accept)することもできます。

これが単にぼったくられるだけでなく、強盗など命の危険まで考えられる場合なら、リスクを回避(avoid)して別の手段を取るべきでしょう。また事前に調べるうちに、特定のタクシー会社は比較的信頼でき、そのタクシーを利用すればまず安心という情報を得るかもしれません。その場合は、必ずこの会社のタクシーを選ぶことで、リスクを軽減(mitigate)できます。
なお、転嫁(transfer)の例としては、保険があります。旅行者保険がぼったくられたたかだか数百円の損失で保険を使うことはないかもしれませんが、リスクを保険会社に転嫁することができます。

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3.小さなことからやってみる

不安が的中した場合のリスクを軽減(mitigate)できるようなことがたとえ小さくてもあるのなら、それをやってみる。やることが分からなければ調べてみる、相談してみる。小さなことでもいいからとにかく何か行動に移せることがないか、少しでも「Uncertainty:不確実さ」を減らせることがないか考えてみます。

例えば、「この事業改革案、事業部の鈴木部長が見たら絶対反対するよ。あの人頭固いし、言うこときついし嫌なんだよ。なんて言われるかな。。。」という不安があるとします。不安の感情に支配されて行動できないでいる限り事態は1ミリも良くなりません。
取り合えず、不安は横に置いておき冷静に考えてみます。相談できる人がいれば相談してみます。
いずれは鈴木部長に相談しなければならない改革案であるならば、「Uncertainty:不確実さ」を後に引きずれば引きずるほど、鈴木部長が知るのを先に延ばせば延ばすほど解決が難しくなり、ハードルが上がり、リスクが大きくなります。事前に直接鈴木部長相談して意見を聞いて「Uncertainty:不確実さ」を無くしてしまった方がいいという考えに至るかもしれません。
先に延ばして猛反対されて進まなくなるよりも、ちくちく言われるかもしれないが今正直に相談しておいて白黒はっきりさせておこうと冷静に考えられるかもしれません。最初に相談に行くという小さな行動で、後に大きな問題となってしまうリスクを防ぐこともできます。

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4.「恐れ」を「興奮・楽しさ」に転換する

ステップ1~3は、「Uncertainty:不確実さ」を無くしていくための方法ですが、「Uncertainty:不確実さ」に対峙した時の「恐れ」を「興奮・楽しさ」に転換するためには、そもそもの目的を明確にする必要があります。
目的がはっきりしていれば、「Uncertainty:不確実さ」をつぶしていく作業は、目的に近づいていくプロセスと感じられるでしょう。
「恐れ」は、そもそも「Uncertainty:不確実さ」の負の影響に注意・関心が集中することによっておきます。ネガティブな視点ではなく、ポジティブな視点に置き換えて「恐れ」を「興奮・楽しさ」と捉えられるようにします。前回説明したように「恐れ」と「興奮」は表裏一体の感情です。できるだけポジティブな側面に目を向けましょう!

「恐れ」を「興奮・楽しさ」に変えることができる人は、その背景に強い目的や価値観があります。例えば、自己成長を目的としていれば、1つ1つの恐れを乗り越えるステップは、目的に近づく1歩1歩の歩みであり、自分の成長に楽しさや喜びを感じられるでしょう。

繰り返しますが、練習と時間が必要です。急に「恐れが今日から興奮に変わってびっくりした!最高!!」という事はあり得ません。どんな小さなことでもいいので、できると思うことから始めて少しづつ大きなことにトライしていきます。残念ながらこの作業を邪魔してくる人たちが周囲にいるかもしれませんが、目的達成への思いが強いほど、周囲からの妨害にも影響されず進んでいけるでしょう。

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5.「Uncertainty:不確実さ」を受け入れる

ステップ1~4と説明してきて、この最終ステップで一気にハードルが上がります(汗)。
ステップ5は、最終的には物事は全て「Uncertain:不確実」だと受け入れることです。
突然で恐縮ですが、仏教には4つの根本的な教理を示した四法印があります(Wikipedia「四法印」より)。
諸行無常・諸法無我・一切皆苦・涅槃寂静がその4つになりますが、そのうち「諸行無常」は、この世の現実存在(森羅万象)はすべて、姿も本質も常に流動変化するものであり、一瞬といえども同一性を保持できないことを意味します(Wikipedia「諸行無常」より)。

つまり、諸行無常は、世の中に変わらないものなどなく、変化は常にある、「Uncertainty:不確実さ」は常にある、と示しています。
「Uncertainty:不確実さ」は、VUCA時代だからあるのではなく、全ての時代に通じて常にあるのです。「不滅」なことは真理だけ、つまり「物事は常に変わる」というような真理が「不滅」なのです。「確実:Certain」と思われるようなものでも、それは一時的な状態、そう見えるだけに過ぎず、物事は全て移り変わっていきます。最終的にはそれを受け入れ、私たちは「Uncertainty:不確実さ」の中に生きる、不確実さと寄り添って生きるのです。

不確実さの中にいるのが耐えられず、どうしても、架空の確実さ、虚構の真実にすがってしまいがちです。
しかし、本来的には全ては不確実であるという前提のもと、世の中全部「Uncertain:不確実」で変わっていくという前提を受け入れられれば、無理に抵抗することもなく、体も心も楽になります。

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最後に

突然仏教を持ち出しましたが、宗教の教えもマネジメントの原理も最終的には同じ所に行きつくように思います。
私のような宗教に深い造詣もない人間が何をえらそうにと怒られるかもしれませんが、宗教は「自分は何者で、何のために存在し、どう生きるべきか」というような事を説いていると思います。人も会社も、つまるところ、パーパス=「自分(会社)は何者で、何のために存在するのか」、ビジョン、ミッション=「どう生きるべきか」の根源的な理念が、存続を支え、成長を推し進めます。

会社も人の集まり、社会体ですから、そういう意味では仏教をはじめとする宗教の教えと、ビジネスの究極的にあるべき目的が同じ点に収束してもおかしくはありません。

以上、「Uncertainty:不確実さ」への対応方法を紹介しました。最終ステップの「全てはUncertain:不確実」という悟り?までは至らなくても、前回から2回に渡って紹介した「Uncertainty:不確実さ」への対処方法が少しでもお役に立てば嬉しいです。

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参考文献
(1) Rebecca Joy Stanborough, “Understanding and Overcoming Fear of the Unknown“, 2020/7
(2) Mike Veny, “Are Anxiety and Excitement the Same?“, 2018/10
(3) Joel Garfinkle, “How to thrive as a leader facing uncertainty, ambiguity and change”, 2020/5
(4) Aytekin Tank, “How to learn to embrace your anxiety (and turn it into excitement)“, 2019/9 

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