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リーダー、マネージャー、コーチ:求められる3つの役割

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2022年2月2日
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同じことをひたすら繰り返して成長できた時代は既に過ぎ去り、先が見えない状況で成果を出していくために、会社の経営層、上級管理職から中間管理職、更にはプロジェクトマネージャー等のマネージャークラスには、より多くの役割が求められます。その3つの代表的な役割が、1.リーダー(リーダーシップ)、2.マネージャー(マネジメント)、3.コーチ(コーチング)です。それぞれの役割について説明します。

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概して会社を牽引する社長を筆頭とする経営層には強いリーダーシップが求められ、それ以下の管理職にはマネジメントスキルが求められてきました。しかし、社長はリーダーシップだけを発揮すれば良い、部長はマネジメントだけすれば良いというものではなくなってきています。旧来型の指揮官が兵隊に命令する様な関係と役割から、より非公式・ソフトな人的スキルや影響力、更にはコーチングのスキルが求められてきています。
経営層から、部長、課長まで、程度や範囲の違いこそあれ、役職に関係なく3つのスキルが必要になってきています(1)

その3つのスキルである1.リーダー(リーダーシップ)、2.マネージャー(マネジメント)、3.コーチ(コーチング)はどういう役割でしょうか?

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1.リーダー(リーダーシップ)

リーダー(leader)は、リード(lead)の文字通り、組織の先頭に立ちビジョンを掲げ組織を引っ張ります。リーダーは組織に変化をもたらします。組織のビジョンを達成する方法は未知で、組織内の人間は分からず、組織がこれまでに行わってきた事の延長では達成できません。リーダーは、自分自身や率いる組織のメンバーたちを、これまで行ったことのない道を通って、これまで行ったことのない場所に連れて行く役割を担います。下図の船長のように、「あの星をめがけて未知なる海に船を進めるぞ!」と皆に向かうべき方向を示す役割です。

図:リーダー(リーダーシップ)のイメージ図

会社の階層構造を昇るに連れて、より大きなリーダーシップが求められますが、組織の中間層のマネージャークラスでも、それぞれが率いるチームのメンバーに対してリーダーシップを発揮する事が必要です。

リーダーの役割
● 目的、ビジョン、ミッションを定義し、コミュニケーションを通して成果を明確にする
● リーダー自身が変化を促進し、率先して行動し、組織の模範となる
● 情熱を持って、言葉と行動で方向性を伝える事で、メンバー全員を活気づけ、組織としての力を高め、全員が同じ方向を向いて行動する組織としての推進力を高める
● 政治的、官僚的な障壁やその他種々の障害、衝突、矛盾を取り除き、組織のメンバーが安心して成果の達成に努力できるよう地ならしする
● 重要事項、難しい局面、先の見えない分岐点で、行くべき方向を決断する

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2.マネージャー(マネジメント)

マネージャーは、リーダーが掲げた目的、ビジョン、ミッションを組織のメンバーたちと共に具現化していきます。マネージャーの役割は多岐に渡ります。下図のように、メンバーの一人一人が能力を高め、そして発揮できるように支援し、更にはチームとして動きを合わせ連携して成果を出せるように、チームを指導、管理、まとめていく役割です。

図:マネージャー(マネジメント)のイメージ図

マネージャーの役割
● 目的、成果を達成するため、ルールや手順を明確化し、メンバーと共有、計画、実行し、進捗を管理する。また定期的に評価・レビューし修正を行う
● 組織のメンバーたちが目的に向かって業務を遂行できるように管理、支援すると共に、目的に対する責任を負う
● メンバーの適性を把握し反映した人員配置と権限移譲、その他のリソースの配置を行う
● 目標を達成するためにメンバーの能力を最大限に引き出すため、モチベーションやエンゲージメントの管理、育成や能力開発を行う
● 組織内の問題を整理、解決、改善し、コミュニケーションを通してチームの生産性を高める
● 目的を達成するため、他の部署や組織との連携や調整を行う

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3.コーチ(コーチング)

コーチ(コーチング)は近年その重要性が増してきている役割です。
プロのコーチングを専門とする世界最大の非営利団体である国際コーチ連盟(International Coach Federation)は、コーチングを、「クライアントをパートナーとして、クライアントの思考を喚起し、個人的、職業的な潜在能力を最大限に引き出す事を鼓舞する創造的なプロセス」と定義しています(2)。プロのコーチにとってはお客さんがクライアントですが、組織内では、クライアントはコーチする相手 = チームメンバーになります。
エグゼクティブコーチング業界のパイオニアのジョン・ウィットモアも、「能力のあるコーチは、人の潜在能力を解き放ち、最大限のパフォーマンスを引き出す」としています(3)

コーチングと似たような役割にメンタリング(メンター)がありますが、メンタリングは、ある業務で経験と知識を既に持つ従業員(メンター)が、同じ業務で経験や知識が少ない従業員のスキルアップを支援するものです。
メンターは経験と知識を相手に伝える、教えるのに対して、コーチングは既に相手の中にあるものを引き出すことを目指します。コーチの仕事は、クライアントがすでに持っているスキル、リソース、および創造性を呼び起こし、自分のゴールに対する責任感を引き出し、そして達成することです。
更に似たような役割にトレーニング(トレーナー)があります。トレーニングは、取得すべきスキルをあらかじめ明確にして、決まった手順やカリキュラムを使ってトレーナーやインストラクターが教えていくプロセスです。コーチングは、その逆でコーチされる方が目的を設定し、コーチは「気づき」を促し、目的にたどり着くプロセスをガイドしていくものです。

図:コーチ(コーチング)のイメージ図

ビジネスの不確実性が増し、また多様性に対応するだけでなく多様性を生かす必要がある背景において、コーチングは、リーダーシップやマネジメントに比較して、より最近必要とされ始めてきている役割です。しかし現状はコーチングのスキルやノウハウは組織内部には無いか限られる事が多いため、日本でも外部コーチを使ってコーチングの仕組みを導入する会社も増えてきています。大事なのは、コーチングというシステムを導入する事ではなく、コーチングを組織文化として取り入れ、組織として醸成していく事です。

コーチング文化を組織内に醸成するためには以下の点が必要になります(4)
● 組織のトップが自らコーチングを受け入れる事
● 従業員が定期的に学習する機会を設ける事
● 従業員が学んだ事を実行に移す支援をする事
● 成果に対して前向きに責任(オーナーシップ)を醸成する事

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リーダーシップ、マネジメント、コーチングが過剰な失敗例

以上、リーダーシップ、マネジメント、コーチングの役割を紹介しました。
最後に、それぞれの役割が欠如、低い場合が問題である事はもちろんですが、逆にこれらの役割が過剰な場合も下記のようなマイナス効果を生じる可能性があるので注意が必要です。日本の会社は特にマネジメントが過剰なケースが多いのではないでしょうか?

リーダーシップが過剰なケース
● ビジョンが大きすぎ又は多すぎて、どうやってそれを達成していくかの方向性、具体性がない
● 理念的な話、メンバーを鼓舞する事に一生懸命で、実行や自らの行動が伴わない

マネジメントが過剰なケース
● マイクロマネジメントで、メンバーに細かい指示ばかりで権限を与えず、部下が自律的に考え実行するのを妨げる
● 既存の手順やプロセスを順守する事に集中し、達成すべき目的、ビジョン、ミッションの意識が薄い
● メンバーの管理に注力し、モチベーションやエンゲージメントを高める事ができず、不平不満にも対処できない

コーチングが過剰なケース
● 相手を成長させる意識が強すぎたり、特定のプロセスや質問に固執する
● 過剰に課題を複雑化したり、解析し過ぎる
● 過剰にコーチングする事で相手の自身の目的に対する責任感(アカウンタビリティ)の醸成を妨げる

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参考文献
1.Dargin Star, ”Leading, coaching, and managing: which hat to wear and when”, presented at PMI® Global Congress 2012/10
2.International Coaching Federation in partnership with Human Capital Institute, “Building a Coaching Culture”, 2014
3.Herminia Ibarra and Anne Scoular, “The Leader as Coach”, Harvard Business Review, 2019/11-12
4.Bill Bennett, “The Four Steps to Building a Coaching Culture”, HR Daily Advisor, 2019/6

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