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Self-transforming leader:リーダーは自らを知り、自らを変える

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2023年4月2日
  • Reading time:7 mins read

歴史上のリーダーや偉大な経営者の中で、自分はソファーに座ったまま、あるいは机から離れることなく、周囲の人たちをけしかけるだけで、大きな変革を成功させた人はいるでしょうか?
多くのリーダーは自分が機能していないことに気が付いていません。周囲の誰の目にも明らかなのにもかかわらずです。多くのリーダーは裸の王様です。

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はじめに

歴史上のリーダーや偉大な経営者の中で、自分はソファーに座ったまま、あるいは机から離れることなく、周囲の人たちに指示したり、けしかけるだけで、大きな変革を成功させた人はいるでしょうか?

以前本サイトで適応型リーダーシップ(アダプティブ・リーダーシップ:adaptive leadership)を紹介しました。(1)
適応型リーダーは、急激に変化する外的環境に適応し、高い顧客満足度や従業員のモチベーションを実現し、長期に渡り成長するために、結果が出ない従来のやり方に固執して従業員たちの時間と気持ちを浪費させるのではなく、環境の変化に応じたビジョンを掲げ、役に立たない従来の考えや行動から組織と従業員を切り離していきます。適応型リーダーは、組織に新しい学びや実験を呼び込み、組織を外的変化に適応できるようにしていきます。

リーダーが適応型リーダーシップを発揮することは、与えられた仕事や決められた役割をうまくこなすこととは根本的に異なります。私たちは長い間、リーダーシップという概念を、権威、権力、管理能力などと混同してきました。
それらは、安定して成長する市場で成功するために必要なものではありますが、リーダーシップとは関係がありません。

そして、いまだ多くの人たちが、必要な適応的変化を組織にもたらすことなく、権威あるポジションに居座っています。
また、大きな権限はないものの、多くの「フォロワー」を持つ人たちもいますが、その人たちも、変化に対処するために自分のフォロワーをうまく動かせません。そのような人たちは、フォロワーから信用、信頼、尊敬、称賛されるという形で、大きな力を持っていますが、その力を守るためにフォロワーに迎合し、フォロワーの耳に痛い言葉を投げかけるのを避けさえします。そして、「変わらなければならないのはあの人たちだ。悪いのはあの人たちだ」と他のグループの人たちに矛先を向け、自分やフォロワーを変化から守ろうとします。

リーダーシップは「実践」です。リーダーシップは仕事や役割などの名詞ではなく、動詞、つまり行動です。

リーダーは、価値、目的、プロセス、規範と自ら格闘する必要があります。リーダーは、快適な環境から一歩踏み出し、勇気を持って本当に求めるべきものを求め、自分の価値観や目的とつながることで、新しいレベルで組織に影響力を与えることができるのです。

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Self Change:まず自分を変える(インナーチェンジ)

リーダーシップに関する書籍や情報は世の中に膨大に存在します。しかし、その多くは、リーダーがどうやって他人を管理し、他人の意識を変え、他人を動かしていくかに焦点を当てています。
しかし、その前に必要なのはリーダー自身が自分を変えることです。つまり、自らを変えるリーダー(Self-transforming leader)であることです。

自分ができなければ、人にやれと言ってもできるようになりません。
自分が何も考えていないのに、人に考えろと言っても人は考えるようになりません。
PDCAを回せない上司が、部下にPDCAを回せと言って回させることはできません。
心理的安全性のない上司が、組織に心理的安全性を求めても、人は自由に発言しません。
行動に移せと部下たちをけしかける上司自身が、温かな日差しが差し込む窓際の席から重い腰を上げなければ、部下も行動には移さないのです。

人に変化をもたらすには、自分が自分を変えることができなければなりません。
自分の言葉に自分自身が誠実でなければ、他人がその言葉に誠実にはなれません。
誰かに良いアドバイスをしたつもりでも、まず私たち自身がそのアドバイスに従うことができなければ、他人がアドバイスを聞き入れることはありません。

英語で言えば、「ウォーク・ザ・トーク:Walk the Talk(言行一致)」や「ウォーク・ザ・ウォーク:Walk the Walk(自分で歩むと決めた道を歩む)」です。「Talk the Talk(口先だけで何もしない人)」はリーダーとしては失格です。「Don’t Talk the Talk if you Can’t Walk the Walk(自分で実行できないなら、口先だけで偉そうなことを言うな)」です。

もし、自分が思うように人が動いてくれないと悩みや難しさを感じたなら、その悩みを解決する最善の方法は、自分自身がまず自分の言葉通りに行動してみることです。

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他人の見本となり、鏡となる

自分の外側の世界は、自分の内なるものを鏡のように客観的に投影したものです。
もし他人に欠点を見つけたなら、その欠点は間違いなく自分の中にもあると確信しましょう。まわりの人たちがうまく動かないのは、自分が動いていないからです。問題は自分にあるのです。

そして、あなたは自分の中でそれを変えることから始めます。自分の中でそれを変えることができたとき、他人の中でもそれを変える動機が生まれるのを見るでしょう。

自分が変われば、状況も変わります。内側の世界を変えれば、外側の世界も変わります。自分自身をコントロールすることは、他人をコントロールするための必須条件です。人は、内なるものをコントロールできなければ、外なるものをコントロールすることはできません。なぜなら、それらは同じものだからです。

もし私たちが他人にこうしたらいいのにと思うのならば、自分がまずそれを実行し、あるべき姿の模範を示すのです。そのことによって、効果的に人の手助けをすることができます。
リーダーは、常に模範を示さなければなりません。リーダーは、人を理解し、忍耐強く、共感に満ちていなければなりません。これは、自分のためにフォロワーや手下を獲得しようとするエゴからではなく、他人を理解し助けるようとする寛容さからです。

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例えば、DX(デジタル・トランスフォーメーション)(2)

DX(デジタル・トランスフォーメーション)が叫ばれてから久しくなりました。それとも、もうブームは下火でしょうか?

多くのリーダーが気づいていないのは、真にDXを成功させるためには、リーダーが従業員たちを後ろから無理矢理押し出すようにして取り組ませようとするのではなく、自分自身がデジタル変革を遂げなければならないということです。つまり、自らが、デジタルディスラプターのように考え、行動するということであり、同時に、この新しい考え方、知識、スキルを既存のビジネスで活用する方法を知るということです。
多くの企業では、適当な部署に指示して1つ2つのテクノロジーを導入することをデジタルと称し、それでDXを成し遂げた気になっていますが、まったく的外れです。テクノロジーは進化し続けるので、DXとは自らが変化し続ける状態の獲得です。

つまり、本当に必要なのは、1回きりの変化や導入だけでなく、継続的な変化へのコミットメントであり、テクノロジーの変化に応じて、継続的に変化する組織を導くための能力を身に付けることです。
もし、リーダー自身が世界に対する見方を変えていなければ、このような変化を導くのは相当難しいでしょうし、このような変化がどのようなものであるべきかを理解することさえも難しいでしょう。

リーダーは、自分の知らない分野に自ら興味を持ち、自ら進んでいくことが必要です。正しい情報に自ら接し、自らを変化させることに前向きでなければ、組織全体に変化をもたらすことは難しいでしょう。
リーダーはその背後に影を落とす(Leaders cast a shadow behind them)」という言葉があります。リーダーが落とす影を変えずに、組織を変えることができるでしょうか?
それは不可能です。
だから、リーダーは自己変革し、自ら外的変化に適合しなければならないのです。

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自分を知る

リーダーたちが自らを変えるためには、自己認識(self-awareness)から始めなければなりません。リーダーたちは、自分がリーダーとして必要なスキルをすでに持っている、あるいはすでに実践していると考えているかもしれません。 しかし、私たちは、自分が意図するように自分を見たり評価したりします。

周囲の人たちはリーダーの行動をよく見ています。何を口にし、どのような行動を取っているかをよく見て、知っていて、言っていることとやっていることが一致していないことにすでに気が付いています。気が付いていないのは自分だけです。

多くのリーダーは裸の王様です。

多くのリーダーは視野を失い、自分の見たいものだけを見て、聞きたいことだけを聞き、知りたいことだけを知ります。その結果、リーダーが率いる人たち、その人たちが属するグループの文化、そして最終的にはクライアントやステークホルダーとの接点まで失ってしまうのです。

リーダーは、自分の価値観は何なのか、どのようなリーダーでありたいのか、内面の自己認識を高める必要があります。それを支える行動は、内省と自己評価を通じて築かれるのです。

高い自己認識を持つリーダーは、自分の強みと弱みを知ります。自分たちがどこに向かっているのかを知ります。そして、人からどう見られているかを知り、それが自分が大切にするものと合致しているかを知ります。自分の感情を知り、それが周囲の人たちにどのような影響を与えるかを知ります。それを知ることで、より良い意思決定ができ、最終的に人を導くことができるのです。
組織を変えるためには、自分が変わる必要があり、そのためには、まず自分自身を発見することが必要です。自分自身を知れば知るほど、よいリーダーになることができます。

内側のものが外側に現れるのがリーダーシップだからです。

自分の心を変えられない人間は、何も変えることができない。 ~ ジョージ・バーナード・ショー
Those who cannot change their minds cannot change anything. ~ George Bernard Shaw

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参考文献
(1) Ronald Heifetz, Alexander Grashow, and Marty Linsky, “The Practice of Adaptive Leadership: Tools and Tactics for Changing Your Organization and the World”, Harvard Business Review Press, 2009/4.
(2) “The Digital Leader: Self-transformation for Long-term Success“, Knowledge at Wharton, Wharton school of the University of Pennsylvania, 2016/11.

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