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組織で見られるスキーマの弊害を乗り越える「行動」と「支援」と「対話」

  • 投稿カテゴリー:Change Management
  • 投稿の最終変更日:2022年11月1日
  • Reading time:6 mins read

スキーマとは、情報を後ですぐ思い出せるように単純化したり分類しておく知識構造です。情報を効率的に処理できるメリットがある一方で、いったん定着すると簡単には変わらない固定観念や先入観を生み出します。組織がこの弊害を乗り越えて変化していくためには、リーダーの「行動」と「支援」と「対話」が必要です。

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スキーマ(schema)とは?

以前本サイトで紹介したように、私たちの脳の情報処理や情報保持の能力は限られています。
限られた能力の中で、外部から入ってくる情報をできるだけ負荷なく、早く、効率的に処理しようとするため、私たちの脳は情報を単純化したり、分類したり、体系化してしておきます。この知識構造を「スキーマ(schema)」と言います。スキーマは本サイトで以前にも紹介しました。

例えば、洋食屋、蕎麦屋、寿司屋、回転ずし、フランス料理店、中華料理屋、割烹料理店、ファミレス、カフェ、これらは全て食べ物屋ですが、言葉を見たり聞いたりして瞬時に思い浮かべるイメージがそれぞれにありますね。スキーマがその手助けをしています。

また、ある種のスキーマは、決まった行動を開始するためのきっかけになります。この種類のスキーマは「スクリプト(script)」と呼ばれます。レストランに入ってから、席について、注文して、食事をして、店を出るまでの行動を思い浮かべると、今紹介した様々なジャンルの食べ物屋で少しづつ違いがありますね。それぞれにスクリプトが紐づいているため、初めて入る店でさえ、どのような種類の店かさえ分かっていれば、店に入ってから途方に暮れたり、店員にいちいちどうしたらいいか聞いたりすることなく、ストレスなくスムーズに食事を楽しむことができます。
逆に下の図のように、店構えがスキーマと合致しないと、違和感を覚えたり、受け入れ難く感じたり、店に入ってからどうすべきなのか事前に分からなかったりします。

図:私たちのスキーマに合わないイメージ例

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私たちはスキーマを利用して、効率良く学習し、考え、行動することができます。私たちが今まで受けてきた教育では、例えば、数学の問題を繰り返し解いて、正しい解答にたどり着く解き方のパターンを覚えます。その解き方をいくつも覚えることで、様々な出題のパターンに対して特定のスキーマを適用させ、すばやく正確に答案用紙に書き出すことができます。この場合、スキーマは頭の中に叩きこんだ問題解法集やテンプレートとも言えるでしょう。私たちは既存のスキーマに合致する情報を、容易に理解し、処理し、適切な行動に移すことができます。

スキーマは、情報や経験にある意味を与える認知の枠組みであり、大まかに言って、以下の3つの特徴を備えています。(1)

  • 思考と行動のテンプレートで、それと一致する個人の経験、すでに獲得したスキルやプロセスと結びついている
  • スキーマの基になった事例と類似した新しい事例を素早く特定できる
  • 問題解決のための推論、予測、計画を導くベースとなる

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組織で見られるスキーマの弊害

スキーマは個人に限らず、職場などにもあります。日々の業務をパターン化し、外部から次から次へと入ってくる情報に対して解釈に多くの時間を費やすことなく、誰もがすばやく正確に対応し業務をこなすことができます。

しかし、スキーマはある種の固定観念もあり、先入観でもあり、バイアスでもあり、ステレオタイプ化でもあります。スキーマはいったん定着すると、変えるのがとても難しいので、私たちは、矛盾する情報に直面しても、既存のスキーマに沿って間違って考え、行動してしまいます。
つまり、既存のスキーマに当てはまらない新しい情報に対して、新しいスキーマを生み出すのではなく、間違ったスキーマに当てはめて解釈したり、既にあるスキーマに適合するように情報を歪曲して解釈したり、スキーマに対する矛盾を例外事例として取り扱ったり、さらには理解できないため単に無視しておくこともあります。また、私たちは、自分が持っているスキーマに合うものにはすぐ気づいたり注意を向ける傾向がある一方で、スキーマに当てはまらない重要な新しい情報を軽視したり、それに全く気が付かないこともあります。

物事が急速に変化している社会で、スキーマは障害になってしまうこともあるのです。

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以前本サイトで、私たちが直面する問題には「技術的な問題」と「適応的な問題」があると紹介しました。
「技術的な問題」は、実績がある解決法やノウハウが個人の頭や組織の中にすでにあるもの、つまり、既存の解決のスキーマがあるものです。
一方で、「適応的な問題」は、確立された解決策がない問題で、既存のスキーマをそのまま当てはめられない課題です。適応的な問題の解決には、「自身の変化」と「新しい学習」が必要になります。
最も典型的な間違いは「適応的な問題」を「技術的な問題」であるかのように取り扱うことです。つまり新しい適応的な問題に対して、既存のスキーマを誤って当てはめて対応し失敗してしまうことです。

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スキーマの弊害に対処し組織が変化していくために必要なもの

私たちや私たちの組織には新しい考え方やモデルを取り入れる変化が求められています。前回紹介したホラクラシーのような、従業員の参加型経営、つまり、従業員の意思決定への参加や権限移譲、エンパワーメントの強化などです。しかし、それがなかなかできないのは、経営者と従業員の双方に、スキーマによる認知的な障壁があるためでもあります。

人は変化に抵抗します。意識的に抵抗する場合もありますが、従業員の抵抗は、利己心なものよりも、頭と体に染み込み長く定着したスキーマが足かせとなり、無意識に適切でない処理をしている場合も多いです。

これには、まず経営者側の問題があります。経営者自身が新しい意思決定のスキーマを明確に描けていない、またはコミットできていないという問題です。
つまり、口では立派なことを言っていても、経営者自身の行動が古いスキーマを引きづっていて変わっていないのです。従業員は、経営者の言動に矛盾を感じる場合、自ら率先して従来のスキーマから外れるようなことはせず、懐疑的に受け止ることさえあるのです。

経営者は、従業員に「宣言」したり「通知」するだけでは、変化は受け入れられないと理解し、それを予期しておく必要があります。たとえ変化が従業員が望むようなものだとしても、「宣言」や「通知」するだけで新しいスキーマが自動的に全員に受け入れられ、歓迎されるだろうと思い込むのは間違っています。

組織変革の成功には、経営者の継続的な「行動」と「支援」の重要性をいくら強調しても、強調され過ぎることはありません。具体的には、以下の6点が必要です。(2)

1.まず、経営者は、変革の取り組みにおいて、それと相反する既存のスキーマが存在すること、そのスキーマは変化を妨げる自己強化サイクル機能を持っていること、従業員が変化の取り組みに対して矛盾した解釈を持つ可能性があることを理解する必要があります。抵抗を変化の必要なプロセスの一部として受け入れることができなければなりません。

2.このことを認識した上で、経営者は、従業員のさまざまな解釈とそれが生み出す感情について、従業員と「対話」する機会を設ける必要があります。一方的な「通知」だけでは機能しません。単に従業員の意見を聞くだけでも達成されません。威圧したり抑圧したり従業員を否定するような経営者の行動は論外で、従業員の古いスキーマを強化するだけです。

3.新しいスキーマへの移行には、経営者自身の行動変容が必要です。はっきりと目に見える形で、言動一致した誠実な行動を取るのです。従業員は、その行動を見ることで、新しいスキーマに対する信憑性を持つことができます。

4.経営者は、自らの行動がもたらす影響に敏感でなければなりません。会議中の何気ない一言や、一見些細な個人的な言動でさえ、意図せずして古いスキーマを強化する働きをしてしまう可能性があることを意識しなければなりません。

5.新しいスキーマを定着させるためには、段階的かつ継続的な支援が必要です。この間、経営者は、言動一致した行動を取り続ける必要があります。経営者と従業員の間に溝や不信感がある場合、より一層大きな努力が必要となることを覚悟しなければなりません。

.特に古いスキーマが強く定着している組織では、経営者が常に新しい意思決定のスキーマと整合性のある行動を取れるとは限りません。経営者は、従業員に対して権限を与えたいと望んでいても、それが何を意味するのか、どう行動すべきか、どのような仕組みを作ればよいのかそもそも完全には理解していないこともあります。
その場合、それを従業員に正直に伝える必要があります。そして、これから共に学んでいこうと伝えるのです。 繰り返しになりますが、あらゆる面で正直で誠実な言動が必要なのです。

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参考文献
(1) Sandra P. Marshall, “Schema-Based Problem Solving”, Encyclopedia of the Sciences of Learning, Springer, Reference work, pp 2949–2950, 2012.
(2) Giuseppe Labianca, Barbara Gray, Daniel J. Brass, “A Grounded Model of Organizational Schema Change During Empowerment“, Organization Science, Vol. 11, No. 2, pp.235-257, March–April 2000.  

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