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自分自身のパーパスを見つめ直す:人や会社とのつながりと自分らしさ

  • 投稿カテゴリー:人が変わる
  • 投稿の最終変更日:2025年7月26日
  • 読むのにかかる時間:7 mins read

働くことのあり方が変わってきています。成功は単に1つの会社での役職や給与の額だけで測られるものではなく、私たちが「ホーム」と呼べる様々な場所で、どれだけ自分らしく生きられるかによって定義されるようになるのです。

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はじめに

以前翻訳した書籍『パーパスの神話』を通して、会社のパーパスと私たち自身のパーパスについて書いてから、はや4年が経ちました。
前回、そして今回と、改めてこれらのパーパスについて見つめ直しています。
前回の記事では、企業のパーパスについて再考しました。今回は私たち個人のパーパスについて再考します。

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個人のパーパス

長年、私たちは仕事こそが人生の目的の中心であるべきだと教えられてきました。
自分に合った仕事に就けば、充実した人生を送ることができる。理想の仕事を見つけ、一生懸命頑張り、より大きな責任を手にすれば、より深い充実感が得られる。
しかし、多くの人たちが、その考えが間違っていたことに気づき始めています。

意義のある仕事が重要でないわけではありません。むしろとても重要です。
しかし、仕事こそが自分のアイデンティティや自尊心の中心、そして帰属意識の源泉であるという考えは、根本的に間違っています。そのおかげで、多くの人が心身のバランスを失い、ストレス、幻滅感、無力感、燃え尽き症候群、そして仕事への意欲喪失を感じています。

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4つのエリアのバランスを取る

以前、私は「自分」「家族」「仕事」「社会」の4つのバランスを取ることが重要だと書きました。「ありたい自分」を中心におき、それをこの4つのエリアで体現するのです。私自身、長年、実際にこの4つのバランスを意識しながら、4つのエリアで自分の価値観を体現しています。この考えに全く変わりはありません。

このモデルで言えば、仕事は人生の4分の1程度です。実際に仕事に費やす時間は4分の1よりも多いですが、私も気持ち的にはその位の感覚です。この感覚を保つことで、仕事に自分を過度に重ね合わせてストレスを溜め込んだり、人生の他の大事な要素を見失うことを避けることができます。

しかし、残念ながら多くの人はバランスがとれておらず、いまだに「仕事」のエリアが突出しています。4分の1位の感覚で臨んだ方が、実は全体的に見れば仕事の生産性も高まるのにです。

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「自分らしさの願望」と「帰属願望」

私たちは何らかのグループに属していたいという願望と、自分らしくありたいという願望を併せ持っています。両方とも人生を送る上でなくてはならない健全な感情ですが、多くの場面でこの2つの願望は対立します。

例えば、自分の気持ちに正直に行動すると、他の人たちから良く思われなかったり、他人を不愉快にすることがあります。職場で「忌憚のない意見をお願いします」と言われて、本当に正直に話したら、激怒されることさえあります。

グループへの帰属性を重視すれば、自分らしい発言や行動は控えなければなりません。
しかし、「真のありのままの自分」は、人間の根源的な欲求であり、私たちの幸福、自信、そして仕事で成功する能力に直接影響を与えるものです。

以前本サイトで紹介した、トラウマや子供の発達の専門家であり、医師でもあるガボール・マテ(Gabor Maté, 1944 -)は、「自分らしさの願望:authenticity」と「人とのつながりの願望:attachment」の間には対立関係があると書いています。

自分らしくあること:authenticity」とは、自分自身の考え、感情、価値観に忠実であることを指します。自分に誠実であること、そして内なる自分と調和した行動をとることを意味します。自分らしく生きることは、人生の満足度と充実感を高めるためにとても重要です。

一方で「人とのつながり:attachment」は、人への愛着であり、人との絆を維持したい、他人に受け入れられたい、集団に属していたいという生物学的および感情的な欲求です。

幼少期は、愛着の願望が、自分自身でありたい願望を上回っています。なぜなら幼い子供たちは、親や周囲の養育者から世話を受けることなく、生き延びていくことができないからです。

人は成長するにつれて、自分自身でありたい願望が膨らんでいきます。
ただし、大人になってからも、つながりの願望はなくなりません。

これらの願望が衝突すると、多くの場合、つながりが優先されます。なぜなら、大人になってからも、人が健全な社会的生活を続けるためには集団に帰属することが不可欠だからです。人は社会とのつながりなく生きてはいけません。また、幼少期のつながり方が、大人になってからの他人との関わり方にも強く影響するからです。

これは小さな子供が大きくなり、大人になり、親元を離れ、働き始めた職場にも当てはまります。

子どもが自分の内なる声に忠実であることが両親に受け入れられないと感じたとき、子どもは自分を犠牲にしてでも両親を満足させるために従います。

従業員が自分の内なる声に忠実であることが上司に受け入れられないと感じたとき、従業員は自分を犠牲にしてでも上司を満足させるために従います。

私たちは常に自分が何者で、自分がどう感じているかを手放すことで、肉体的、感情的、経済的、社会的な生存を維持しようとするのです。

この「人とのつながり」が健全に機能していればよいですが、問題は、つながりがうまく機能していないだけでなく、すでに壊れていたり、自分らしさを押し殺し成長を妨げたり、有害でしかなく健康や心身のバランスを損ねたりすることがあることです。

会社で働く多くの人たちが、硬直した企業文化に適応したり、理不尽な要求に応えたりするために、自分らしさを犠牲にしています。本当の自分を抑制し、意見を口にするのを控え、周囲に溶け込むため、自分自身ではない職場でのパーソナリティを身につけていきます。
時間が経つにつれて、このつながりへの固執が、葛藤やストレス、病気へと発展することがあるのです。

壊れた愛着に執着する必要はありません。それがなくても私たちは生き残れるどころか、それがない方が健全に生きることができます。

ただし、つながりに必要以上に執着する悲劇は、私たちがこの世に生まれてきて、人生の始まりに正反対の方向へ向かわざるを得なかった必然的なプロセスに起因しています。私たちは、流れに逆行しながら川の中を上流に昇っていくように、成長と共にそれを覆さなければならないのです。

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帰属意識の新しいモデル

キャリアがより流動的になるにつれ、「帰属」そのものの意味や考え方も変化しています。

かつては、仕事におけるアイデンティティは、単一の雇用主、業界に縛られていました。しかし、そのモデルはすでに変わっています。

今や、帰属意識とは、様々な場所を自由に行き来している人たちのつながりを含めた広いつながりを意味しますもはや、旧来的な職場、閉ざされた組織への固定化した帰属意識は有害となることが多く、複数の専門職や文化的なコミュニティ、地域のコミュニティなど、様々なネットワークに関わることで、むしろより自由で有益な帰属意識を強められます。

仕事を中心とし、1つの会社、1つの業界に生涯を捧げるという古いキャリアモデルは急速に衰退しつつあります。
1つの会社でずっと働くこと自体が悪いと言っているわけではありません。そこで、良好なつながりを築き、自分自身を体現できているのであれば、それ以上望む必要はありません。
しかし、そのつながりが、自分が自分自身であること、自分に誠実であることを妨げているのであれば、私たちは考え直さなければなりません。

働くことのあり方が変わってきています。
成功は単に1つの会社での役職や給与の額だけで測られるものではなく、私たちが「ホーム」と呼べる様々な場所で、どれだけ自分らしく生きられるかによって定義されるようになるのです。

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自分らしく生きる

ユトレヒト大学が2024年に実施した調査によると、職場で自分らしく自由に表現できる従業員は、仕事への満足度が著しく高く、ストレスが低いことがわかりました。その理由は、自分らしさを隠したり、演技する必要がなくなることで、エネルギーを存分に発揮し、真のつながりを築き、より深い自分との一体感を感じられるからです。

自分らしさとは、永遠に1つの自分に固執することではなく、自分自身が何者であるか、そして仕事に何を求めるかは時間とともに変化するという事実を尊重することです。

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「自分らしさの願望」と「帰属願望」のバランス

なぜ自分はこんな風に考えているのか?
なぜ自分はこんなことを信じているのか?
そして一体誰の声を聞いて行動しているのか?
自問自答してみてください。

それはあなた自身の声でしょうか?
それとも他の誰かの声でしょうか?
両親、先生、上司、同僚、友達の声でしょうか?
あるいはユーチューバーの声なのかもしれません。

一体誰の人生を生きているのでしょうか?
あなたは何を望んでいるのでしょうか?
そして、なぜそれはあなたにとって大切なのでしょうか?

自分自身であること:authenticity」と「人とのつながり:attachment」の物差しの目盛りのどの辺りにあなたはいますか?そしてどの辺りにあなたはいたいですか?

「自分らしさ」と「人とのつながり」の物差しに自分に当てはめてみてください。

自分自身のバランスを見つけましょう。
仕事だけではなく、家族や社会、自分自身など、様々なものについても物差しに当てはめてみましょう。
共通した答えはありませんし、正解もありません。
しかし、健全なつながりからは距離を置き、むしろ有害なつながりに接近しすぎていることはありませんか。


このセルフワークを行った後、もしかしたら束縛が少し解けたように感じるかもしれません。
突然、自分の声が聞こえ、人生が自分のものに近づいたように感じるかもしれません。
あるいは、自分の人生と自分が何を望んでいるのかをより積極的に考えるようになるかもしれません。

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さいごに

旧来的な会社勤めが、新しい働き方に置き換わるのみでなく、働くこと自体の概念が変わりつつあります。
私たちは働くためだけに生まれてきたのではありません。
働くことは必要です。しかし、それがすべてではありません。抑圧された職場で人生の大半を過ごすことは、人生の大義名分としてはあまりにもミスマッチです。

会社にあなたの人生を決めさせるのではなく、あなた自身が自分の人生を築いていきましょう。

ガボール・マテは、自分らしさとつながりへの愛着のバランスをとることの重要性を強調しています。自分の行動パターンの根源を理解することで、大切な絆を断ち切ることなく、自分のニーズや感情を優先できるようになります。

最後にそれを実現するための4つのステップを紹介します。

1.気づき
まずは、つながりのために自分らしさを犠牲にしている瞬間を認識することから始めましょう。気づきは変化への第一歩です。先ほどのセルフワークはそのためのツールになります。

2.内省
なぜ自分らしさを押し殺す必要があると感じるのか、自問自答してみましょう。自分を責める必要はありません。自分への思いやりを持って問いかけましょう。機能しなくなった信念や恐れに基づいていることがあります。一度それを真正面から冷静に認識することができれば、それを変えることができます。

3.コミュニケーション
オープンで誠実なコミュニケーションをとりましょう。自分にとって何が大切かを理解し、周りの人たちに、自分のニーズや感情を丁寧に誠実に伝えましょう。

4.健全なつながりを築く
自分自身でいられることができ、かつお互いを尊重できる関係を求めましょう。健全な愛着は、人の成長と相互理解の両方を支えるものになります。

自分らしくあることと人とのつながりのバランスを取ることは、どちらか一方を選ぶことではありません。それは、自分自身を尊重しつつ、意味のあるつながりを維持しながら、両者を統合していくことです。それによって、最終的により充実した調和のとれた人生を導くことができます。

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