You are currently viewing パーパス、ビジョン、ミッション:それぞれの意義と違い

パーパス、ビジョン、ミッション:それぞれの意義と違い

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2022年2月2日
  • Reading time:8 mins read

会社の理念を示すものに、パーパス・ビジョン・ミッションがあります。パーパスは、「会社は何のために存在するのか?」という会社のそもそもの存在意義、ビジョンは、会社がどこに向かうのか、目的とする未来の姿です。ミッションは、どうやってその未来の姿にたどり着くのかを示すものです。

~ ~ ~ ~ ~

前回、会社のパーパスについて紹介しました。
会社のパーパス(目的)は「会社は何のために存在するのか?」「会社で行う事の全ては、何のために行うのか?」という会社の存在意義を示すものです。パーパス・ドリブンとは、その存在意義を会社の理念の中心に据える事です。
環境問題や所得格差等の社会的な課題が大きくなる中、またビジネス環境の不確実性が増す中、強い目的を持ち、社会的な課題に真剣に取り組む企業に多くの人は共感し、そのような会社で働きたい、そのような会社から商品やサービスを買いたいと思うようになってきています。

今回は、企業理念としてパーパスと共に語られることが多く、そして一方で混同されたり、意味を取り違えられたりすることも多いビジョン、ミッションを取り上げ、それらの意義、役割、違いを紹介します。

~ ~ ~ ~ ~

ビジョンとミッションの意義と違い

以下ビジョンとミッションの意味と違いを分かりやすく説明している事例をいくつか見て行きましょう。

1:アイオワ州立大学エクステンションの紹介例(1)
ビジョン:何を成し遂げたいかのビッグピクチャー(大局観)
– Big picture of what you want to achieve.
ミッション:どうやってビジョンを実現するかの大綱
– General statement of how you will achieve the vision.

2:フォーブスの記事紹介例(2)
ビジョンは未来の姿。ミッションはそこにたどり着くまでのロードマップ
– Vision is the picture. Mission is the road map to get there.
ビジョンは会社がどこに行くのか。ビジョンは「Be」  

– A vision is where the company is going. vision is the “be.”
ミッションは、ビジョンを行動に移すため、ビジョンを具体化したロードマップ。ミッションは「Do」
– Mission is an actionable vision statement – the road map to making the vision become tangible. It is the “do” process.

3.カンザス大学(Center for Community Health and Development)の紹介例(3)
ビジョンは夢。組織がコミュニティに対して理想的な姿と信じるもの
– Your vision is your dream. It’s what your organization believes are the ideal conditions for your community.
ミッション・ステートメントは、ビジョンを行動に落とすアクションプラン
– Mission statement – action planning process is to ground your vision in practical terms.

4.デイビット・ブルクス氏(マネジメント研究者、著者)の紹介例(4)
ビジョン・ステートメントは、組織が将来成功した場合どのようになっているか、どこに向かうのかの表明
– A vision statement is a statement of what the future looks like if the organization is successful. Itʼs a statement of where you as a company are headed.
ミッションは「How?」。ビジョンをどうやって現実にするのか
– your mission on the other hand answers the question “how?” as in “how are we going to make that vision a reality?”

5.ClearVoice社の記事紹介事例(5)
ビジョン・ステートメントは、組織がどうなりたいか「明日」にフォーカスするのに対して、ミッション・ステートメントはそのために組織が何をすべきか「今日」にフォーカスする
– The vision statement focuses on tomorrow and what the organization wants to become. The mission statement focuses on today and what the organization does.

6.ガブリエル・ボッシェ氏(The Purpose Company社創業者、著者)の紹介例(6)
ビジョン・ステートメント:将来何をしたいか
– Vision Statement: What we want to do
ミッション・ステートメント:どうやってそこにたどり着くか
– Mission Statement: How we get there

~ ~ ~ ~ ~

パーパス、ビジョン、ミッションの相関

上記の紹介例からビジョンとミッションの意味と違いがお分かりになったでしょうか?紹介例の繰り返しになりますが、ビジョンは「会社がどこに向かうのか目的とする未来の姿」です。 ミッションは「ビジョンを実現する為に何を達成すべきか」になります。

真に定義されたパーパス、ビジョン、ミッションは、会社の成功を明確にし、組織がそこへ向かう原動力、強力な推進力となります。
フレームとしては、下図のように、会社のパーパス、ビジョン、ミッションが頂上に位置し、それを達成するために、その下層に中長期的な経営計画があり、更にその下層に事業戦略などが位置し、そして部署単位やチーム単位の個別の短期的な計画や取り組み、アクションプランとして、具体化に計画され実施されていきます。

図:パーパス、ビジョン、ミッション、経営計画、事業戦略の相関図

~ ~ ~ ~ ~

パーパス、ビジョン、ミッションの事例

では、実際の企業や団体の素晴らしいパーパス、ビジョン、ミッションの事例を見ていきましょう。

まず、パーパス(目的)の事例です。

【パーパス(目的)の事例1】デロイト(Deloitte)社
「Deloitte makes an impact that matters.」

直訳すると「デロイトは重要なインパクトを創出する」ですが、日本語に訳すと英文にある強さと意志が失われてしまいます。シンプルなメッセージほど日本語に翻訳するのは難しいですね。「最も価値があり、核心的なインパクトを生み出していく」というような意味です。

【パーパス(目的)の事例2】ウォルマート(Walmart)社
「Saving people money so they can live better.」

これも簡単なようで、意外に、そのメッセージの強さを引き継いだままシンプルな日本語にするのは難しいです(汗)。
低価格で知られるウォルマート社ですが、お客さんが日常品を安く買う機会を提供する事で、お客さんのお金を節約し、より良い生活を支援するというメッセージです。ウォルマートでの買い物でのお客さんの金銭的負担を減らす事で、お客さんが他の所でお金を使う事が出来るようにというお客さん視点のパーパスが素晴らしいです。

~ ~ ~ ~ ~

次は、ビジョンの事例です。

事例1,2は、目にするだけで心を打たれるようなビジョンです。事例2のティーチ・フォー・アメリカは実際に行っている事も素晴らしい団体です。事例3のイケア社のビジョンはシンプルですが、顧客視点からビジョンと行動が一致しているのが見えるためとても共感できます。

【ビジョンの事例1】アルツハイマー協会(Alzheimer’s Association)
「アルツハイマー病とその他の全ての認知症のない世界」
「A world without Alzheimer’s and all other dementia」

【ビジョンの事例2】ティーチ・フォー・アメリカ(Teach For America)
「いつか、この国の全ての子供たちが素晴らしい教育の機会を得るように」
「one day all children in this nation will have the opportunity to attain an excellent education」

【ビジョンの事例3】イケア(IKEA)社
「より快適な毎日を、より多くの方々に」
「create a better everyday life for the many people」

図:ビジョンのイメージ図

~ ~ ~ ~ ~

以下、ミッションの事例です。

【ミッションの事例1】テスラ(Tesla)社
「持続可能なエネルギーへの世界の転換を加速させる」
「accelerate the world’s transition to sustainable energy」

【ミッションの事例2】グーグル社(Google)社
「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」
「organize the world’s information and make it universally accessible and useful」

【ミッションの事例3】ウォルト・ディズニー(The Walt Disney Company)社
「私たちを世界最高峰のエンターテイメント企業たらしめている象徴的なブランド、創造的な精神、革新的なテクノロジーを通じて、他に類を見ないストーリーテリングの力で、世界中の人々にエンターテイメント、情報、インスピレーションをお届けする」

「entertain, inform and inspire people around the globe through the power of unparalleled storytelling, reflecting the iconic brands, creative minds and innovative technologies that make ours the world’s premier entertainment company」

【ミッションの事例4TED
「アイデアを広める」

「Spread ideas」

事例4、TEDのミッションはあまりにもシンプルかつ的を得すぎていて、アハ!という感じです。一方で事例3、ウォルト・ディズニー社のミッションは少し長めですが、読むと「なるほどな」という感じがします。

図:ミッションのイメージ図
(こんなへたくそな絵では分からん!という方は映画ミッション・インポッシブルの
トムクルーズを想像して下さい。。。)

~ ~ ~ ~ ~

日本の会社では、パーパス、ビジョン、ミッションという言葉ではなく、企業理念とか社是という言葉を使う事も多いですが、もちろん日本でも素晴らしい理念を持つ会社は多く存在します。
ステートメントであれ、社是であれ、企業理念であれ、名目はどうであれ、そのメッセージと実際の行動が一致している会社のメッセージはとても強く感じられますし、強い共感を生みます。

【日本の事例1】ファーストリテイリンググループのステートメント
「服を変え、常識を変え、世界を変えて行く」

【日本の事例2】セブン&アイ・ホールディングス社の社是
「私たちは、お客様に信頼される、誠実な企業でありたい。
 私たちは、取引先、株主、地域社会に信頼される、誠実な企業でありたい。
 私たちは、社員に信頼される、誠実な企業でありたい。」

【日本の事例3】サイボウズ社の理念
「チームワークあふれる社会を創る」

~ ~ ~ ~ ~

パーパス、ビジョン、ミッションの落とし穴

最後に、教訓として、成長を推進できない、共感を得る事ができない会社のパーパス、ビジョン、ミッション、企業理念への悪い取り組み方の事例も紹介しておきましょう。

● 語感が良いキャッチフレーズ、耳障りの良いストーリーを意図する
● 投資家にアピールする事を意図する
● 宣伝、マーケティングツールにする事、良いパブリックイメージを与える事を意図する
● 経営陣、リーダーのコミットメントがなく、自分の行動を変えるという意志をそもそも持ち合わせていない
● 管理部や営業部に作成させる。もっとひどい場合はコンサルに作成を依頼する
● 曖昧で一般的かつ道徳的なスローガンに止まる
● CSRの延長で、社会的貢献や社会的責任の範囲に止まる

もしあなたがどこに向かうのか分からないのならば、どちらの道を行こうが関係ない。
~ ルイス・キャロル、不思議の国のアリス
If you don’t know where you are going, it doesn’t matter which road you take.
Lewis Carroll, Alice in Wonderland

~ ~ ~ ~ ~

参考文献
(1) Don Hofstrand, “Vision and Mission Statements — a Roadmap of Where You Want to Go and How to Get There”, Iowa State University Extension and Outreach AG Decision Making, updated 2016/8
(2) Jen Croneberger, “Vision, Mission And Purpose: The Difference“, Forbes, 2020/3
(3) Jenette Nagy, Stephen B. Fawcett, “Proclaiming Your Dream: Developing Vision and Mission Statements“, Chapter 8, Section 2., the Community Tool Box, a service of the Center for Community Health and Development at the University of Kansas.
(4) David Burkus, “What’s The Difference Between Vision, Mission, and Purpose“, 2020/5
(5) Britt Skrabanek, “Difference Between Vision and Mission Statements: 25 Examples“, clearvoice.com, 2020/4
(6) Gabrielle Bosché, “The 7 Best And 5 Worst Mission Statements Of America’s Top Brands“, 2019/1

コメントを残す

CAPTCHA