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「グループシンク:集団思考」の防止法

  • 投稿カテゴリー:Change Management
  • 投稿の最終変更日:2021年7月11日
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グループシンクは、大多数と異なる意見を述べてグループから孤立又は除外される事への恐怖のため、例え不合理であっても、グループに同調するような意見や行動を取る事です。会社、学校、政府、行政、皆さんの周りのあらゆる所に存在すると思います。グループシンクの要因、症状、防止法を紹介します。

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とある会社の本社のある会議にて。。。
山口課長による次期事業戦略案の長い説明が終わりました。この種の会議で質問するのは、いつも会議の雰囲気を支配する毒舌の鈴木事業部長だけです。
山口課長、その鈴木事業部長の多少の突っ込みと質問も何とかうまくかわしました。
ところでこの会社の本社会議では、会議中は承認する・しないという決議は一切ありませんが、「会議が終わる=取り合えず承認されたとみなされる」という言語化されていない暗黙の了解があります。
他場所での功績が認められ、本社へ栄転してきて本社会議に初参加の吉川さん、鈴木事業部長の質問の後に「あ、すみません、私も質問して良いですか?ここに書いてある〇〇は、もし△△だった場合はどうなるんですか?」

。。。「しーん」。。。

この質問はうやむやに回答され、その後、他の参加者からの当たり障りのない確認的な質問が2,3あり、会議は終了しました。
会議後に、吉川さん、同じ部署の先輩山田さんに耳打ちされます。
「吉川君、次からあんまり面倒な質問はしない方がいいよ。ここは君が前いた場所とは違うから。あの場で質問するのは基本的に事業部長だけなんだよ。しかも事前に事業部長には通しているから、ああいう風に会議の場では口悪く言うけど基本的にはOKなんだ。面倒な事言って事業部長に睨まれると後々やっかいだぞ」とアドバイスをもらいました。

吉川さん、「あ、そうなんですね、やばかったですね。ありがとうございます。次から静かにしてます。」
以後の会議では、予定調和の会議がまた進行するようになりました。。。めでたし、めでたし。?

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「Groupthink(グループシンク:集団思考)」とは

故アーヴィング・ジャニス(Irving L. Janis)は、イェール大学の心理学者であり、カリフォルニア大学バークレー校の名誉教授であった著名な心理学者で、1972年「Groupthink(グループシンク:集団思考)」(1)を発表した、集団思考理論に関する研究の草分け的存在です。

グループシンクは、グループ内で発生する心理的現象です。グループシンクが起きると、他のグループと距離を置くようになり、グループ内の調和やグループへの適合性心理が高まります。大多数と異なる意見を述べてグループから孤立したり除外される恐怖のため、例え不合理であっても、グループに同調するような意思が形成されます。
グループシンクが形成されると、グループ内の主要な意見とは異なる意見や、グループ外の意見、アイデア、解決策を正当に評価できなくなります。

極端なケースでは、リーダーが、意見に同調する「志が等しい」人たちを囲んでいき、それ以外の意見を許さない恐怖の支配によって、グループシンクを増長させていきます。 自由な意見や創造的な思考の抑制は、非効率的な問題解決や不完全な意思決定につながります。グループシンクが最も極端に発展したケースがカルトです。

冒頭に紹介した企業の例に限らず、グループシンクは、学校、政府系機関、場所や規模、年齢を問わずありとあらゆる所で形成される可能性があります。

図:グループシンクのイメージ
「井の中の蛙」とも通じる所がありますね

グループシンク(集団思考)の症状

ジャニスは、グループシンクの症状として、以下の8つを挙げています(1)。 その8つの症状は更に大きく3つのタイプにまとめられます。
これらの症状は、グループが外からの脅威に直面した時に、グループの同調性を維持し、表面化する不協和音を打ち消すために取られる行動です。(2)(3)

1.メンバーが、グループの力と正当性を過大評価する
(1) グループの強さに対する幻想
外部からのリスク情報や危険信号を過度に楽観視し、「自分たちのグループは強いんだ」という根拠のない幻想を持つ。

(2) グループ内でのみ通じる特有の道徳的観念
外部からの助言や一般的な倫理や道徳は無視し、グループ内で形成されたグループ固有のモラルに盲目的に従う。

2.グループの閉鎖的な思考
(3) 集団の力で正当化する
グループの決断をメンバー全員で正当化し、集団の力で外部の指摘や障害から防御する。
過去の決定を振り返り再考反省するよりも、自己の正当性の主張とその説明に多くの時間を費やす。

(4) 外部のグループを悪とみなす
グループを守るため、外部のグループを悪者、危険すぎて交渉できない存在とみなしたり、又は逆に馬鹿扱いし対応するにも値しない弱い存在とみなす。

3.グループのメンバーへの同一性、均一性への圧力をもたらす症状
(5) 異論を唱えるメンバーへの圧力
グループの決断に疑問を投げかけたメンバーを攻撃する。議論で攻撃するのでなく、個人攻撃、罵倒、嘲り、いじめで撃退する。

(6) 自己検閲
グループにとって、グループ内の意見の不一致はとても不快で避けなければならない事であり、グループが合意に達したように見える場合は、メンバーは他の意見を差し控える。
自己検閲とは、「社会心理学の用語で、周囲の反応を見て、自分の意見の表明を控える事」を言います。

(7) 幻想の満場一致
全会一致の幻想。自己検閲とコンセンサスを打破されないように、多数派意見を全員一致の意見だと思い込む。

(8) 外部からの情報を遮断する「マインドガード」の存在
「ボディガード」ならぬ「マインドガード」です。「ボディガード」は身体的危害からグループを守る人たちですが、「マインドガード」は、決断の有効性や道徳性に疑問を投げかける情報からグループの思考・決断を守ります。

図:グループシンクのフロー(要因 ➡ 症状 ➡ 欠陥のある意思決定),
I. L. Janis, Groupthink, Boston: Houghton Mifflin 1982, p. 262, adapted (4)

 

グループシンク(集団思考)の前提要因

上図は、ジャニスのグループシンクのモデルを表します。ジャニスによると、先に紹介した8つの症状には、その症状を生みだす前提となる要因があります。これらの前提要因が多く強いほどグループシンクが形成されるリスクが高まります。

1.過度な癒着性
(1) グループの凝着が、メンバーの発言の自由よりも重要であると見なされている

2.構造的欠陥
(2) グループは外部から自らを遮断している
(3) アイデアや意見を評価、決定するための標準的な手順が存在しない
(4) リーダーに公正さがない
(5) メンバーの社会的背景、思想や観念が均一

3.環境要因
(6) グループは大きなストレス下にある
(7) 良い意見より、リーダー又は影響力が強い人間の意見が優先される
(8) グループは最近失敗を経験したり、
道徳上のジレンマを抱えるなど、勇気や自信がない状態で、様々な意見を受け入れる事が困難な状況にある

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グループシンク(集団思考)の予防法

では、このグループシンク、どうやって防ぐことができるのでしょうか?
ジャニスは、以下の防止策を提言しています。(5)

(1) 各々のメンバーが、グループの行動を批判的に評価する事。批判し批判を受け入れるオープンな雰囲気を、リーダーが率先して奨励する
(2) リーダーは、ディスカッションの初期段階ではオープンな意見の促進に注力し、自分の意見は言わず、公正なリーダーシップに努める。「公正」とは、いかなる意見に対しても、最初は支持も反対も表明しない事
(3) グループを複数に分けて、異なるリーダーの下で同じ課題に取り組ませる
(4) グループの各メンバーは、信頼できる外部の人たちと問題や選択肢について話し合い、その人たちの反応をグループにフィードバックする
(5) グループで力が強い中心メンバーの意見に異議を唱えるため、更に大きな力を持つ外部の専門家や顧客などを招き入れる
(6) グループ会議で、1人以上の「悪魔の代弁者(devil’s advocate:反対意見を声にする事を促進するため、敢えて多数派に対して反対意見や疑問を呈する役割を果たす人)」を設定する
(7) 意見が相反する状況では、外部からの警告を分析したり、代替案を検討するための時間を余分に設定する
(8) 最終的な決定が下され実施する前の段階でも、まだすっきりしないもやもやがあるのなら、それをオープンにし決定を再検討するために再度会議を開催する

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意思決定の明確な手順化

以上、ジャニスの予防策の提言を紹介しましたが、それ以外でも、下記のように、意思決定の明確な手順を定めルール化しておくことも効果的です。(6)

(1) 選択肢を幅広く検討の土台に乗せる
(2) 達成すべき目的を明らかにし、選択肢について広く調査する
(3) 各選択肢のリスク、コスト、利点を慎重に検討する
(4) 各選択肢のさらなる評価に必要な新しい情報を徹底的に探す
(5) いったんオプションを選択した後でも、それと反するような新しい情報や専門家の判断も受け入れ真剣に検討する
(6) 最終的な決定の前に、すべての今までの代替案のプラスとマイナスを再度見直す
(7) 選択されたオプションの実施のための準備を行い、リスクを明らかにし、そのリスクが顕在化した場合の対応計画を作成する

このような決定プロセスを決めておくことは重要ですね。同調行動のみならず、選択肢が十分に揃う前に決めてしまう事、または最初から結論ありきで物事が進んでしまう事を防ぐ事もできます。

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グループシンク(集団思考)の予防法:更なるアイデア

以下、更に他にも考えられる予防策がありますので紹介します。

1.意思決定の手順、プロセスを何回も見直す
先に紹介したように意思決定の手順をつくっても、それでもなお自分の意見を言う事に不安を感じる人は多いものです。その場合は、再度プロセス・手順の見直しを図る事です。
例えば、
(1) グループでの権力の小さい人たち、若い人たちから意見させる
(2) 最も権限や力のあるリーダーは最後まで一切口を出さない
(3) 最も権限や力のあるリーダーは意見交換の場から席を外す
(4) 口頭ではなく、皆で一斉に紙に意見を書いてもらう
等々のルール化です。

2.グループにダイバーシティを取り入れる
ダイバーシティに関しては、近年例えば取締役会に女性を入れる、外国人を入れる、社外取締役をいれるなどの動きはあります。ダイバーシティのそもそもの目的は、単に女性や外国人を多く入れる取り組みにあるのではなく、多種多様な背景や考えを持つ人たちの意見を取り込む事です。
ですから、既に組織で利用可能なリソースを利用して、例えば若年層や権限の小さい従業員の意見を取り入れる、「尖った」職員を場に入れる、お客さんやサプライヤーを議論に入れる、一般の人の意見を聞いてみる等の取り組みもダイバーシティに繋がるものです。

ダイバーシティを形成する事で幅広い意見が取り入れられるだけでなく、固有の価値観を持つ人たちのグループ化を防ぐ事ができます。

3.組織、グループの心理的安全性を高める
自由な意見が拒絶されることなく、罰せられる心配もなく、むしろ歓迎されることが心理的安全性が確保された組織ですが、心理的安全性についてまで詳しく書き出すとあまりにも膨大なトピックスになってしまいますので、ここでは割愛させて頂きます。。。(汗)

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グループシンクモデルの注意点

最後にジャニスのグループシンクモデルで2点注意すべき点がありますので、紹介します。

1点目は、ジャニスはグループシンクが形成される要因として、集団の過度の凝集(cohesive)を上げていますが、グループが団結する事自体には、とても優れた望ましい側面もあるという事です。
パーパス・ドリブン:会社は何のために存在するのか?」等の過去の記事で説明した通り、全員が目的や価値観を共有し、チームとして目的に進んでいるような意味での団結、一体感(cohesive)は、グループにとって望ましいものです。
グループシンクは、周りの環境から壁を作り、他の意見を許さず、集団同調したグループですから、「cohesive」の性質が全く違います。

図:グループシンクによって集団同調したグループ(左図)と
共通の目的に向かって団結したグループ(右図)の違いのイメージ

2点目は、悪魔の代弁者(devil’s advocate:多数派に対して意図的に批判や反論をする人を設定する)は効果が発揮できないリスクがある事です。
本当は多数派の意見に賛成なのに、あえて反対意見を言おうとしても、的確な批判ができない場合があるからです。

例えばあなたが原発新規建設に関して絶対反対だとします。議論の場で、悪魔の代弁者として、「新規建設推進派のふりをして、反対派に反論して下さい」と言われて、的確な反論ができるでしょうか?心から原発推進を唱える人の主張に比べて、反対派への反論が甘くならないでしょうか?
このようなリスクがあるため悪魔の代弁者を入れるよりは、真のダイバーシティ、真の意見の多様性の形成を目指す事を優先すべきでしょう。

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参考文献
(1) Irving L. Janis, “Victims of Groupthink: a Psychological Study of Foreign-Policy Decisions and Fiascoes”, Boston: Houghton Mifflin, 1972
(2) John C. Turner, Penelope J. Oakes, S. Alexander Haslam, Craig McGarty, “Self and Collective: Cognition and Social Context”, Personality and Social Psychology Bulletin, 1994/10
(3) David G. Myers, Jean M. Twenge, “Exploring Social Psychology 8th edition”, McGraw-Hill Education, 2017/1
(4) Irving L. Janis, “Groupthink: a Psychological Study of Foreign-Policy Decisions and Fiascoes, 2nd edition”, Wadsworth Publishing, 1982/5
(5) Paul ‘t Hart, “Preventing Groupthink Revisited: Evaluating and Reforming Groups in Government”, Organizational Behavior and Human Decision Processes 73(2-3):306-326, 1998/2
(6) Paul ‘t Hart, “Irving L. Janis’ Victims of Groupthink”, Political Psychology, Vol. 12, No. 2, pp. 247-278, 1991/6

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