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なぜ階層構造が悪者にされるのか?なぜフラットな組織がもてはやされるのか?

  • 投稿カテゴリー:マネジメント
  • 投稿の最終変更日:2022年12月27日
  • Reading time:7 mins read

昨今、階層構造という言葉にはネガティブなイメージがつきまとっていますが、必ずしも階層組織が悪いのではありません。対局としてもてはやされることの多いフラットな組織にも一長一短があります。階層組織が機能しないのは、多くの場合、階層組織が悪いのではなく、適切に運用されていないからです。

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はじめに

私たちの社会や身の回りの多くのものや仕組みは、古くから階層構造で成り立っています。階層構造を表す英語であるヒエラルキー(hierarchy)は、ギリシャ語の「聖職者(hiereus)」と「最高位(arche)」に起源し、カトリック教会や正教会などが階層的な組織を持っていたことに由来します。社会システムや企業体系などを表すのに使われるだけでなく、階層や上下の序列のあるものに広く適用されており、その範囲は、組織論、システム論、生物学、社会科学から、建築、デザイン、数学、コンピュータサイエンスまで幅広い分野に及びます。(1)

しかし、昨今、階層構造という言葉にはネガティブなイメージがつきまとっています。特に、社会の構造や職場の構造の文脈でそうであり、階層がもっと少ないフラットな構造や組織への移行が叫ばれたりしています。

階層組織はよくピラミッド構造として表わされ、会社の組織の場合は、そのピラミッドの頂点にいるのは社長を代表とする経営者たちです。その下に幾層かの管理職たちが並び、最下層に多くの従業員たちが配置される構造です。組織図も同様に、経営者がてっぺんに位置し下に向かうにつれて多くの部や課に枝分かれしていく末広がりの図で表現されます。

上と下の階層間には指揮命令や報告の関係があり、上に行くほど大きな権限や裁量をもち、下の階層に位置する人たちはその上の階層の人たちの指示に従って仕事をします。

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階層構造のメリット・デメリット

あまりよく思われていない階層構造ですが、企業にとってはメリットがあります。たとえば、次のようなものです。

  • 権限と報告のラインが明確
  • 各層の役割と責任が明確
  • 組織の中での自分の役割や他のメンバーの役割、それらの関係を容易に理解できる
  • 従業員のモチベーションを高めるキャリアパスが明確
  • 従業員が自分の専門分野に特化し、専門性を高めることができる
  • 従業員への細やかな指導や管理が可能
  • チーム、部門、組織全体に対する忠誠心という文化を形成する
  • 多くの従業員からなる組織を効果的に管理できる

一方で、階層構造が常に効率的というわけでもありません。一般的に階層構造には以下のようなデメリットがあります。

  • 何層にも渡る命令系統により、意思決定が遅くなる
  • 階層間の意見の相違や矛盾した指示が、業務に支障をきたす可能性がある
  • 階層間およびチーム間の水平的なコミュニケーションに遅れが生じる
  • 環境や市場の変化に適応し、順応するための柔軟性が低い
  • 斬新なアイデアは複数の階層の承認プロセスを通過することができず、棄却される可能性が高い
  • トップレベルの経営陣と従業員との間に距離や乖離が生じやすい
  • 部署が他部署と分断し「サイロ」化する恐れや、部署間の対立が生じる可能性がある
  • 多重のマネジメント層を支えるための費用がかかる

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フラット構造のメリット・デメリット

一方で、階層組織の対局としてもてはやされることの多いフラットな組織にもメリットとデメリットがあります。一般的にフラットな構造のメリットは以下の通りです。

  • 命令系統が短いため、シンプルで迅速な意思決定が可能
  • 外的環境の変化に対応して適応しやすい
  • 従業員により多くの自主性を与えることで、より大きな仕事への満足度を得ることができる
  • 従業員の新しいアイデアが採用されやすい
  • 直接的なコミュニケーションが多く、ミスコミュニケーションが生じにくい
  • 中間管理職を排除することによる効率性の向上とオペレーションコストの削減

すべての組織に完全に当てはまるわけではありませんが、フラットな構造には次のようなデメリットがあります。

  • 中間管理職がいないため、成果が最前線の従業員に大きく依存し、1人1人の従業員の能力や判断、主体性、自己管理能力がより重要になる
  • 組織構造が不明瞭で全体の姿や他の人の役割が見えにくく、小規模の組織に適用しやすい反面、大規模な組織には適用が難しい
  • 経営層に対する従業員の数が増えるにつれて、管理が行き届かなくなり、非公式な上下関係や隠れた権力闘争、混乱などが発生するリスクがある
  • 長期的な成長や昇進の機会が見えずらい

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階層組織とフラットな組織の良し悪しはケースバイケース

以前本サイトの「組織文化の変革その1:組織文化とリーダーシップ、組織属性との強力な磁力」で紹介したように、会社が誕生し、成長して成熟する過程で従業員の数が増えるにつれて、適切な組織の形は変わっていきます。フラットな構造は、イノベーティブなサービスを提供する比較的少人数から成るスタートアップや中小規模の企業に適しています。しかし、そのような会社でも従業員が増え100人を超えるようになると管理職を増やすことなくしてすべてを把握することはできず、構造化なくして効果的に経営していくことは難しくなります。
起業家の人たちは自由でオープンな雰囲気を好み、階層構造を嫌うかもしれませんが、スタートアップでも、ある程度の従業員数を抱えるまでに成長したら、階層構造を取り入れ、管理職を配置した方が効率よく業務を進められます。

逆に階層構造が定着した大企業でも、一部フラットな構造を取り入れたり、イノベーティブな部門を経営層直下に配置して階層の弊害をバイパスしたりすることで、社会の変化に迅速に対応できます。
つまり、階層組織も、フラットな組織も、組織の目的や組織の規模や成長過程によってその良し悪しは異なり、構造の自由度もあるため、一概には、どちらが良い、どちらが悪いとは言えないのです。

イノベーティブで自律性の高い極めて優秀なエンジニアを厳選して集めるGoogleも、当初は管理職を有害な存在とみなしていました。しかし、組織の垣根を取り払ったフラットな組織構造の導入の取り組みはわずか数か月しかもちませんでした。創業者のラリー・ペイジ(Larry Page)に従業員の質問や報告が集中したためです。その後、Googleは管理職の重要性を認め、効率的に管理職を配置した組織になっています。(2)

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管理者が効率的に管理できるメンバー数は10人以下

数百人から数千人の従業員を抱える大規模な企業では階層化は不可欠です。
以前「機能するチームの作り方:メンバーは必要最小限の人数で構成する」で紹介したように、チームが効率的に機能するメンバー数は一般に10人以下です。

Amazonの創業者ジェフ・ベゾスが提唱した有名な「ピザ2枚ルール」は、1つのチームはテーブルに置いたピザ2枚を囲める人数以下にするというもので、具体的には5人から7人位です。
NASAはシミュレーション研究を使用して、チームの規模と月面での生存との関係を評価しました。その結果、最大5人のチームが最善の決定を下すことが分かりました。
スクラムガイド(The 2020 Scrum Guide TM)は、スクラムチームは、機敏性を維持するのに十分なほど小さく、スプリント内で重要な作業を完了するのに十分な大きさにすべきで、具体的には3人から9人程度、多くても10人以下と述べています。
チンギス・カンは10人の部下のそれぞれ10人の部下を管理させ、その10人がさらに10人を管理するという1,000人単位の軍制(千人隊)を敷きました。
我が国を代表する偉人、聖徳太子でさえ同時に10人の話しか聞くことができません(笑)。

チームのメンバーが10人以上になってきたら、チームを分けたり、階層構造にする必要があります。1人の管理職が10人以上のメンバーを指揮するのは、最新のコミュニケーションツールなどを効率的に利用しても容易ではないでしょう。
なお、すべての従業員の能力や自律性が高く、従業員に最大限の裁量を委ねることができるGoogleのマネージャーでさえ30人程度が限界です。(2)

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問題の責任を押し付けられる階層構造

では、なぜ階層組織は悪く見られてしまうのでしょうか?
本来階層構造の問題ではないのにもかかわらず、階層組織のせいだと誤解されている問題があるからです。

例えば、日本の会社は決断が遅いとか、打ち合わせ担当者がその場で決められないなどと言われます。しかし、それは階層構造のせいではなく、意思決定の権限が下位の人たちに適切に振り分けられていないからです。
また、従業員の士気が下がるのは階層構造のせいではなく、マイクロマネジメントしたり、部下に責任を押し付けたり、矛盾した指示を与える経営者や管理職のせいです。
中間管理職がやたら多いのも階層構造の問題ではなく、年功序列や終身雇用、その他の人事施策の問題によって、ピラミッドがいびつな形になっているからです。日本では組合員数より管理職の人数の方が多い企業さえ少なくありません。
経営層が現場の実情を知らない、末端の従業員の懸念や要望が上層部に伝わらないのは、階層構造の問題ではなく、経営者が自ら現場を知ることなく、報告だけで判断するからです。
権限を乱用する経営者も階層構造の問題ではなく、権限を「役割」ではなく「権力」と勘違いし、その負のパワーに引き込まれた経営者の倫理に関する問題で、これはフラットな組織の経営者にも起きうるものです。
上司と部下の間の双方向のコミュニケーションがなく、上からの一方的なコミュニケーションしかないのは、階層構造の問題でなく、上司のコミュニケーション能力の問題です。
管理職がチームをうまく管理できないは、階層構造の問題ではなく、管理職としての能力不足の問題です。
「うちの会社はパーパスがないから。。。」パーパスがなくブレるのは経営者の問題で、組織の形とは関係ありません。

これらは「階層構造の問題」ではなく、「うまく機能していない組織の問題」に過ぎません。階層構造に起源する問題ではないのです。重要なのは、組織構造や役割が、想定する通りに適切に機能しているかという点なのです。

そして、論理的な問題もあります。つまり、

「私の会社は機能していない」
 ➡「私の会社は階層構造を採用している」
 ➡「階層構造の会社は機能しない」

という論理には

「私の家族は機能していない」
 ➡「私たち家族は○○市に住んでいる」
 ➡「○○市の家族は機能しない」

と同程度の論理的な間違いがあるのです(笑)。

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さいごに

成功する大企業は、階層構造をとりながら、そのデメリットを小さくする取り組みを行っています。心理的安全性を高める取り組みや、各部署に横ぐしを刺して部署間の垣根を取り払う取り組みなどでコミュニケーションをよくしたり、権限をできるだけ下の層の人たちに委譲したり、新規事業を本業と切り離して自由に進める環境を整備する会社もあります。

また、階層組織において重要なのは、管理職となる人たちのマネージャーとしての能力でもありますが、多くの人たちは管理職に必要なスキルを取得することなく、その職務についています。Googleは、社内の最も効率的な管理職たちの行動に以下の8つの大切な共通点を認めています。(2)

  1. よいコーチであること
  2. チームのメンバーに権限をもたせ、マイクロマネジメントしない
  3. チームのメンバーの成功と個人的な幸せ(ウエルビーイング)に関心をもっている
  4. 生産的で結果重視
  5. コミュニケーション能力が高く、情報を共有し、人の話をよく聞く
  6. メンバーのキャリア形成を手助けする
  7. チームに対する明確なビジョンと戦略をもっている
  8. メンバーにアドバイスできる技術的なスキルをもっている

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参考文献
(1) “Hierarchy“, wikipedia
(2) David A. Garvin, “How Google Sold Its Engineers on Management”, Harvard Business Review, 2013/12.

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