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新しいスキルを習得するための4つのステージ:4 stages of competence

  • 投稿カテゴリー:人が変わる
  • 投稿の最終変更日:2023年7月23日
  • Reading time:8 mins read

スキルがない状態から、新しくスキルを習得する4つのプロセスを紹介します。最初の段階では、私たちは、自分にそのスキルが必要だとさえ気づいていません。①自分の能力のなさに気づくこと、②スキルを習得しようと決意することが最も大事ですが、私たちにとってこの2つはとても高いハードルでもあります。

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新しいスキルを習得するための4つのステージ
Four Stages For Learning Any New Skill (Four stages of competence)

ビジネスリーダーは、リーダーとしての具体的な取り組みを組織で実施するにあたり、必要なスキルを身につけている必要があります。

チームを成功に導くためにリーダーが必要なスキルは、強いビジョンや目的意識、使命感、それをメンバーに伝え鼓舞する力、その他にも、戦略的思考、創造性、柔軟性、道徳性、コミュニケーション能力、傾聴力、共感する力などさまざまです。

リーダーに必要なこれらの能力は、本サイトのようなインターネット記事や数多くの書籍、その他専門家やコンサルタントらによって毎日のように説明され、世の中にあふれているのに、不思議なことに、経営者やビジネスリーダーの多くはまだそれを知らないんじゃないかと思えるようなことがおきています。

1970年代にゴードン・トレーニング・インターナショナル(Gordon Training International)の従業員であるノエル・バーチ(Noel Burch)によって開発された「新しいスキルを習得するための4つのステージ:Four Stages For Learning Any New Skill」というモデルがあります。心理学では「コンピテンスの4つのステージ:Four stages of competence」とも呼ばれます。

この4つのステージは、ある能力に関して、スキルがない状態から、新しくスキルを習得し高めていく進歩のプロセスを表します。

最初のステージでは、私たちは、自分がそのスキルに関して無知であることにさえ気づいていません。または、そのようなスキルが自分に必要だということを知りません。しかし、その後、自分の能力のなさに気づき、スキルを習得しようと決意し、習得し始めると、しだいにその能力を使えるようになります。やがて、その能力は特に意識しなくても自然に発揮できるレベルまで高まっていきます。

経営者やビジネスリーダーと言えども、先ほど紹介したようなリーダーとして必要なスキルを持ち合わせていない場合は、その能力を習得するために、4つのステージを踏まなければなりません。

それぞれのステージについて詳細に見ていきましょう。

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ステージ1:自分の無能・無知・未熟さを自覚していない状態
                  Unconsciously unskilled, Unconscious incompetence

ステージ1は、知らないということさえ知らない、知らないことに気付いていない、無意識的無能とも言われる状態です。

残念ながら、この段階に留まっている経営者やビジネスリーダーは皆さんが思うより多いです。あり得ないと思う人は、あなた自身がこのステージにいます。

情報があるのに知らないというだけでなく、そのような情報に実際に接しているのに、それが自分に当てはまることに気が付いていなかったり、自分には関係ないと思っています。
本人も、周囲の人たちも、リーダーが過去に上げてきた成果やその実力は理解しています。しかし、その専門分野での知識や過去の成功と、リーダーとして必要な能力は違います。また、リーダーが必要とする能力は、マネージャーに必要な管理能力とも違います。

リーダーになったのに、リーダーに何が求められるのかさえ知りません。知らないことに気付いてさえいません。それなのに、自分はすべてを知っていると勘違いして、自信が能力を上回っています。そのため、リーダーとしてあるべき行動と反する行動を平気でとったりします。チームメンバーを傷つけるコミュニケーションをとったり、信頼を失う態度をとりますが、本人は自分の責任だと気づいていません。

それがステージ1の、無能な自分を自覚していない状態で、それはまるで暗闇の中にいて目の前にあるものが見えていないかのような状態です。

次の段階に進むには、自分の無能さと新しいスキルの必要性に気づく必要があります。

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ステージ2:自分の無能・無知・未熟さを自覚している状態
                  Consciously unskilled, Conscious incompetence

ステージ2は、自分が知らないということを知っている、能力不足を自覚している、意識的無能とも呼ばれるステージです。

この段階では、本人はやり方を身に付けているわけではありませんが、何かを理解したり、必要なスキルが自分に欠けていること、その欠陥に対処するため何かを新しく習得する必要があるということを知り、受けとめ始めています。

ところで、私は登山やランニングや冒険が趣味で、インドのラダックマラソンのフルマラソンに参加した知り合いがいます。インド北部の標高3400mという高地でおこなわれるレースで、知り合いが参加すると聞いて、私は酸素の薄い高地に急に行って長距離を走ることの大変さを説明しましたが、その人は低地でのランニング経験しかなく、「大した事ないでしょ?」みたいなノリでした。結局、その知人は、レース前日に飛行機で現地に入り、翌日のレースで息が持たず、走り始めてまもなくリタイヤしてしまいました。

この知人は、レースを経験して、ステージ1(無知なのを自覚していない状態)から、ステージ2(無知なのを理解した状態)に進んだと言えるでしょう。このように、他人に何を言われてもピンと来ないが、自分で実際に経験してみて、ようやく分かることは多くあります。

地球が太陽の周りをまわっていると言われても最初は誰も信じませんでしたが、今では疑う人がいないように、ステージ2に達すると物事の見方が変わります。

「知らないことを知らない」状態から「知らないことを知る」状態に進むことは、4つのステージの中で一番越えることが難しいハードルでしょう。なにしろ、そこにハードルがあるということさえ認識していないのですから。

「真の知に至るための出発点は、無知を自覚することにある」というソクラテスの「無知の知」もこの状態を指す言葉であり、論語にある孔子の教え、「之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為せ。是れ知るなり」も全く同じことを述べています。

ステージ1から見える世界とステージ2で見える世界には雲泥の差があります。

ステージ1では闇に包まれていた世界が、ステージ2でパッと開けるようなものです。そして、その開けた景色の先、つまり、ステージ2からステージ3へ向かう先には深い谷が待っています。その谷を越えるためには、進むべき道が分からない道を進んでいくように、トライアルアンドエラーを繰り返しながら進んでいくプロセスを踏まなければなりません。

残念ながら、この段階に留まっている経営者やビジネスリーダーも皆さんが思うよりも多いです。つまり、自分が知らないという事実をうすうす感じ取ってはいるのですが、その事実を公に認めることができません。あるいは、ミスや失敗を恐れて行動できません。目の前に現れた谷を目にして、恐怖に足がすくみ、自信を失い、前へ進むことをあきらめるのです。

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ステージ3:能力を身に付けるやり方を理解したが、会得するまでには至っていない
                  Consciously skilled, Conscious competence

ステージ3は、日本語では、意識的能力と呼ばれます。このステージでは、自分に何ができるか、何が足りないかを知っていて、それを身に付けるために意志を持って行動しています。意識的にスキルを試し、努力し、練習を繰り返します。

例えば、コミュニケーション・スキルの必要性に気づいたリーダーは、実際にそのスキルを使うことで成長していきます。役に立たなかったり、ダメージを与えるような返答を避け、代わりに共感を持って、メンバーの話を聞こうと意識して取り組みます。
メンバーは、時に、少しインチキくさいと感じることもあるかもしれませんが、リーダーが意識的に異なるコミュニケーションをとろうとしていると認識します。

そして、メンバーはリーダーを本当のリーダーだと認め始めます。ステージ2の谷を越えてステージ3に達したからです。

しかし、このステージ3の先にあるのは、長い長い登り道です。その先にたどり着くためには、私たちは努力し坂道を登り続けるしかありません。

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ステージ4:能力が完全に定着し、もはや特に意識もしていない
                  Unconsciously skilled, Unconscious competence

新しいスキルを繰り返し練習し、応用し続けて、ステージ4に達すると、今まで苦労していたことが、やがて簡単に自然にできるようになります。無意識的能力と呼ばれる段階です。

この段階にある人は自分の能力を当然のものとみなしたり、行動が習慣化しています。自動操縦のようになっていて、自分が何をしているのかさえ気付いていないかもしれません。

リーダーは、スキルを学び、使い続けることで、自信と能力を高めていきます。このステージでは、以前本サイトでも紹介した自己効力感(Self-efficacy)が高まっています。自己効力感(Self-efficacy)は、あることを成功させるために必要となる自分の能力をどの位信じているかを示すものです。成功のためには、スキルと自己効力感の両方が必要です。

この段階に達すると、リーダーは、積極的な傾聴、調和的な自己開示が、より自然にできるになります。チームメンバーは、話を聞いてもらい、理解され、感謝され、満足したと感じ、好意的な反応を示します。リーダーたちは、これらのスキルを人生のあらゆる場面で応用できることに気づき、次第にそのスキルがすべての人との関わりの中に溶け込んでいき、人と接する自然な方法となっていきます。

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ステージ1からステージ4にたどり着くためには

ステージ1の無能な自分を自覚していない、あたかも闇にいるかのような状態から、ステージ2の無知の知に進むためには、ある種の「気づき」が必要です。

ステージ2からステージ3に進むためには「勇気」が必要です。慣れ親しんだ環境ややり方から離れ、新しい不案内な環境に飛び込むための勇気です。ミスや失敗、無防備になることを恐れていては、先に進むことはできません。

ステージ3からステージ4に進むには、努力とやり抜く力が必要です。

テージ1 ➡(気づき)➡ ステージ2 ➡(勇気)➡ステージ3 ➡(努力)➡ ステージ4

そして、ステージ1からステージ4に進むために共通して必要なのが「学び」です。

学ぶ姿勢がなければどの段階からもその先のステージに進むことはできません。学びは意識しなければできません。ステージ1の無意識の状態から、ステージ2、3と意識を高め、より集中していき、ステージ4で意識しなくてもできる状態まで達すると、また無意識の状態に戻るのです。

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他の人が新しいスキルを習得するのを助けるには

最後に、この「新しいスキルを習得するための4つのステージ」を他の人が進んでいくのをどうやってサポートできるかを紹介して今回は失礼します。

ステージ1 → ステージ2

ステージ1にいる人たちに対しては、何を学ぶべきかを理解できるようにサポートします。対象となる能力に関しては、その人の世界はカチカチに凝り固まっています。
鳥の目線で物事を見るように、一段高いレベルから自分の行動を見下ろしたり、少し離れたところから周囲の環境を含めて物事を見たり、普段とは違う視点で物事を考えたり、物事の背景や、普段は気にしていないことを深く考えたりしてもらうことが必要です。

ステージ2 → ステージ3

ステージ2にいて先に進めない人たちには、勇気づけたり、自信をつけさせて、感情をコントロールできるようにサポートします。先に進めないのは今ある状態に固執しているからでもあります。なぜ今いる状態にこだわるのか考えてもらうことも必要でしょう。

ステージ3 → ステージ4

このステージでは、多くの練習の機会を設け、その過程や結果に対してフィードバックを与えることで、能力を引き上げるサポートができます。

ステージ4

このレベルに達すると、人は無意識にスキルを操れる一方で、その状態が長く続き過ぎると、惰性になってしまうという落とし穴があります。そうすると、知らないうちに周囲の環境が変化してしまい、気が付くと自分のスキルは古くなっていてステージ1に戻ってしまっているということが起きます。ステージ4にいる人たちに対しては、定期的に周囲の状況を確認したり、自己を省みる時間を設けること、他の人に教える機会を見つけたり、新しいスキルを学び続けるようにサポートできます。

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参考文献
(1) Linda Adams, “Learning a New Skill is Easier Said Than Done”, Gordon Training International

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