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アセットベースのコミュニティー作り:ストリートを人々が集う場所へと変える

  • 投稿カテゴリー:Social Change
  • 投稿の最終変更日:2022年9月24日
  • Reading time:6 mins read

ABCDは、「ない」ものや「問題」に目を向けるのではなく、「ある」ものや「可能性」に光を当て、地域に既にあるアセット(資産)をベースにして、持続可能なコミュニティーを築き上げる方法です。シャニー・グラハムは、隣人たちとの繋がりを通して、家の前の「通り」を、住民が集い、毎年何千人もの人々が集まる「場所」へと変えて行きます。

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今回は以前紹介したアセット・ベースド・コミュニティ・デベロップメント(ABCD : Asset Based Community Development)の事例をさらに紹介します。
ABCDは、「ない」ものや「問題」に目を向けるのではなく、「ある」ものや「可能性」に光を当てるもので、地域に既にあるアセット(資産)をベースにして、持続可能なコミュニティーを築き上げるものです。

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オーストラリア、サウス・フリーマントル、ハルバート・ストリートの事例(1)(2)(3)

多くの人が、住んでいる場所でコミュニティー意識を持ちたいと思っています。しかし、隣人とのつながりをゼロから築くのは簡単ではありません。

シャニー・グラハム(Shani Graham)は、カナダ育ち、父親は学校のカウンセラーで、母親は小さな農場を営んでいました。父親が学校に関わっていた事もあり、家族は大きなコミュニティーの一員でした。
家族がオーストラリア、サウス・フリーマントルのハルバート・ストリート(Hulbert street)に移り住んだとき、隣人たちとのつながりがなく、彼女は本当に寂しいと思いました。隣人に話を聞いたところ、コミュニティーの人たちと交わりたいと切望しているのは自分だけではないことが分かります。

彼女は、自分たちのコミュニティーのために何かしようと決めました。
ハルバート・ストリートの端には古く大きな水タンクがありましたが、シャニーは子どもたちやその親たちに呼びかけて、みんなで集まって小さなモザイクの魚を作り、その水タンクにきれいに飾りつけました。
そして、その当日、集まってくれた人たちに更に
次の集会への参加も呼びかけます。

その集会では「みんな、ハルバート・ストリートをどういう風にしたい?」と問いかけます。
大人たちは、ガレージセール、午後の紅茶会、ストリート・ガーデニングなどと答え、子どもたちは、サッカーやクリケットをしたいと言います。
そんな中、ある子どもが「スケートボードのランプを設置したい」と言うと、その最もありえないと思えた10歳の住民の提案が真っ先に実現し、通りの2台分の駐車スペースに小さなスケートボードのハーフパイプが作られました。

ストリートは人々が集う場所へと変わっていきます。
市有地を利用してゲリラガーデニングを始め、移動式のピザ釜やコーヒースタンドを共有し、椅子を持ち寄り映画鑑賞会を開いたり、本の交換所を設置したりします。更に、コミュニティーで「やぎ」を飼い始めます。そしてそのやぎがのびのびと歩けるように、家と家の間の垣根まで取り払うのです。
今では、他のコミュニティーのためにストリート・サステナビリティ・フィエスタを開催し、毎年何千人もの人々がハルバート・ストリートに集まってきます。

※下のTEDxPerthのYoutubeは残念ながら日本語の字幕はありませんが、英語の字幕は付ける事ができます。素晴らしいスピーチなので、英語が分かる方は是非ご覧下さい。また、取り組みの詳細は、「ecoburbia」と題された彼女たちのホームページでも見る事ができます。

ハルバート・ストリートのコミュニティーでは、それぞれのメンバーが自分が持つスキルやリソースの情報を共有します。つまり、何か困った事があったら、それが得意な人、必要な設備や道具を持っている人をみんな知っていて、その人に相談すればよいのです。
それによって、向かいの紳士が、素晴らしいオリーブオイルのレシピを知っている事や、近所のおじさんの家の裏に、見たこともなかった大きな野菜畑があるということまで知るのです。

図:コミュニティーのスキルやアセットの共有例

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ある子どもはシャニーに「僕が大きくなったら、この通りに住んできた事を誇りに思うよ」と言い、また別の子は「学校にいる間も早く通りに戻って来たくてウズウズして勉強に集中出来なかった」と言います。

「誰もがつながっていたいと思っているのだから、それをどう実現するかはコミュニティー次第だ」とシャニーは言います。多くの人が「コミュニティーに参加したい」と思いながら、いざとなると参加しないことはよくあります。意図的にコミュニティーを形成しようと人々が集まると、お互いの違い、対立点に目を向けてしまったり、声の大きい人や「専門家」が場をコントロールしがちです。そのような場は声の小さい人には居心地の良い場所ではなく、楽しい場所でもありません。
シャニーは、共通の土台、なによりも心から楽しいと思える事を見つけるという点に焦点を当てます。周りの人たちと共通点があるとは思わない前提で、共通点がないことにがっかりするのではなく、共通点を見つけたら喜ぶのです。

しかし、彼女は、ハルバート・ストリートの成功事例を別の場所で再現しようとすることには注意を発します。
多くの人たちは他のコミュニティーでの「成功のレシピ」=「ベストプラクティス」を探していて、それを再現しようとするのですが、それではうまくいきません。
ハルバート・ストリートの住民たちは、他人の真似をしたのではなく、自分たちが既にもつスキルや創造性を活かして、自分たちが心から楽しいと思ってやりたい事を実現させたのです。それぞれの地域がそれぞれ独自の強み・楽しみを見出す必要があります。
シャニーは、とにかく一緒にできることから始めることを勧めています。ストリート・パーティーでも、参加したくない人を巻き込むのではなく、やりたくてムズムズするような事を数名から始めるのです。
そうする事で自分たちのアイデンティティを身につけ、自分自身の生活を変えることできるという自信を持って、影響の輪を広げていくことができるのです。

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「間違ったもの」、「問題」に焦点を当てる取り組みの4つの害悪

コーマック・ラッセル(Cormac Russell)は、シカゴのDePaul大学の Asset-Based Community Development (ABCD) Institute の教授で、ABCD Institute のヨーロッパのパートナーである Nurture Development のマネージング・ディレクターであり、世界中の国々で、ABCDやその他のコミュニティーベースのアプローチについて、コミュニティー、機関、NGO、政府を指導してきました。

彼は言います。
~ コミュニティー開発の最初のきっかけは、例えば、少年犯罪や破壊行為などに対する懸念かもしれません。

しかし、「少年犯罪について何ができるか」は、問題に焦点を当てた否定的な誤ったテーマです。
テーマはポジティブであるべきです。例えば、「青少年 – 私たちの地域の未来にとって重要な財産」という、成長と可能性を感じさせるポジティブな視点を持ったテーマです。
何が悪いかではなく、何が強いかに焦点を当てましょう。~

人やそのコミュニティーの能力を損なわない方法で人々を助けたいのであれば、そこにいる人たちやコミュニティーの中にある強いものから始めるのが最善であり、間違っているものから始めるべきではありません。
しかし、何千もの証拠が人々や地域社会にある能力から始めるべきだという考えを示しているにもかかわらず、政府や非政府のプログラムでは、人々の中にある間違ったもの、「貧困」、「過疎化」、「問題」、「ないもの」、「壊れたもの」、「病的なもの」に焦点を当て、それに執着する傾向があります。

悲しいことに、その焦点は世界中の何百万人もの人々、特に貧しい人々や地域社会に大きな害を及ぼしています。
コーマック・ラッセルは、その4つの害悪を挙げています。

1つ目は、助けようとする人々を、その才能や能力によってではなく、その人の欠点や問題によって定義してしまうことです。

2つ目は、トップダウンで問題に対処しようとする事によって、助けを必要としている人に行くはずのお金が、実際には、その人たちにサービスを提供する人たちに行くということです。

3つ目は、積極的な住民の力、つまり草の根レベルで行動し対応する力が、ますます増大するプロフェッショナルと専門知識、その意識の高い人たちの力の前に後退してしまうことです。

そして最後は、欠陥があると定義された地域全体、コミュニティー全体が、自分たちにとって何かが変わる唯一の方法は、「正しいプログラムと専門家、潤沢な資金を持った外部団体が自分たちを救うためにやってくること」だと信じ込んでしまうことです。

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参考文献
(1) Kari McGregor , “Changemaker Profile: Shanti Graham“, SHIFT, 2015/11/17
(2) Graeme Stuart, “Hulbert Street – building community in a street“, Sustaining Community, 2013/10/24
(3)  Emma Wynne, “Learning to get to know your neighbours and build a sense of community in your street“, ABC Radio Perth, 2018/3/8
(4) Rita Agdal, Inger Helen Midtgard, Cormac Russell, “Asset Based Community Development: How to Get Started“, Abundant Community, 2020/2/21

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